20、アレク爺さんと会う
まだまだ全然ですが、1000PVありがとうございます!
これからも頑張って毎日19時投稿をしていきますのでよろしくお願いします!
教えてもらったアレク爺さんの家があったのは、街の北側の外れも外れ、城壁に近く、日の辺りも良くない場所である。
小さな荒屋が密集するように集まっているここは、住民の間では貧民街と呼ばれる地域だ。
浮浪者や孤児、あるいはもう先の長くない老人たちが集まる場所のようで、想像以上に死の気配が濃い。
生気などは無く、ひんやりとした負の気配だけが漂っているような場所で、目当ての荒屋を見つける。
「ここ、だよね……」
その荒屋は他とは違って、死の気配をあまり感じない。
「ごめんくださーい」
大した躊躇いも無く、あたしは荒屋に入っていく。
「アレクさーん? いらっしゃいますかー?」
家の中は、ミニマリストもかくやと言わんばかりに何もない。生活に必要な最低限の家具だけだ。
嗜好品も鑑賞品も、何も無い。何の面白みもない家であるからこそ、その機能美も浮き彫りになっている。
どうやら、アレク爺さんはよほどの効率厨のようだ。
そんな事を考えていると、家の奥からゴホゴホと咳き込む声が聞こえ、しばらく待っていると、奥から杖をついた白髪の仙人のような老人が姿を見せる。
「どちらさんかの?」
「あ、初めまして、あたしモカって言います。ギルドから依頼の品を持ってきました」
コツコツ、と杖を付く音が響く部屋の中、あたしはアイテムボックスから薬草の入った巾着袋を取り出して、テーブルの上に置いた。
「新しい受付嬢さんか?」
「いえ、あたしは冒険者です」
「ふむ、そうか……」
長い白髪の眉のせいで視線が分かりにくいが、確かにアレク爺さんはあたしの腰にある剣を一瞥した。
その瞬間、あたしは剣に手を掛け抜剣し、アレク爺さんの首筋を目掛けて寸止めし、アレク爺さんは杖を引き抜いて暗器の剣をあたしの喉元に突きつける前に止まる。
「ふむ……ワシが速度で負けるか。その若さで先を取るとはな……」
殺気など無い。
ただ杖を握る手に一瞬だけ力が入り、アレク爺さんが重心をほんの少しだけ傾けただけだ。
それだけであたしは半ば反射的に剣を抜いた。
「流石におじいちゃんには負けないですよ」
「年寄りをもっと敬わんか、若いの」
かっかっか、と大笑するアレク爺さんは暗器をしまい、椅子に腰掛ける。
「それで? お嬢ちゃんは、この時代に剣士として活躍するつもりか?」
「え? まぁ、はい。そのつもりです」
「そうか……悪いことは言わん。すぐにでも魔法使いとして登録しなおせ。剣士なぞ、今の時代では必要ない」
ゲホゲホと咳き込み、アレク爺さんは宙に手を伸ばした。どうやら収納魔法のようで、虚空に突っ込んだ手には2人分の湯呑みがある。
それをテーブルに置くと、トントンと指で机を叩けば、宙からジョボジョボと水が溢れ、2つの湯呑みを満たす。
「ま、座れ、若いの」
「失礼します」
誘われたままにあたしは椅子に座り、水の入った湯呑みに手を伸ばす。
「で? 何のようじゃ? 依頼料が足りんという話なら商業ギルドに頼むぞ。まだ蓄えはあったはずじゃ」
「いえ、そういう話じゃないです。アレクお爺さんが、天剣について知っているから、ってギルマスが……」
あたしがそう言うとアレク爺さんはふひぃ、と変な溜息を吐いた。
「ストレイドの坊主め……面倒事をワシに投げたか……まぁ、良い。何が聞きたい? 天剣の在処か?」
「知ってるの!?」
思わず前のめりになってアレク爺さんに詰め寄ったけど、すぐにその行為を恥じて、椅子に座り直す。
「悪いが、知らん。そもそも存在しているかも知らん」
「え? でも、そう言う話が存在するっていうなら、存在しているって事では?」
「確かに、それは一理ある。この世界には神剣と呼ばれる剣もあるくらいだからな。じゃが、表舞台にはほとんど出てきていない。どんな武器でも、それが使われたという記録やら伝記などが残っておるが、天剣は何も無いんじゃ」
故に御伽話の中にしか出て来ない天剣の存在は長い間疑問視されているらしい。
「ワシも昔、天剣を目指して色んな国を周ったが、手掛かりが少なすぎてな」
「でも、全部を見たわけじゃないでしょう?」
「それもそうじゃな」
かっかっかとまた大笑する。
「あ、そうじゃ、丁度いい。この薬草以外にも必要な薬草があっての。丁度依頼を出そうと思っておったんじゃ。受けてくれるか?」
「別に構わないですけど……」
「おぉ、助かる。薬草の場所はすぐそこの北門を出て、まっすぐ進んだところにある森の中じゃ。川を登っていけば大きな滝がある、必要なのは、その滝の周囲に咲いている紫色の花の根と花弁じゃ。4株もあれば充分じゃが、多めに取ってきてくれれば追加で報酬を出す」
そういってアレク爺さんはまた宙に手を伸ばして羊皮紙とペンを取り出して、サラサラと記入していく。依頼料として銀貨5枚も忘れずに取り出して、あたしに渡してくると、「じゃ、頼んだぞい」と杖をつきながら家の奥に戻っていった。
「……なんか、なんだろ? よしきちさんみたいな人だったな」
BLOの名物プレイヤーのよしきち。
BLO最高齢の98歳のおじいちゃん剣士だ。どこかの古流剣術の師範代らしく、その強さはあたしも認めている。
「流石によしきちさんみたいに奇声を発しながら、ぴょんぴょん飛び回ってアクロバティックな攻撃はしてこないだろうけど」
懐かしい名前を思い出して、少しだけ晴れやかな気分になったところで、依頼表とお金をアイテムボックスにしまって、家を出た。
向かうはアレク爺さんの言っていた森だ。
「今から言っても遅いから、明日にしよっと」
ステータス画面で時刻を見ると夕方だ。まだ宿も決めていないので、まずは宿を取って、長旅の疲れを取ろう。
街の中央に戻って、道ゆく人たちから「妖精の瞬き亭」の場所を聞いて回る。
門番のおっさんが言っていた、女性冒険者御用達で安全面も衛生面もばっちり、ご飯も美味しい宿屋だね。
もちろん、そんな素敵な宿屋に泊まらない理由はない。
料金は通常の宿に比べると割高だったけど、出せない額じゃなかった。
と言うのも、モカはアレク爺さんの家から冒険者ギルドに戻って依頼表を渡し、そのまま依頼を受けたついでに、持っていた魔獣の素材を売却しておいたからね。
思っていた以上に高値で売れたので、懐はホクホクなのだ。
そして、早めの夕食を食べて、久しぶりのお風呂にゆっくりと浸かり、身も心も癒せば、後はもう清潔で寝心地の良いベッドに入って寝るだけ。
そうして色々と忙しかった1日が終わった。
よしきちさん。
全BLOプレイヤーの中で最高齢の98歳のおじいちゃん。
日本の古流剣術、鞍馬自顕流の師範代。
ちなみにモチーフはスター○ォーズのヨ○ダです。
マスターが初めてライトセーバーを使って戦ったEP2を見た時の衝撃は未だに忘れられません。




