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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第2章:冒険者邂逅編

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66、相棒の名は

 ベルムッドさんの鍛冶場はかなり広かった。

 25メートルプールがすんなり入るくらいの広さがある。

 奥にはある巨大な炉では轟々と炎が燃え盛り、辺りを見れば大きな作業台が幾つもあり、さらに鍛冶に使う様々な道具や設備があった。

 この異世界に来る前に、1度だけ自分の日本刀を作ってもらった事があったけど、その時にお邪魔した鍛冶師の工房は小さな小屋みたいな鍛冶場だったから、この広さには素直に驚くばかりだ。

 しかも、そのどれもがベルムッドさんのサイズに合わせてあるから、1回りも2回りも大きい。


「さて、鍛冶場で相談を受けるなんて事はまずねぇからな……椅子がない。ちょっと行儀が悪いが、それに座ってくれ」


 ベルムッドさんが用意してくれたのは、厚手の布が掛けられた金床だった。


「え!? これに座っちゃって良いんですか!?」


 鍛冶に使うものに座るなんて罰当たり過ぎないかな?

 なんて戸惑っていると、ベルムッドさんは「気にするな」と笑う。


「そりゃあ、もう使ってないんだ。叩き過ぎて歪みとヒビが酷くてな。さっさと処分すりゃあ良いんだが、なんだかんだ思い出があってな……」


 じゃあ尚更座れるわけないじゃん! と言うのが顔に出てたのだろう。ベルムッドさんはバツが悪そうに眉を顰めていた。


「まぁ、流石にそれに座るのはダメか……しょうがねぇ。それに掛かってる布を地面に敷いて座ってくれ」


「はーい」


 金床の布を取って地面に敷き、ちょこんと正座する。


「それで? ワシに剣を見て欲しいんだろ? それか?」


 ベルムッドさんの視線があたしから、あたしの右手にある相棒に移る。

 そう。

 それこそがあたしがここに来た理由。

 エルダードワーフのベルムッドさんを探した理由。

 その全てがあたしの右手にある。


「はい。グリザークの街で引退した冒険者のお爺ちゃんから譲り受けました。そのお爺ちゃんは……えっと……イスカンダル王国? みたいな名前の国の……近くにあるダンジョンの最下層で、ダンジョンマスターのベヒーモスを倒した時にドロップしたって言ってました」


「見してみろ」


 あたしはベルムッドさんに相棒を手渡す。


「ほぅ……こりゃあ……極東の島国で作られている剣だな?」


 鞘の作りや柄の意匠などの拵を1ミリも見逃すまいと観察をしていくベルムッドさんは微動だにせず、ただひたすらにあたしの相棒を見つめている。


「見事な鞘だな。この柄も理に叶ってる。ワシらが剣を打つ時、柄は扱う者の技量やスタイルによって変える。片手剣、両手剣、その他諸々。それらに応じて最適な柄を選ぶんだが……これは違うな? 両手持ち、片手持ち、どちらも対応出来るようになっている。それにこの柄の滑り止めは……糸か? 精巧な……うーむ、幾つかの種類の魔糸を撚り合わせてるな」


 そして、大きく深呼吸をして覚悟を決めたベルムッドさんは、ようやく鞘から刀身を抜いた。


「ほぅ……」


 ベルムッドさんの口から、思わず溜息にもにた感嘆が漏れる。


「悪くねぇ……いや、発言を撤回する。こりゃあ……命を賭した一振りだ。これを生み出した鍛冶師には最大の賛辞を贈らせてもらう」


「それにしても刀身が薄いな……だが、見事なもんだ。それに、刀身に見えるこの模様はなんだ?」


 刀を傾けたり角度を変えたりと、ベルムッドさんは刀身をマジマジと観察する。


「それは刃文です」


 刀作りを見せてもらった時に教えてもらったんだけど、刃になる部分と峰になる部分に粘土を塗るんだよね。

 その時、峰側の粘土を厚くすることで、熱してから水に入れた時に粘土が薄い刃の部分は急激に冷されて硬く、粘土が厚い峰側はゆっくり冷やされて柔らかくなるんだよ。その硬い部分と柔らかい部分の境界線が刃文になるんだって。

 だから同じ刃文は1つとしてなくて、それぞれの個性になるのだ。


「なるほどな……そんな作り方があるのか……片刃の剣なら確かに必要だな。にしても良い仕事だな。魔獣から出てきたって事は、こりゃあ奉納品か?」


 おや? 初耳の情報だぞ? なんだろ、奉納品って?


「奉納品って何ですか?」


「ん? あぁ、ドワーフじゃなきゃ知らねぇよな」


 そう言って、ベルムッドさんは奉納品についての話をしてくれた。


「ワシらドワーフは人生で最も優れた物を打てたと思った時に、神様に奉納するんだ。その時に、奉納した物が消える時がある。ワシらは神様の宝物庫に納められると言うんだが……まぁ、ドワーフにとっては最も名誉な事なんだ」


 それが魔獣からのドロップ品とどう繋がるんだろ? ……いや、待てよ?


「その宝物庫に納められた武器が、魔獣を倒すと現れる事があるってことですか?」


「あぁ、そうだ。神の蔵で務めを果たした武器は、それを持つに相応しき者へと下賜される。何も武器だけじゃねぇ。薬や宝石、鎧なんかもあったな……」


 おぉ、なるほど。ゲームでよくあるモンスターを倒した時のドロップ品って、異世界だとそういう設定になっているのか……なるほどなるほど。確かに説得力はあるよね。


「しかし、奉納品を下賜されるたぁ……お前はこの剣に相応しい者だと認められたって事だな」


「いえ、あたしは譲り受けただけです。あたしにくれたお爺ちゃんはこれを使いこなせなかったって言ってたし……」


「だが、今手にしているのはお前さんだ。それに、その感じなら使いこなせるんだろ?」


「まぁ……はい。まだ胸を張って誇れるほど強くはないですけど、そうですね……あたしはその子に相応しいと思って貰えるように頑張りますよ!」


「それを忘れるなよ」


 カチン、と刀身が鞘に納められる。


「それで? この剣をどうして欲しいんだ? 見たところ、欠けや摩耗は無かったが……」


「あぁ、そうでした。実はその刀には、4つの回路があるそうなんです。それとその子の名前もまだ知りません。グリザークの街にいるドワーフの人に、鑑定をするならエルダードワーフが持っている専用の道具が必要だって言われたので、その子を鑑定して欲しいんです」


「なるほどな……確かに、武器を鑑定する道具はワシらエルダードワーフしか持っとらん。と言うか、ワシらしか使えん」


 そう言うと、ベルムッドさんは徐に立ち上がって、手近な作業机の上に転がる物をずざぁと雑に払いのけて、空いたスペースに相棒を置いた。


「鑑定をするにはな……ワシらエルダードワーフの持つ鑑定器が必要なんだが……あーっと、どこに置いたか……打つばかりでここ何年も鑑定して無かったからな……」


 そう言ってベルムッドさんは鍛冶場の中を探し始める。


「あたしも一緒に探しましょうか?」


「んお? あぁ、そうだな。頼む。鑑定器は石で出来た台座の形をしているんだが……真っ白だから見れば分かると思う」


 そう言われて、あたしは立ち上がる。正座をしていたせいか、足が痺れて足元が覚束ないけど、相棒のためなら我慢できるもんね。


「石の台座……真っ白……石の台座……真っ白……」


 そうして探す事、10分ほど。


「あ……これかな? ベルムッドさーん、これですかー?」


 あたしが見つけたのは白い1枚岩を切り出して作られたかのような石の台座だ。

 大きさな何と石油ファンヒーターくらいの台形で、全面には大きな緑色の宝玉のような物が5つもはまっている。

 その台座があった場所は鍛冶場の入り口の傍。乱雑に置かれた剣が何十本も積み上がった山の中だった。


「おぉ、これだ。すまんの」


「謝るくらいならちょっとは整理整頓した方が良いですよ?」


「分かってはおるんだがなぁ……こればっかりは治らん」


「まぁ良いですけど。それより、この台座、どうするんですか? ここに剣を刺すと鑑定してくれるんですか?」


「他にどうやって鑑定すんだ?」


 ベルムッドさんがむんず、と台座を掴むと、ノシノシと相棒を置いた作業台に向かう。

 どかっと台座を作業台に置くと、ベルムッドさんは鞘に入ったままの相棒を台座に突き刺す。

 驚いたのは、切先が少し入るくらいのスリットが、相棒が触れた瞬間にその隙間を広げて、どんどんと飲み込んでいったことだ。


「え、え!? ちょ、ちょっと! ベルムッドさん!? これ大丈夫なやつですか? 全部飲み込まれちゃいましたよ!?」


「大丈夫だ、気にするな。鑑定が終われば出てくる」


 そう言って腕を組んでどっしりと構えるベルムッドさん。

 あたしは気が気ではないけど、そう言うなら信じて待ってみよう、と同じように腕を組んで待つことにする。

 鑑定ってどれくらい掛かるんだろ? と考えた時にはすでに飲み込まれた相棒の柄がにゅっと出てきていて、ゆっくりと押し出されるように台座から吐き出されていた。

 なんて言うか……ところてん? モンブラン? そんな光景を彷彿とさせるな、これ。

 そして、相棒の全体が台座から吐き出されるとベルムッドさんは相棒を回収して、あたしに返してくれる。


「これで鑑定は終わりですか?」


 そう尋ねると、ベルムッドさんは顎をしゃくって台座を見るように促してきた。不思議に思って台座を見ると、台座にはまっていた緑色の宝玉が淡く輝き、ボワッと光の球を吐き出した。


「なんです、これ?」


 あたしがその光の球に触れると、それはパッと花が開くように広がり、見慣れたステータス画面のようなウインドウが出現した。


「それが鑑定結果だ。どれどれ?」


 ベルムッドさんがあたしの前に現れたウインドウを覗き込んでくる。


「ほぉ、こいつは……凄いな……」


「これが……相棒の、名前?」


「あぁ、そうだ。お前さんの持つその剣。その名がこれだ」


 ウインドウの1番初めの項目。

 そこには1番知りたかった、相棒の名前が表示されている。

 あたしは震える声で、ずっと待ち続けた相棒の名を呼ぶ。


「【理切】」


 それが君の名前なんだね。

ようやくモカの相棒の刀の名前が判明しました。

読み方は【理切】と書いて、【こときり】と読みます。

いやぁ、長かった。

でも、これでモカの心のつっかえが1つ無くなりました。


名前出すのおせーよ! ってツッコミは無しですよ!

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