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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第2章:冒険者邂逅編

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72、『黒金の雷雨』の戦い方

すみません、今回ちょっと短いです。

 パーティー戦闘というものは個々人に役割分担が定められているのは当然だが、その役割を充分に発揮出来るような指揮官もまた必要だと思っている。

 そして、この『黒金の雷雨』において、その指揮官の役割を担っているのは、意外なことにグレイグさんではなく、ラルフさんであった。


「へぇ、意外と良いパーティーじゃない」


「そうですね……ラルフさんの指示が的確で、ちゃんと広い視野が持ててますね」


 あたしとメルツェナさんは鹿たちの縄張りのギリギリ手前で、彼らの戦闘を観察しているところだ。

 彼らの戦い方はとても堅実である。

 前衛のザフィーラさんがタンクとして敵のヘイトを惹きつけ、中衛のグレイグさんが範囲攻撃で倒していく。回復とバフを担当するデュランさんが、ザフィーラさんを回復したり、グレイグさんにバフを渡したりする。仲間の動きと敵の動きを後衛のラルフさんがつぶさに観察して的確な指示を送り、援護射撃や牽制などを行なっている。


「あのザフィーラとかいう筋肉ダルマの魔法……結構な硬さのようね」


「盾の魔法ですよね?」


「えぇ、基本的に防御魔法っていうのはイメージに依存する部分が大きいのよ」


 メルツェナさんが言うには、ほとんどの魔法使いはカイトシールドのような盾か、周囲を囲むドーム型の盾をイメージするのだとか。

 それ自体は悪いことではないが、守るものというイメージのせいで、防御にしか使わない者が多いらしい。

 あたしは盾なんて使わないから分からないけど、防御するだけなら魔法で盾を生み出す必要はないというのは納得出来る。


「でも、あの筋肉ダルマは違うのよ。あいつ、盾魔法を自由に使っているのよね。ほら、あれ」


 メルツェナさんが指差す先には、盾を横に展開して足場にし、それを駆け上がるザフィーラさんの姿があった。


「デュラン、頼む!」


「任せて! 『貫通化付与(ペネトレイト・アップ)』!」


 ザフィーラさんの要請に、デュランさんが魔法の貫通効果を高めるバフを与える。

 そのバフを受けたザフィーラさんは、自身を追いかけてくる鹿に向き直って吠えた。


「行くぞ! 『守護剣山(ソード・プリズン)』!」


 鹿たちの足元から無数の剣が生えてきたのだが、驚く事にそれは攻撃魔法ではなく、盾魔法の応用であるようだ。

 なるほど、盾を剣みたいに薄く細くして地面から生み出しているんだ。

 魔力で出来た盾は、物質的な盾と違って、形も大きさも自由に変える事ができる。だからこそ出来る芸当だよね。


「へぇ、なかなかやるわね」


「盾を足場にしたり、攻撃に使うなんて、なかなか思いつかないですもんね」


 2頭の鹿を串刺しにしたザフィーラさんに、ラルフさんからお叱りの声が届く。


「おいザフィーラ! 毛皮が重要って言ったんだから、穴だらけにするのは勘弁してくれよ!」


「む……すまない」


「反省は後にしろ! ラルフ、あと何体だ!?」


「今ので残り12だ!」


 着地したザフィーラさんを叱りつけたラルフさんに残存数を聞いたグレイグさんが前に出た。


「よし、じゃあ一気に終わらせるぞ! 範囲攻撃で動きを止める! ザフィーラは盾で残りを囲んでくれ! デュラン、範囲拡大と時間延長のバフをくれ! ラルフは撃ち漏らしを頼む!」


 お、どうやらここで勝負を決めるみたいだ。


「『大盾結界(シールド・プリズン)』!」


 ザフィーラさんが残った鹿たちを囲むように盾を生み出して逃げ場を無くし、


「『範囲拡大付与(ワイド・アップ)』、『時間延長付与(エクステンド・アップ)』、『強化付与(ブーストアップ)』」


 デュランさんが範囲拡大と時間延長、魔法強化のバフをグレイグさんに付与し、


「氷魔法はあんまり得意じゃないが、あんなに綺麗な戦い方を見せられては黙っていられないからな! 『銀雪の氷原アイスフィールド・オール』、『雪女の手招きフロスト・インビテーション』!」


 グレイグさんが盾で囲んだ範囲内に雪原を作り、その雪原からたくさんの雪女の手を生み出して鹿たちの足を掴んで動きを封じた。


「ちぇ、結局俺の出番はねぇじゃんか……」


 魔法の矢を用意していたラルフさんは残念そうに魔法の矢を解除すると、グレイグさんたちの元へ駆け寄り、手刀に魔力を束ねた魔法の剣を作り出すと、手近な鹿の頭を刎ねた。


「ラルフがいるから僕たちは安心して戦えるんだよ」


 デュランさんが神妙な面持ちで頷きながら、同じように魔法の剣で鹿の頭を叩き切る。グレイグさんも同じように鹿を対処していく中、ザフィーラさんだけは鹿を倒さずに、万が一に備えている。

 足を止めたとは言え、鹿はまだ生きているし、魔法も使えるからね。盾魔法を使えるザフィーラさんが注意していれば大丈夫だろう。

 案の定、残った鹿たちは凍りついた足をなんとかしようともがき、魔法を乱れ打っている。それをザフィーラさんは何食わぬ顔で防御し、3人が鹿の頭を落とすのを見守っていた。

 数も少なかったのもあって、10分も掛からずに残った鹿たちを倒し終えると、グレイグさんたちはようやく肩の力を抜いて大きな溜息を吐く。


「ようやく終わった……疲れたな」


「あぁ。しかし、結構立派な群れだったな。角がデカいのがいくつかいる」


 なんて談笑している『黒金の雷雨』の元へ、あたしとメルツェナさんが近づいていくと、全員が疲れ切ったような笑みを浮かべていた。


「お疲れ様です! 最後の魔法、すごかったですね!」


 あたしの感想を皮切りに、何故か反省会が始まってしまった。


「あんたたちの戦い方を見させてもらったけど、なかなか良かったわ」


 メルツェナさんが偉そうに上から目線でそう話し始める。

グレイグはリーダーですが、指揮はできません。

戦闘の主導権はラルフが握っています。

パーティーの代表者として登録されているので、会議やイベントなどにはグレイグが出席する感じです。

ちなみに、グレイグに指揮能力がないわけではありませんが、高くもないです。

どちらかといえば、他のみんなを引っ張っていく能力の方が高い感じです。

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