19、自分を見る
初めての予約投稿なので、上手くいっている事を祈ります!
あたしが連れて来られた冒険者ギルドの最上階フロアは、ギルマスの執務室と図書室しかなかった。
もちろん連れ込まれたのは執務室で、それなりに広い部屋だ。
窓際の執務机の他に、来客用の重厚なテーブルと、フカフカのソファが部屋の中央には置かれており、あたしはそのソファに腰を降ろして、出された果実水で喉を潤す。
対面にはストレイドギルマスが厳しい表情で腕を組み、無言のまま。
その理由は、あたし……というか、あたしが話した内容にあるんだろうね。
「……つまりお前さんは、気づいたら見知らぬ森の中にいて、近くの村の者に救助されて、天剣を探すための旅に出たってか?」
一応、転生か転移のどちらかは分からないが、その話はしない。身の上の話もしない。
何故かって? だって、そんな話をしたら信じてもらえないか、あるいは面倒臭い事に巻き込まれる可能性が高そうだからに決まってるじゃん。
「そう。なんで森にいたのかは知らないし、その前までどこにいたのかも知らない。でも、どうしたいかは分かる。剣士として、天剣を手に入れるの」
ギルマスは深い溜息を吐く。
これがまだ年端もいかない男の子なら分からなくもない。剣士という職業が不遇なのを知らず、御伽話に出てくる英雄のようになりたいと思っても不思議ではないからだ。だが、目の前にいるのは15歳の少女だ。
「……天剣なんてのは御伽話だ。そんなもんが存在してるなら、今みたいに魔法使いが一強の世の中になんてなってねぇさ……」
「でも、話が伝わっていると言うことは、それが存在している、って証拠では?」
「それはそうだが……」
とギルマスはへの字に口を歪める。
どうも目の前の少女の真剣な眼差しはやりにくい。
別に夢を壊そうとしている訳ではなく、このご時世に剣士として大成する難しさを教えてあげたいだけなのだ。
「っち。そっち系の情報を知ってるのは、この街だとかなり前に引退した元剣士のアレク爺さんくらいだ。話を聞くならそっちに聞いてくれ」
「じゃあ後で居場所を教えてください」
「あぁ、まぁ、それくらいなら教えてやる。それからこれが……」
とテーブルに1枚のカードを置く。クレジットカード大の銅板だ。
「お前のギルドカードだ。一番下のFランクからのスタートが普通なんだが、さっきのアレで、お前ほどの剣士を最低ランクにしておくのは勿体無いと思って、Eランクからのスタートにさせてもらった」
手に取り、眺める。名前、職業、現在のランク、参加パーティーの4項目だけと、シンプルだ。
「無くしたら再発行になる。基本的にはその穴に紐を通して首から下げて置くんだが、気になるようなら道具入れにでも入れとけ。あと、ギルマス判断で1ランク上からのスタートだが、ルールは変わらん。1ヶ月以上依頼を受けないと自動的に失効するから気を付けろ。あと、ギルドの関連施設では割引が受けられる場合があるからな」
「分かりました、ありがとうございます」
カードをアイテムボックスに入れると、ギルマスが「なっ!?」と驚く。
「? どうしました?」
「お前、収納魔法が使えるのか!? 剣士じゃなかったのかよ!」
「え? 剣士だからって魔法使えないわけじゃないですよ? 使えるものを使わないのはただの馬鹿ですよ」
「ま、まぁ、そうか……スマンな。あぁ、それから、あの馬鹿どもの件だがな。あいつらには俺の方からよく言っておく。魔法使いの地位が上がった事で、ああいう馬鹿どもも増えちまってな。魔法使いが強いからって他が弱いとは限らんのに、それが分からんアホが多いんだ」
どうやらギルマスも苦労しているようだ。
「お願いしますね。今度絡まれたら力の加減が出来ないと思うので……」
「あぁ、みっちり絞っておくから安心してくれ」
果実水を飲み干すと立ち上がる。
「じゃ、あたし、行きますね」
「あぁ、これからよろしく頼むぞ、モカ。あぁ、それからアレク爺さんの家は受付に聞けば教えてくれる。よろしく言っておいてくれ」
「はい、ありがとうございます」
ぺこっと頭を下げて、執務室を後にしようとして、足を止めた。目についたのは姿見である。
そこで初めてあたしは、この異世界における自分の姿を見る事になった。
「……え?」
姿見に映る姿はBLOのアバターでは無く、現実世界の自分だった。
深緑色のサラサラ艶々のショートカット、綺麗な薄紅色の宝石のような瞳、整った顔立ち、15歳ながらもスタイルは良く、見目麗しい美少女。
服装はまだ平民の服のままだが、それが純朴そうな雰囲気を醸し出しているので良しとしておこう。
「アバターじゃない、って事は……やっぱり転生? 10歳も若返ってるなら、転移なわけないもんね」
現実世界の自分の姿なら、それなりに美少女だという自負はある。
自慢じゃないけど、色んなところからスカウトされてたんだからね。ま、興味ないから全部断ってたけど。
この世界における自分の姿を確認出来たあたしは、ご機嫌で鼻歌を歌いながら執務室を後にする。
そのまま、受付でアレク爺さんの家の場所を聞くと、これから行くならついでにアレクさんからの依頼品を一緒に持って行ってくれと言われて、薬草の入った巾着袋を受け取った。
「それじゃ、お願いね」
「はい、じゃあ行ってきます」
と受付嬢に見送られ、酒場スペースで騒いでいる冒険者たちを睨みつけ、あたしは立ち去った。
すみません、ちょっと短いです。
レモーネの村に鏡はありましたが、村長の家に1つあったくらいです。モカは気付いてなかったです。
あと、書いていて思ったんですが、水や刀身とかの反射で確認出来たかも知れないですが、スルーしてください。




