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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第1章:冒険者登録編

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48、レモーネの村、再び

 王都・ユリディンギルへと向かう道中に、レモーネの村がある。

 考えてみれば、レモーネの村から北上するとグリザークの街があり、グリザークから南下すると王都があるのだから、その途中にレモーネの村があるのは当たり前だった。


「あー、なんか、ちょっと感動的な別れをしたからか、すっごい気まずい」


 なんか見覚えある道だなぁ、と呑気に思っていたが、いよいよ見覚えのある村が見えて来ると、あたしは真昼間だと言うのに外套のフードを目深に被り、足早に村の前を通り過ぎようとした。した……のだが。


「……………モカ?」


 聞き覚えのある声に、ビクゥッ! と体が跳ね、その拍子にフードが捲れてしまう。


「やっぱりモカだ! おかえり! どうしたの……って、すごい格好だね?」


「レ、レモーネ……えーっと……ひ、久しぶり?」


 大きな籠を背負ったレモーネが村から出てきた場面にちょうどかち合ってしまったのである。


「久しぶりだね! それで? 北の街はどうだった?」


 グイグイと距離を詰めて来たレモーネはあたしが逃げないように腕を絡めて村の中に引っ張っていく。


「あ、ちょ、ま、レ、レモーネ、ちょっと! 待ってぇぇぇぇえええええ!」




 我が村の英雄が帰ってきたぞー、と話が伝わるのにそれほど時間は掛からなかった。

 何ならレモーネが大声で「モカが帰ってきたよぉ!」と叫んだせいで、一瞬で広まった結果、村中から人が集まってきて、揉みくちゃにされる。

 村人たちからの質問攻めに辟易としながらも嬉しそうなレモーネを邪険にする事も出来ず、あたしはまな板の上の鯉の気分を味わう羽目になった。

 それから、村人たちから解放されたあたしは、レモーネの家にお邪魔して、この村を出た後の話を聞かせてあげたのだが、レモーネの反応が可愛くてついつい話が弾む。


「え、じゃあ、モカは冒険者になったの!?」


「あ、うん。ほら、これ」


 アイテムボックスからギルドカードを取り出して見せてあげる。


「うわぁ、本物? これ本物だよね! すごい! これ、なんて書いてあるの!?」


 村を出てユルゲンさんと出会い、冒険者になり、ムカつくバカをボコボコにして、魔獣を倒して、お爺ちゃん剣士とドワーフと仲良くなって、ダンジョンに潜って、オーガをボコボコにして……と、おおよそ小説にして1巻分ほどの冒険譚を、面白おかしく話していたあたしは「あ、そうだ」と手を叩いた。


「ねぇ、レモーネ。あたし、まだここのみんなに何にもお返しが出来てないからさ、何か恩返し出来る事ってあるかな? 特に無いならお気持ちとしてお金払うけど……」


 あたしはそう言って、アイテムボックスから銅貨と銀貨がぱんぱんに詰まった巾着袋を取り出して、机に置いた。


「うぇえええ、何これ!」


「え? だからあたしの気持ち。こんなんじゃまだまだ足りないけど、残りはそのうちって事で……」


「い、いいよぉ! 恩返しだなんて! 私たちは、とっくにモカから色んな物を貰っているんだから、ね?」


 レモーネも、みんなと同じ事を言うんだなぁ……なんだか、嬉しいな。


「じゃあさ、あたしも仕事手伝うよ。またあの果実を取りに行くんでしょ? それとも森の魔獣でも狩ってこようか?」


「えぇ、いいよぉ。モカは家でゆっくりしてて。天剣探しの旅の途中なんでしょ? だったらちゃんと休んで、明日からの旅に備えないと!」


「いいの! あたしが手伝いだけなんだから!」


 まだ出会って間も無いのに、もう何十年も一緒に過ごしてきた親友のように感じてしまう。

 距離感なのか、人柄なのか、或いはどちらもだろうか。

 なんにせよ、レモーネと一緒にいると感じる居心地の良さに、自然と笑い声が増えて、素の自分を曝け出せた。



 その夜。

 村は宴会になった。

 あたしが狩ってきた4頭の猪魔獣と1匹の蛇魔獣の肉と、仕入ればかりの果実酒や蒸留酒が振る舞われ、大人たちは飲めや食えや歌えや騒げ! と言った具合に盛り上がる。

 子供たちはあたしの冒険譚に耳を傾けて、泣いたり笑ったり驚いたりと大忙しだ。

 話が終わる頃にははしゃぎ疲れて船を漕ぐ子や、興奮で「俺も冒険者になる!」とチャンバラごっこに興じる子たちが親に連れられて三々五々に散っていく。

 祭りが終わっていく寂しい雰囲気はどこの世界でも共通のようで、例に漏れず、あたしも果実水を手にしたまま、村の中央で煌々と燃える焚き火の前で丸太に座って静かにその炎を見つめていた。

 辺りに村人はもういない。

 きっと全員が楽しい気持ちのまま、眠りについたのだろう。

 温くなってしまった果実水に視線を落としながら、ゆらゆらと踊る火を見ていると、不意に後ろから声を掛けられた。


「モカ……隣、座ってもいい?」


 何だか寂しそうな表情のレモーネがいた。


「……いいよ」


 パチパチと爆ぜる火の粉を見つめながら心地良い沈黙を楽しんでいると、レモーネはあたしの隣に座って、ポツポツと話し始める。


「私……モカに初めて出会った日にね、思ったの。あぁ、これはきっと物語が始まるんだ、って」


「物語?」


「そう。ある日、少年は森で綺麗な少女を助けるの。その少女は見た事も無いようなすごい魔法を少年に教えて、少年を偉大な魔法使いに育て上げる。少年はそんなすごい魔法を人のために役立てようと旅に出て、色んな人を助けて、偉大な魔法使いになったの」


 子供なら誰もが知っている有名な物語。

 ベッドに入ってお母さんに読んでもらう昔話。


「だからね、私がモカを見つけた時、きっとこの綺麗な少女は、私に魔法を教えてくれるんだ、って思ってたの……」


 尻すぼみになるレモーネの言葉に、あたしは何も言えない。


「でもね、全然違った。モカは言葉が分かってなかったし、1人であんなおっきな魔獣に立ち向かっていくし、魔法使いじゃなくて剣士だったし……」


「……ごめん」


「いいよ。でもね? 私はモカと出会って、モカが強い事を目の当たりにして、自分が夢を諦めてたって知ったんだ」


「諦めてた?」


「うん。諦めてた。だってそうでしょ? 自分では何の努力もしないで、いつか物語のような事が起きないかなぁ、って待ってただけだった」


 レモーネはそれを諦めと呼んだ。

 受け身の姿勢で何か特別な事が起きたら自分はきっと……と妄想をするだけでは、何も始まらない。

 だからそれは諦めと同義なのだと、レモーネは言っているのだ。


「でもモカは違った。強くなろうとしてた。自分が今出来る全てを賭けて、強くなろうとしてた。それで、気付けばモカは私より先に……もう追いつけないくらい先にいたんだ」


 あの時、森に入ってはレベルを上げるために少し無茶な事もした。その度にレモーネはあたしを叱ってくれたけど、自分の事のようにはしゃいでもいた。

 あの時も、そんな事を思ってたのかな……?


「それで、私も負けられない! って思ったんだ。夢を目指すモカに追いつきたいって強く思ったの」


 あたしの夢は天剣を手に入れて、剣神を倒すこと。

 じゃあレモーネの夢は?


「私の夢はね、その物語に出てくるような、偉大な魔法使いになること。世界中を旅して困っている人を助けたり、悪い人を退治したり、強い魔獣を倒したり……そんなすごい魔法使いになりたいの」


 だからこそ、その背中は眩しかった。

 夢に向かって突き進む姿は勇気を貰えた。

 こんな村にいても、夢を追いかけて良いんだと、言葉ではなく、態度で教えてくれた。


「だから私ね、諦めてた夢を叶えるために頑張ってるんだ」


 現在、レモーネは村にいる引退した冒険者の2人組に、魔法の基礎を教えてもらいながら修行をしている。

 魔法の才は人並みだが、その集中力と生来の理解力の高さのおかげか、初級の魔法であれば何とか使えるようにはなったらしい。


「でも、また指先くらいの火を出すのに時間かかるし、このコップの半分くらいの水も出たり出なかったり……」


「そうなんだ……レモーネも自分のやりたい事、頑張っているんだね」


 果実水を1口。温い果実水はそれでも火に当たって暖まった体をちょっとは冷やしてくれる。


「私、もっと練習して、魔法がちゃんと使えるようになったら、モカみたいに冒険者になるよ。それで、モカを追いかけるからね」


「うん、分かった。待ってる」


「それまで死んじゃダメだよ」


「そうなる前に追い付いてね」


「が、頑張る!」


「お願いね」


「約束だよ?」


「うん、約束」


 はにかむレモーネに、あたしも穏やかな笑みを浮かべた。

 あたしの強さが、誰かの希望になるなんて………想像もしてなかったな。

 恥ずかしいようなこそばゆいような、何とも言えない気持ちに心がざわめく。

 でも……うん、悪い気分じゃないね。

 そうやって、あたしたちは焚き火が消えるまでお互いの夢を語り合い、いずれ来る約束に思いを馳せた。



 翌日。

 あたしは村の入り口でレモーネから大きな麻袋を受け取っていた。


「ねぇ、レモーネ? 流石にこんな大量に貰っても、1人じゃ消費しきれないよ」


「モカの収納魔法は時間が止まるんでしょ? だったら腐らないし、もし食べきれないなら誰かに上げてもいいから、ね?」


 その中身は、2人で一緒に取ったあの果実。


「分かったよ、ありがと」


「寂しいけど……頑張ってね!」


「レモーネも修行は大変だろうけど、諦めないでね!」


「うん! 次に会う時は、モカと同じ冒険者で凄腕の魔法使いになってるからね!」


「じゃあ、あたしは最強の剣士になっておくよ」


「うん。じゃあ……いってらっしゃい!」


「いってきます!」


 いずれ来たる再会の日を夢見て、あたしは楽しげな笑みを浮かべ、歩き出す。

 小さいけれど、この魔法一強の異世界を剣一本で成り上がる旅の一歩を、あたしは踏み出した。

 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございますッ!

 これにて第1章完結となります。

 もし『面白かった!』『2章も気になる!』と思っていただけたら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、執筆の大きな力になります!


 第2章はこのまま本日中にスタートします!


 さらにパワーアップすると思いますので、どうぞお楽しみに!

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