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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第2章:冒険者邂逅編

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49、王都への旅路1

2章、冒険者邂逅編、始まります。

 王都・ユリディンギルまで、徒歩で1ヶ月ほどかかるらしい。

 らしい、と言うのは、あたしみたいな美少女剣士が1人で王都まで歩いて向かう、なんて事がこれまで無かったから比較出来なかったからだ。

 出発前にレモーネの村で色々と聞いたけど、大人の足で大体3週間くらい掛かるって言われたから、多めに見積もって1ヶ月くらいなのだとか。


「まぁ、急ぐ旅でも無いし、のんびり行くのも醍醐味だもんね」


 あたしがレモーネの村を出発して1週間ほどが経っている。

 2日前に山間部を抜けて、今は長大な草原地帯をさらに南下しているところだ。

 ここまでの道程で小さな村……と言うより集落に立ち寄っただけで、未だ村や街には寄っていない。

 話によればもう少し進むと村があるらしいけど、まだ見えてこない。

 ストレイドギルマスに、冒険者ギルドがあるなら立ち寄って依頼をこなせ、って言われていたけど、ギルドがある街なんて無かったよ。


「陽が落ちる前には辿り着けると良いな」


 長閑な草原地帯を緩やかな風が駆け抜け、青々とした香りを届けながら草木を揺らしている。

 この草原に出てからと言うもの、魔獣に遭遇する確率は格段に下がっているようで、まだ1体も出会っていない。


「まぁ、山の中のエンカ率が異常だったわけだ」


 山間部では、毎日5体以上の魔獣の遭遇したのだけど、1番怖かったのは、逆ケンタウロスもどきだね。


「思い出したくもないよ、あれは……まさに悪夢だったな」


 あれは3日前の深夜の事だ。

 夕食も終えて、少し早いけど寝ようか、とベッドに入った。

 でも、早い時間に寝てしまったことで、深夜の変な時間に目が覚めてしまった。寝直そうと思っても不思議と目が冴えてしまって中々寝付けない。

 だから、少し外の空気を吸いながら星でも見ようかな、なんて考えたんだけど、それが間違いだった、ってわけ。

 外に出たら、山の中だって言うのにやけに静かで、肌の内側を撫でられているような不快感があった。

 風もない、虫や鳥の声も聞こえない。

 全ての音が死んでしまったかのような静寂が、あまりにも気持ち悪くて、思わずアイテムボックスにしまっていた相棒を取り出してしまった。

 そして、生活魔法で燃え尽きた炭に火を着けて、新しい木を焚べる。

 パチパチと弾ける火花の音と、穏やかに辺りを照らす焚き火の色が、不快感を中和していく。

 しばらく、ぼけーっとしていると、不意にゾクゾクっと身体中に悪寒が走ったのが分かった。

 何かいる……しかも、とびきり危険なやつが。

 いつでも抜刀出来るよう、相棒を構えながら、ゆっくりと周囲の様子を伺うと、それはいた。

 あたしの真正面。

 距離にすれば、おおよそ50メートルほど。

 その姿は異様で、異形で、悍ましい。

 ケンタウロスというモンスターは知ってる? 下半身が馬で上半身が人間のやつ。それの反対を想像してみて。

 上半身が馬で、下半身が人間。

 焦茶色の体毛が全身を覆っていて、異様に耳が長くて、腕がない。

 上半身の馬に口は無くて、胴体? 首? とにかくその辺りに縦に裂けた大きな人間の口がある。

 嫌悪感を抱くようにわざと造られたとしか思えないようなその見た目に、思わずあたしは叫びそうになった。

 だけど口を塞いで、間一髪の所で踏み止まる。

 しばらくその魔獣と見つめ合っていると、その魔獣は大きな口を開けて、何かを吸い始めた。

 ヒョオオ、っと風の流れる音と共に、あたしの目の前にある焚き火の炎が揺れながら、その口に吸い込まれる。

 炎が無くなり、暗闇に支配された世界の中で、その魔獣は満足したように嘶くと、ゆっくりとした足取りで森の中に消えていった。

 あたしはその姿が見えなくなるまで、その後ろ姿を追った。ようやく充満していた不快感が消えたことで、震えるように息を吐いて、大きく深呼吸を繰り返した。

 あれはヤバい。

 とにかくヤバい

 見た目もそうだけど、多分今のあたしのレベルじゃ絶対に勝てない。

 それほどまでに強い。

 ドッと吹き出してきた冷や汗が気持ち悪い。

 というか、これで寝られるはずがない。

 あたしはすぐに撤収の準備を始めて、真夜中だと言うのにランタンに火を灯さず、逃げるように出発した。

 それからすぐに草原地帯に出て、ちょっとは安心出来るようになって、今に至るってわけ。


「はぁ……早いとこ村に着いて、誰かと話したい。温もりが恋しいよ……」


 なんてボヤいたあたしが村を見つけたのは、それから6時間後。

 陽が沈み始め、地平線の彼方から夜が顔を覗かせ始めた頃のことだった。



 辿り着いた村はお世辞にも立派とは言えなかった。

 丸太を削り出して造られた簡素な防護柵で村を囲み、至る所に補修の跡が見える石造りの家々。

 だけど、門の両脇に掲げられた篝火の灯りが、風に揺られて闇を追い払っているのを見た途端、あたしの中で張り詰めていた緊張の糸がスルリと解けていった。

 あぁ、なんでこんなにも嬉しいんだろ……良かった、人もいる。門番かな?

 村に近づいていくと、皮の鎧を着た背の高いおじさんが、怪訝そうな表情であたしを呼び止める。


「おーい、旅の冒険者か? こんな時間に珍しいな。どっから来た?」


 あたしは努めて愛想良く、だけど疲れと安堵から引き攣ったような笑顔で、冒険者プレートを見せる。


「あ、こんばんわ。グリザークの街から王都に向かっている途中です。一晩泊めて欲しいんですけど……」


「はぁ、こんな若い女の子が1人で? まぁ、プレートは本物だな」


 あたしの掲げたプレートをジロジロと眺めたおじさんは、ようやく納得したのか、村の中を指差した。


「すぐそこに旅人用の宿がある。『跳ね馬の蹄亭』って宿だ。口うるさい婆さまがやってるんだが、飯だけは美味いんだ。1泊で銀貨2枚だったはずだが、大丈夫か?」


「はい、問題ありません。ありがとうございます」


 おじさんに会釈して、あたしは足早に村の中に向かう。

 鼻をくすぐるのは煙突から漂ってくる薪の匂いと、美味しそうなスープの香り。

 まるでセーフエリアに入った時のような安心感にホッとする。

 キョロキョロと辺りを見渡すと、本当にすぐそこに宿屋があった。看板には『跳ね馬の蹄亭』と書かれている。


「ここだね……ごめんくださーい」


 宿屋の扉を開けると、来客を知らせる鐘の音がからんころん、と乾いた音を立てた。

 中はこじんまりとした造りになっているけど、中央の大きな暖炉には煌々と火が焚かれ、村の男たちだろうか、木のジョッキを片手にワイワイと騒いでいる。


「なんだい、こんな時間に客とは珍しいね。んん? お前さん、見ない顔だね? 若い女が1人で何してるんだい! 娘っこが1人で出歩くもんじゃないよ!」


 宿の奥から出てきた、門番のおじさんが言っていた通りの口うるさそうなお婆さんは、頭のてっぺんからつま先まで、あたしを値踏みするように観察すると、ふん、と鼻を鳴らして帳簿を叩いた。


「あー、えっと……一晩泊まりたいんですけど。あと、ご飯ってすぐ食べられますか?」


「あんた、旅人かい?」


「いえ、冒険者です。グリザークの街から王都に向かっている途中です」


「1人かい?」


「えぇ、まぁ」


「ふん、1泊で銀貨2枚。スープとパンだけならすぐ出せる。待てるんなら子牛の香草焼きを出してやるよ。それと、おかわりは別料金だからね」


 パワフルな肝っ玉婆ちゃん、って感じだ。勢いに押されて少し戸惑ってしまったけど、あたしは料金を差し出して、案内された角の席に座り込む。

 宿の1階は酒場になっているようで、奥にある階段を登れば泊まる部屋があるようだ。

 そして、余所者が珍しいのか、騒いでいた男たちは少しだけ声を落としてあたしのことをチラチラと見てはコソコソと話している。

 しばらく待っていると、お婆ちゃんが食事を運んできてくれた。

 大きめに切られた根菜類と名前も知らない獣の肉がゴロゴロと入った、湯気の立つスープ。それから焼き立てではないけど、仄かに温かい黒パン。そして分厚い肉の香草焼き。

 素朴そうな見た目だけど、暴力的な匂いのおかげで、お腹が鳴く。

 あぁ、早くそれを食わせておくれ、あんまり待たせないでおくれ、と駄々をコネ始めたのだ。

 あたしは祈るようにスプーンを手に取って、スープを1口。


「……う、っまぁ……何これ、めちゃくちゃ美味い!」


 身体の芯まで染み渡るような暖かさが、心を解してくれる。それにちょっと濃い目の塩気が堪らない。

 野営中の食事はそれなりにこだわってはいた。

 あたしのアイテムボックスは時間が停まるから、作り立てを入れておけばいつでも温かいものが食べられるし、食材は新鮮なままだ。

 だけど、1人で食べるのは味気ないし、楽しくない。

 知らない人だけど、周りに誰かいるのはとても嬉しいものだ。

 1口、また1口、とスープを飲み、パンを齧り、肉を喰らう。


「………ふぅ」


 黙々と食事をして、最後の一滴、一欠片まで充分に味わったあと、あたしはようやく一息吐いた。

 お婆ちゃんがナイスタイミングで持ってきてくれた食後のお茶を飲みながら、暖炉の火を見つめていると、ふとあの逆ケンタウロスの悍ましい姿を思い出してしまう。

 もしあの時、あれと戦っていたら勝てただろうか?

 無意識に、机の脇に立て掛けた相棒を見つめる。


「流石にアレと戦うの避けたいけど、いつかはあんなのと戦わなくちゃいけない日が来るんだろうなぁ……」 


 でも、今じゃない。

 今は無理をするような場面じゃ無い。そういう場面が来たら腹を決めないといけないけど、それは未来のあたしに任せよう。

 ご飯を食べ終えて、リラックスしたあたしは、お婆さんに案内されて2階の部屋へ行った。

 お世辞にも柔らかいとは言えない、藁の詰まったベッドだけど、それでもそこに潜り込んだ瞬間、あたしは泥のような眠りに沈んでいった。

 窓の外では、まだ風が草原を駆ける音がしている。

 けれど、今のあたしにはそれが、心地の良い子守唄のように聞こえた。

王都への旅路は4話くらい続きます。

のんびりお付き合いくださいませ。


それが終われば、本格的に2章が動きます!


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