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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第1章:冒険者登録編

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29、退却ではなく、脱兎の如き敗走を

 あたしの言っている事がすぐには理解出来ないギルマスは、怪訝な顔で首を傾げた。だが、理解出来た冒険者もいたようで、盾班の男が震える声で正解を口にする。


「つ、つまり……この部屋に向かって、今もオーガが掘り進めてて、もしかしたら、この部屋に大量のオーガが雪崩れ込むかも、って事か?」


 他の人たちも、彼の言葉であたしの言った最悪の展開が嫌でも思い浮かんだのだろう。悪気はないけど、最悪のパターンも想定しておかないといけないからね。

 ま、こう言う時はその最悪のパターンを引きがちだけど。


「っな、な、なん、そんなことが……」


「可能性の話だし、すぐにあいつらを片付ければ済む話だよ。それじゃ、行くよ!」


 そう言って、あたしはスキルを発動して一瞬にしてトップスピードまで加速する。

 稲妻のように不規則に、だがジェネラル以外のオーガを撹乱させながら、広い空間を跳躍する。

 右手に片手直剣、左手に短剣を構え、ジェネラルの前に陣取る盾を持たないハイオーガタンクの左腕を切り落とし、その背後に隠れるメイジの杖を手首ごと切り捨てる。


「――フッ!」


 運動系のスキル『瞬動』と『天躯』に加えて『立体機動』を駆使して、文字通り縦横無尽に動き回り、ジェネラルに肉薄する。

 武器は槍だけ、防具は前後を覆う胸当てと兜。

 兜のせいで首は狙えない。

 心臓も無理。

 となれば胸当ての隙間から脇を――狙うッ!

 片手直剣で攻撃をして、まずは槍を振らせる。

 凄まじい膂力があるとしても、槍を振った後の技後硬直はどうにも出来ない。


 その攻撃を悟らせないために、殺気を乗せて剣を振るうが、当然のように槍で防がれ弾かれる。

 だけどそれは狙い通りだよ。

 わざと無防備を晒したおかげで、ジェネラルは槍を引き、両手を使って全力でそのまま叩き付ける。

 膂力によって上乗せされた速度で迫る槍を、あと数センチズレていてれば頭蓋骨が粉々になる、という程の距離だけ避ける。

 ズガンッ! とおおよそ槍が出す音ではない破砕音と共に地面が陥没し、ジェネラルがほんの一瞬だけ硬直した。

 これこそ、こここそ、あたしが望んだ一瞬。

 だけど、それは無駄だった。

 ジェネラルはあたしの左手にある短剣が胸当ての隙間から脇腹を刺した瞬間に身を捩ったのだ。

 嘘でしょ……あの一瞬で? 最悪の展開になっちゃったぞ、これは。

 筋肉に阻まれて致命傷にはならず、急激に身を捩ったため、短剣から手が離れてしまう。

 レベル差か、ステータス差か……いや、考えるのは後!

 すぐに思考を切り替えて無理な体勢のまま跳躍をして、ジェネラルの追撃から逃れようとしたけど、ジェネラルの槍が思ったよりも早い。


「受けるしか、ない!」


 片手直剣で槍の叩きつけをモロに受け止めながら、その勢いを殺すために後方へ跳躍し、事なきを得る。

 地面に着地した瞬間には、あたしは再びトップスピードまで加速。ジェネラルの左半身から槍を持つ腕を斬りつけ、即回避。

 分厚い皮膚と筋肉のせいで大したダメージにはならないが、それでも同じ箇所を正確に斬りつけていけば、問題無い。

 速度を落とさず、スタミナが続く限り、敏捷の値を信じて跳躍する。

 既に、あたしは銀色の稲妻と化している。

 流石のジェネラルもその速度をずっと追う事は出来ずに、ただ力任せに槍を振り回し、どうして当たらない! と激昂し始める。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 いきなりジェネラルがつんざくような咆哮をした。

 怒りのボルテージが最高潮に達したのかとも思ったけど、すぐにその考えを改める。これは怒号などでは断じてない。


「やっば! ギルマス! こいつ援軍呼んだっぽい! たぶん、さっき言ったやつ!」


 ジェネラルの咆哮の真意に気付いたあたしは、その一瞬の隙で全てを終わらせようと納刀し、居合の構えのまま跳躍。

 雄叫びを上げて無防備となり、兜と首の間に出来た僅かな隙間を狙って抜剣。

『居合術』と『抜刀術』の効果により攻撃力が上昇した一閃が、吸い込まれるようにジェネラルの首筋を切り裂き、頭を刎ねた。


「よっしゃ! やった!」


 その光景を見た冒険者が歓喜の声を上げるが、戦いの最中にそんなことをすればどうなるのか、分からなかったのだろうか。


「おいバカ!」


 ストレイドが注意をした時にはもう遅かった。

 ハイオーガメイジの放った酸弾が直撃し、全身から悪臭の煙をしゅうしゅうと放ち、ドロドロに溶けていきながら、崩れ落ちた。


「クソがッ! こんなとこで使いたく無かったが、背に腹はかえられん!」


 ストレイドが大きく足を踏み込み、正拳突きの構えを取った。


霊魂(スピリット)憑依(エンチャント)!『(フット)黒蛇豹(レオパルドデスナーガ)』! 『右腕(ライトアーム)鉄鋼犀(アイアンライノ)』! 秘撃『破鋼重撃(アイアン・インパクト)』!」


 ストレイドの足に豹のような紋様が、腕には犀のような紋様が現れると同時に、一瞬でハイオーガタンクに肉薄し、鋼すら打ち抜く破壊力が大盾ごとオーガの腹を抉り取る。

 でも、それだけでは止まらず、拳に乗ったエネルギーが衝撃波となってその後ろにいるハイオーガメイジの頭を吹き飛ばした。


「お前ら! 撤退だ! あいつの言う通りなら、挟撃どころの話じゃねぇ! 包囲殲滅されるぞ!」


 残っているのはメイジとタンクが1体ずつだが、その2体はストレイドの攻撃の瞬間に合わせてあたしが倒していた。


「死体の回収と殿は任せて! 早く逃げて!」


 言われてすぐに2人の死体を掴んでアイテムボックスに突っ込むと、広間を出ていくストレイドたちを追いかける。

 ダンジョンの入り口からここまで来るのに、難しい道を選んでいないのが幸いしたよね。

 先頭のストレイドはオーガに出会った瞬間には拳を振り抜いており、2、3体のオーガならば簡単に仕留めていく。

 そして殿を務めるあたしは、怒り狂った鳴き声で迫ってくるオーガたちを斬って斬って斬りまくる。


「あぁ! もうっ! 多いってば!」


 中には武装している上位種もいて、酷使しすぎた片手直剣の刃が欠け、凹み、曲がってしまう。

 さらに、狭い通路だったこともあって、あたしの回避行動に制限が掛かってしまい、被弾する場面も増えてしまった。

 アレク爺さんから防具をもらっておいて良かった、って思いたいけど、ボロボロになっていく剣や防具をさらに酷使しなくてはいけないことに悲しくなる。


「邪魔、すんなッ! 」


 だけど、死体が増えれば増えるほどにオーガたちにとっては狭い通路がさらに狭くなっているみたいで、オーガたちの行動は制限されていく。

 倒れていく死体のせいで碌にあたしたちを追えなくなるのと、出口の光が見えたのは同時だった。


「外だ!」


 ストレイドが叫び、全員がダンジョンの外へと飛び出る。


「戻ってきてるパーティはどれくらいだ!?」


 慌てて確認するストレイドに、先に戻ってきていたパーティーがすぐに答えた。


「ギルマスの所で最後です! 思いの外、オーガ共が強くて苦戦を強いられたので、全パーティーが1度、体勢を立て直すために戻っています!」


「よしッ! 土魔法でダンジョンの入り口を封鎖しろ! 数日持てば良い! 早くしろッ!」


 ストレイドの怒号を聞き、まだ余力のある魔法使いたちが土魔法を行使し、ダンジョンの入り口を何重にも土壁で覆って封鎖する。


「だぁあああああっ! クソ! クソがッ! クソがぁあああああああ!」


 怒りのままに地面を殴り付けるストレイドの怒号は深く胸を抉り、生き残った冒険者たちは己の無力さに唇を噛み締める事しか出来なかった。

 真上から照りつける太陽がやけに眩しくて、あたしたちの失態を嘲笑っているようにも見える。

 そう、つまり。

 第1次ダンジョンアタックは失敗に終わったのだ。

今日は19時の投稿で終わりです。

明日も何話か投稿出来るよう頑張ります!


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