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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第1章:冒険者登録編

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21、遭遇戦(VSオーク)

 翌日、朝早くに目が覚めちゃったから、そのまま起きて、身支度を整える。

 昨日はこの世界で初めてのお風呂だからめちゃくちゃテンションが上がって、溶けかけのアイスクリームみたいに身も心も蕩けてしまった。

 そう言えば、この世界には美容製品はあるんだろうか? あったとしても高級品なんだろうけど、あるなら買っておきたいな。

 流石に何のケアもせずにこのまま一生を過ごすのはキツイしね。

 あと、替えの服とか下着とか、生活必需品も買い揃えたい。体は綺麗になったのに着ているものが汚いままだと萎えるからね。

 身支度は部屋の脇に置かれた水桶を使って顔を洗って、木で出来た昔の歯ブラシみたいなもので歯磨きをして、寝癖を整えて終える。

 そのまま部屋の鍵を持って階段を降り、1階のカウンターで、宿のおばちゃんに連泊する事を伝えて、依頼のために北門を抜けて、森へと向かうって話したら、お昼ご飯は持っていくかって聞かれたんだよね。

 どうやらランチボックスのような物を売っているみたいで、試しに買ってみた。

 その後は普通におばちゃんに見送られて、門を抜け、目的の森へ入る。

 アレク爺さんの言う通り、森の中で川を見つけてそれを遡って上流へ向かうと、大きな滝が見えてくる。


「ここ、だよね?」


 マイナスイオンがあーだこーだを信じているわけじゃないけど、涼しくて木の穏やかな香りに包まれれば、なるほど確かに大いにリラックス出来る。

 そんな中で、のんびりと森を歩きながら言われていた紫色の花を探す。


「あ、これか……」


 こう言う時に鑑定魔法が使えたら楽なんだろうなぁ、なんて思いながら、花を掘り起こしてはそれごとアイテムボックスへと放り込む。

 密集地なのか、かなりの数が咲いているけど、あまり乱獲しても問題になるよね。採取するのは少しだけにしておこうかな。

 とりあえず言われていた4株は確保して、あとは……10株くらいあれば充分だよね。


「ふぅ、花を掘り返すなんて地味な作業だったけど、結構疲れたなぁ……」


 熱中していたから気付いていなかったけど、既に時刻は昼を過ぎている。


「ここでお昼にするか……」


 掘り返していた場所のすぐ側の大樹の根本に腰を下ろして、アイテムボックスからお昼ご飯をとりだす。

 今日のお昼ご飯は、宿で購入したランチセットだ。中身は3種のサンドイッチと果実水。


「昨日の夜ご飯が美味しかったから、これも楽しみなんだよねぇ」


 その1つにかぶりつくと、ほぐして濃い目に味付けされた肉の旨味が口内を蹂躙し、ふわふわのパンの小麦の香りが鼻に抜けていく。マスタードのような刺激のあるソースも良く合っていて美味しい。


「うまっ! 何これ美味い! うーん、ローストビーフサンドみたいな感じだけど、牛肉より重くないし、くどくも無いね! それにこのパンが良い! 小麦の味がダイレクトに来る系のパンって好きなんだよねぇ」


 2口、3口と食べ進めては果実水で口の中をリセットする。

 1個目を食べ終わると間髪入れずに2つ目に手を伸ばす。

 2個目はたまごサンド。

 そうそう、これこれ! こう言うので良いんだよ!

 もちろん美味しかった。そして、もう最後の1つだ。


「……野菜サンド?」


 中の具はレタスのような葉野菜と、トマトみたいな輪切りの野菜、そして黄色の花弁、そして真っ赤なソースである。

 これが美味しいの? と訝しむが、これまでの2つのサンドイッチの事を考えれば、マズイわけがない。

 試しに1口を齧ると、シャキシャキした葉野菜の食感と、瑞々しいトマトみたいな野菜の甘み、そして爽やかなレモングラスのような匂いがふわりと香る。

 何よりもこの赤いソースが美味しい。初めはチリソースのように辛いのかと思ったがそうではなく、どちらかと言えばサウザンド・アイランド・ドレッシングのような味わいで、野菜と良く合っている。


「うん、満足だ!」


 最後の1つもペロリと平らげて、果実水で口直しをして、満足げにお腹をさすりながら、ゴロンと横になる。


「はぁ……配信者をやってた時は、話題探しで旅行とか行ってたけど、一応は仕事のネタ探しだったからなぁ……こうやって、自由に配信の事も考えないで自然を満喫するのって、何年振りだろ……」


 木々のざわめく音、滝や川の音、小鳥たちの囀り、自然のコンサートに耳を傾けながら、のんびりと過ごす。なんという贅沢か、と自然と笑みが溢れてくる。


「ちょっと休憩したら、ついでにモンスターを狩って、レベル上げてから帰ろうかな……あの熊魔獣を倒してからまだ上がってないしね」


 それまでは少し休憩だ。

 30分ほど横になって目を閉じ、ゆったりとした時間を過ごす。

 とても心地の良い昼下がりを満喫したあたしはゆっくりと起き上がって、大きく背伸びをする。


「さて、始めますかぁ」


 腰の剣柄に手を乗せ、あたしは森の奥へと歩き始めた。


「何体か適当なのが見つかればいいなぁ……」


 しばらく歩き、木々の緑がより濃くなってくると、それに伴って様々な気配を感じられるようになってくる。

 中でも分かりやすいのは臭い。

 レモーネの村にいた頃に覚えた魔獣特有の獣臭と大きめな足跡が見つかれば、その先にどんなモンスターがいるのかは簡単に分かる。


「今回の相手はオークかぁ」


 遠くに聞こえる乱れた足音と下品な鳴き声を頼りに森を進み、5分ほど歩くと、崖に出る。

 その眼下にはオークの群れが見え、その数は6体。

 鈍重な斧と槍を持つ個体が3体。

 2体は石を繋げただけの首輪と髑髏の付いた杖を持っていて、最後の1体は他のと比べて一回りほど大きく、身の丈ほどの大剣を枯れ枝のように扱うリーダー個体のようだ。


「普通のオークが3、オークメイジが2、オークジェネラルが1か。結構バランスの良いパーティーだ」


 オークたちを見下ろすと、どうやら餌を探しに来ていたらしく、オークジェネラルは2頭の鹿を担いでいる。


 頭の中で大まかな戦いの流れを組み立てていると、オークジェネラルが徐に獲物を地面に置き、フゴフゴと他のオークに合図をするのが見えた。


「およ? バレたか?」


 そしてオークが周囲を警戒し始めると、1体と目が合う。ブヒブヒとこっちを指差して騒ぎ始めたので、仕方なく抜剣。


「じゃ、行きますか」


 崖から飛び降り、オークたちの眼前に着地する。

 その瞬間には既にオークたちは動き出しており、前衛の3体があたしを倒そうと向かって来る。

 メイジ2体は魔法の詠唱を始めていて、ジェネラルは大剣を構えてあたしの行動を伺っていた。

 BLOの魔獣とは違って、連携を行っているのが不思議でしょうがないが、群れで行動する以上、そういう行動が出来るのも納得できる。


「でも残念、そんな単純な連携でやられるほど雑魚じゃないの」


 オークの攻撃を待ち構えることなく、あたしは既に踏み込んでいた。

 迫ってくる3体の前衛は相手にせず、メイジ2体が詠唱している火球を放つ前に、その懐に潜り込んで魔法を斬り払う。

 その構成を破壊された魔法は霧散し、同時に風を切る音が2連。

 瞬間的に加速したあたしの剣が首筋の急所を的確に狙う。


「敵を殺すのに必要以上の力はいらない。生き物に必ず存在する急所を、正確に、そして必要最低限の力で、ただ斬れば良い。それだけでほとんどの生き物は殺せるんだから」


 首筋を撫でるように切り裂けば、鮮血が吹き出し、2体のメイジが崩れ落ちる。


「次ッ!」


 あまりの速度に前衛の3体が振り返ったのと、あたしが踏み出したのはほぼ同時だったけど、次の瞬間には仲間の悲鳴すら理解する前にオークは絶命していた。

 一条の光となったあたしの剣が、メイジと同じように急所を切りつけ、反撃すら許されずに地面に崩れていく。

 僅かな時間で5体の死体が出来上がり、激昂するオークジェネラルは、大剣を振りかぶって突進してくる。


「戦いは熱くなった方が負けちゃうんだけど……言っても理解出来ないか」


 フッと、あたしの体がブレると、ジェネラルの首筋には必殺の一閃が放たれていた。

 だけど、ガギンと鈍い音がして、ジェネラルは大剣でモカの剣撃を防いで弾き、剣を振るってくる。

 肉体強化の魔法か能力で強化された腕力のおかげで軽々と振るわれる大剣は、攻撃を弾かれたせいで空中で身動き出来ないあたしを叩き潰そうと迫る。


「っふ!」


 体を捻るように大剣の1撃を回避し、猫のように着地。

 その勢いを足に溜めて、再び跳躍。

 首筋の急所を狙うのは変わらず、右の首を狙って剣を振り抜くが、大剣で防がれる直前に剣の軌道を無理矢理に下方向へ変える。

 狙うのは剣を持つ手首だ。

 ズバッと、皮を切り、肉を斬る感触が伝わるが、骨を断つまではいかない。


「ブギャァアッ!」


 手首を斬りつけられ、大剣を握っていられなくなったジェネラルは大剣を落としてしまう。

 勝負はこれで決まった。

 あとは怒り狂ったジェネラルが腕力だけで拳を振るうが、その鈍重な反撃はあたしのスキルによる軽快なフットワーク、そして必要最低限の回避行動によって、まるでスローモーションのように空を切るだけ。


「じゃ、終わり」


 オークジェネラルの首筋に吸い込まれるような一閃が放たれ、鮮血が吹き出す。

 断末魔を上げながら地面に倒れ伏し、地面に血の海を作っていく。


「はぁ、腹ごなしにもならなかったね……」


 息切れ1つなく、汗1つかかず、あたしは涼しい顔で剣の血を振り払う。


「にしても……あのDランクの冒険者より、こっちの方がまだマシだったな」


 納刀し、死体をアイテムボックスへとしまうと、ログ一覧を開く。

 そこには『レベルが上がりました』という表示が見えて、それを見た瞬間、思わず「へへ……」って笑顔になっちゃった。

たまごサンドが1番好き。

次回、アレク爺さんに花を持って行きます。


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