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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第1章:冒険者登録編

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22、天剣を求める理由とはーー

 ギルドの買取窓口で、6体のオークの死体を出したらすごい勢いで怒られた。


「こんなところでそのままの魔獣を出さないで下さい! ここはあくまで冒険者たちが自分で解体したものを持ってくるところですよ! 魔獣の持ち込みは解体小屋の方に行ってください! あーもう! オークの血で制服が汚れちゃったじゃない!」


 先日の受付嬢ではなく別の人だったけど、すごい剣幕だ。


「あ、ごめんなさい。じゃあ、解体小屋ってどこ?」


「ちょっと待ってて!」


 そう言って受付嬢はバックヤードに戻って行く。

 少し待っていると、海坊主みたいな頭の巨漢と一緒に戻ってきた。どうやら解体職人のようだ。


「おう、オークを狩ってきた嬢ちゃんってのはお前か?」


「そうですけど……」


「よし、ついてこい。解体小屋はギルドの裏手にあるんだ」


 そう言われて、解体職員の丸坊主のおっさんの後を追いかけて、解体小屋へ来た。


「悪いがその辺りに出してくれ」


 先ほどのやらかしで収納魔法の使い手――それもかなりの大容量――だと言うのはバレているのか、おっさんは何も言わずに、小屋の一角を指差す。


「あ、はい、じゃあよろしくお願いします」


 ズルッと6体のオークの死体を取り出す。


「まぁまぁのサイズだな。これは全部買取でいいのか?」


「はい、全て買取でお願いします」


「分かった。金は後日、受付から受け取ってくれ。あぁ、それと。解体費用が差し引かれるから覚えておいてくれな」


「分かりました、よろしくお願いします」


 ペコっと頭を下げて、受付カウンターへと戻る。

 受付に戻ると、冒険者たちはあたしを見てザワザワとしている。


「……?」


 不思議に思って首を傾げたモカには理由など分からない。

 そもそも、先ほどのオーク6体の件が冒険者たちには衝撃だったのだ。

 ソロでジェネラルを含む6体の群れを怪我の1つもせずに倒せる程に強く、その6体が入るほど大容量の収納魔法持ちで、さらにスタイルも良く可愛い美少女。

 この場にいた冒険者たちの考える事は皆同じ。


((((俺のパーティーに欲しい!!!!!!))))


 全冒険者たちによる、モカ争奪戦が勃発した瞬間だった。

 とは言え、そんな男どもの欲望丸出しな考えなど知らぬまま、モカはカウンターにアレク爺さんからの依頼品を提出して、依頼達成の報告をするのであった。


「アレクお爺さんからの依頼、達成しました。ええっと……」


 今度は買取窓口ではなく、依頼窓口の方に報告だ。

 窓口にいたのは先日の受付嬢さんだ。確か名前は……モ、モ、モイ……


「モモイさん!」


「残念、モイラです」


 あ、そうだ。モイラさんだ。うっかりうっかり。おや? そう言えば同名の女神様がいた気がするけど……あれはギリシャ神話だっけ? それとも某1期生だっけ?


「モカさん、依頼の達成お疲れ様です。はい、確かに確認しました。こちらが達成報酬になります」


 カウンターに置かれたお金を受け取り、そのままアイテムボックスへとしまう。


「このままアレクさんの元へ向かいますか?」


「そのつもりだけど?」


「だったら、前に依頼した薬草の相場が1割上がりました、って伝えてもらっても良いですか?」


「分かった、伝えておくよ」


 頷いて、ギルドを後にして、アレク爺さんの家へと向かう。



 相変わらずアレク爺さんの家は何にも無かったが、机の上には1輪挿しがあって、黄色の可愛い花が活けてあった。

 あたしのためかな? なんて、自惚れかもしれないけど、ちょっとだけ嬉しい。


「なんじゃ、ニヤニヤしおって」


 へへ、と笑っていると、向かいに座ったアレク爺さんがふん、と照れ隠しなのか鼻を鳴らす。


「いいえ、別になんでも? それより、依頼の薬草を取ってきたので確認をお願いします」


 途中で買ってきた布を広げて、その上に採取した花の株を置いていく。


「おぉ、すまんの。助かる」


「あ、あと受付嬢さんからの伝言で、前に依頼した薬草の相場が1割上がった、って」 


「世知辛い世の中になったのぉ……まぁ良い」


 そして話はアレク爺さんの事に変わる。

 自分語りを聞くのは好きじゃないけど、そこに天剣の情報が絡んでいるならば聞くしかないよね。

 どうやらアレク爺さんは剣の腕だけでBランクまで駆け上った猛者だったらしい。

 かつては自分も天剣を手に入れて、最強の剣士になるぞ! 頑張ってたけど、夢半ばで挫折。その後はそれまでの蓄えを切り崩しながら、新人冒険者を相手に護衛用の剣術を教える日々。

 とは言え剣士の地位は低く、大した稼ぎにもならず、この歳までずるずると生き延びている……って、聞いてる側がすごく反応に困る話だよね。


「ワシが手に入れた情報は、大したものではないんじゃが……まぁ、そうじゃの……簡単な話くらいはしてやるわい」


 お使いを経て、ようやく天剣の話が聞けるぞ! って意気込んでいたけど、どうやらすぐには話してくれないみたい。


「じゃがその前に……お前さんは何故に天剣を求める?」


 アレク爺さんの視線がぎらつく。それはもう、朗らかなおじいちゃんではなく、好敵手や強敵を前にした1人の剣士の目付きだ。


「あるかどうかも分からない、御伽話のような武器を、どうしてお前さんは欲する? しかも今の時代、剣士なぞ蔑まれて消えていくだけの存在じゃ。そんな中でどうして剣の道に殉じると言うんじゃ?」


 どうして……改めて言われると、自分の中に確たる理由が無いのが分かる。

 確かに、なんであたしは天剣を手に入れようと思ってるんだろう?

 そもそも、心から欲しいと思ったことはないような気がするんだよなぁ。

 ゲームアナウンスによって全プレイヤーに【剣神】の誕生が発表されてから公開された天剣へと至る道。

 当時はあたしにしか意味のない長くて険しいルートだったけど、あの時のあたしは天剣が欲しいから頑張ったのではなく、ただ自分の力を試したいと思って、そのクエストをこなしていたと思う。

 だから、BLOで【剣神】という剣士として最高峰の称号を手にし、それに相応しい武器を手にしたかった、というわけでもない。

 じゃあ誰も手にしていない、最強の武器が欲しかったから?

 それとも、剣神に負けてBLOで天剣を手に入れる機会を永遠に失ったから?

 自分の中で、漫然と天剣を見つけたい、手に入れたい、っていう気持ちはあったけど、でも、そこに理由が無いんだ。

 コレクションに加えたい、誰かに自慢して承認欲求を満たしたい……なんて言う薄っぺらい上辺だけの理由すら無い。

 だからアレク爺さんに尋ねられると、あたしは答えに困ってしまった。


「あたし、が……天剣を求める理由、は……」


 ちゃんと考えてみよう。

 BLOであたしが天剣を求めた理由は……ん? よく考えてみれば、天剣が欲しいとは思ってなかった? あの時はただ、あたしが最強である理由を……あ。


「あの時の……」


 ……そうだ。そうだよ。どうして忘れていたんだろう?

 あの目だ。

 あたしが負けた時の、あの剣神の目。

 どうして忘れていたんだろう?

 あの屈辱を……嘲りと落胆の瞳で見下された、あの戦いを。

 僅か4合で打ち負けた、あの無様な戦いを。

 その時、あたしは思ったんだ……あの頂きに行きたいと。

 あたしは興奮したんだ……あたし以上の高みがあったんだと。

 あたしは燃えたんだ……絶対に剣神を倒すと。

 天剣なんてただのおまけ。

 ポテチについてくるカード、ステーキの付け合わせ……言い方は何でも良いけど、あたしが心から望む事は天剣を手に入れる事じゃあない。


「……あたしが天剣を求める理由はただ1つ」


 そうだ。

 あたしが天剣を求める理由はただ1つ。

 もう1度――


「剣神と戦って」


 そして、今度こそ、完膚なきまでに打ちのめして――


「――勝つッ!」

モカが天剣を求める理由は、これに尽きます。

天剣が欲しいのではなく、天剣を持つ剣神に勝ちたい。

1度は破れた最強の存在にリベンジがしたい。

何故なら、モカが信じる【剣神】に、敗北などあってはならないからだ。



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このエピソードのタイトルの ーー ですが, ――(ダッシュ2つ) で表現されるものだと思うのですがいかがでしょう?
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