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魔法一強の異世界を剣一本で成り上がる  作者: 卯月真琴
冒険者登録編

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2、異世界に立つ

趣味全開の作品です。


・女性主人公

・ご都合主義あり

・知識の間違いや勘違いがあるかも知れません。

・書きたい様に書くのでよろしくお願いします。

・ストックが無くなるまで、1日1話の更新予定(毎日21時30分〜22時)です。

 目が覚めたのは、不快なほどズキズキと頭が痛いからだ。

 いや、頭だけじゃない。

 身体中が悲鳴を上げているかのように痛んでいる。あまりの痛みに、意識が覚醒したと言ってもいいね。

 ゆっくりと、頭痛に顔を顰めながらも目を開けると、そこは森の中だった。

 薄暗く、鬱蒼とした森。

 ゲーム内のフィールドじゃあ……ないよね? こんな光景に見覚えはない。グラフィックだって綺麗すぎて本物みたいだ。


「ここは……」


 辺りを見渡そうとしたけど、体が痛すぎて自由に動いてくれない。


「っぐ! いっ……痛い!」


 右手を何とか持ち上げると、手のひらは血塗れだ。そのすぐそばには同じように血塗れでボロボロの短剣が落ちている。


「何が……何にも、覚えて、ない……? とりあえず、回復を……」


 ゆっくりと深呼吸をし、とにかく回復を優先しようと思い、ノロノロと右手を動かし、空中を上から下に撫でてステータス画面を呼び出す。


「え!? な、なに、これ……ど、どうなってる、の?」


 あたしが呼び出したステータス画面には異常があった。いや、異常しか無かった。

 まずレベル。

 さっきまではレベル947だったけど、今はレベル1。

 ステータスもレベル1時点の初期ステータスだ。

 アイテム欄に移動してみれば、何も持っていない。回復アイテムだけじゃない、武器や防具、アクセサリーまで、全ての所持品がないのだ。


「体力の上限が10……今が3…何なのよ、これ……」


 右手がパタリと落ちるのを目で追って、初めて気付いたけど、あれ? あたしの体、ちょっと縮んだ?

 痛む体をゆっくりと起こして、立ち上がると、どうやら背を預けていたのは苔むしたお墓だったようだ。

 なんて書いてあるのかは分からないし、誰のものかも分からない。

 ポタ、ポタ、と血が滴る。

 どうやら額を切っているみたいだけど、回復薬も治療キットも無い……どうしよう?

 出血によるスリップダメージが無いのが救いだけど、このままではどうしようもない。今他のプレイヤーや魔獣に遭遇すれば、すぐに殺されるよね。それだけは何としても避けなくちゃ。


「でも、あたしにここまでの怪我を負わせられる奴なんて……それに、トドメを刺さずに放置?」


 酷い頭痛を耐えながら、ステータス画面に視線を落とす。


「何か、新しいイベントかな?」


 ステータス画面のスケジュール欄を見てみるが何も書かれていない。いや、それよりも気になるのは他の項目だ。


「所持金も、経験値も所持ポイントも……全部0……スキルも全部無い……いや、アクティブになってないだけ?」


 言ってしまえば、ゲームを始めた頃に戻っている。もちろん称号の変更も出来ない。さらに、不可解な点が幾つかあった。


「……項目が、消えてる?」

 それまでは存在していたはずのログアウトボタンと、運営へのDMボタンが無くなっている。


「年齢が……変わってる? え、なんで15才になってんの?」


 名前の横の年齢が25から15へと変わっていた。

 通りで視線がいつもよりも低いはずだ。キャラクリ、頑張ったのになぁ……ちょっと凹むよ。今の状態をまだきちんと確認出来ていないから何とも言えないけど、美少女のキャラだったら良いなぁ。

 辺りは見渡す限りの森。

 周囲は暗いし、空に太陽はない。ステータス画面の時刻を確認すると、現在時刻は深夜4時。


「ログインし直した時間帯、じゃない? どういうこと?」


 風の吹く音、鳥や昆虫の鳴き声、狼のような遠吠えも聞こえてくる。

 前はそんな音に恐怖は感じなかったけど、今は違う。

 武器や防具が無い。アイテムも無い。ステータスも最低値になっているし、体力ゲージが赤くなっている所なんて本当に久しぶりに見た。でも、そんな事よりももっと怖い事がある。


「傷が、痛い……」


 普段であればペインコントロールシステムによって痛みは軽減されるはずだ。だから腕を切り落とされても痛くないし、目を抉られても戦いを継続することが出来る。


「これは……もしかして、もしかする? あたし、転生か転移か、どっちか分からないけど、異世界に来ちゃった感じ?」


 開きっぱなしのステータス画面を見つめ、ログアウトボタンがあった場所を何度もタップするけど何も起こらない。


「なんで……なんで……あたし、死んだ? 死んだの!? あ、あれか? エナドリがぶ飲みしてたから!? 急性カフェイン中毒で死んだってこと!?」


 え!? ネットで大炎上して、ムカついたからエナドリをがぶ飲みしながら4徹で辻斬りしまくって死んだの!? 馬鹿すぎるでしょ、あたし!?

 頭痛でまともな思考回路にはなれないけど、それでも考えることはやめない。

 ぐるぐると考えが回り、血を失いすぎて貧血も併発してきて、立っているのが辛くなってきたな。


「もう……なんか、どうでもいいや。考えるの辛くなってきたし……」


 その場にしゃがみ込み、大きく溜息を吐きながら深呼吸を繰り返すと、痛かった心臓と頭がマシになってくる。


「にしても……本当に何にも無いや。レベルもステータスも、あれだけ頑張って貯めた経験値も、全部無い」


 足元に視線を移すと、血塗れの短剣がある。何気なくそれを拾って、血と泥とその他諸々の体液で汚れた服で汚れを拭った。


「こんだけ血が着いているのに、周りに死体の一つもないなんて……あ、まさか……これは、もしかして、この女の子が死んじゃったか自殺した所に、あたしが転生してきたってところかな?」


 にしても……この子、なんでこんな枯れ枝みたいなのかな。まぁいいや。まずは何とかして体力を回復させないと……薬草くらい生えてるかな?

 時間ならたっぷりある。

 この状態で朝まで過ごすのは不安しか無いけど、今の状態じゃ長時間の移動なんて出来るはずもない。

 ちょっとずつ歩きながら、薬草や食べられる木の実、果実を見つけたい。出来れば水も欲しいよね。


「向かう方角は……ここにお墓があるってことは、誰かがここまで来ているってことだよね……整備された道じゃないけど、獣道くらいはあるかな?」


 目を凝らせば、墓へ至るまでの道は少しばかり踏み固められた小道のようだ。進むべき道さえ分かれば、後はそこを進むだけ。


「よっこらせ、っと……」


 ゆっくりと立ち上がり、一歩を踏み出す。

 右手には短剣を握り、不意の攻撃に対処出来るように周囲に注意を払う。うん、周囲に生物の気配は無いようだね。人間、やる事が出来ると思っていた以上にやる気が出てくるらしい。頭も体も痛いけど、それが足を止める理由にはならなかった。

 しばらく歩いて、同じくらい休んで、また歩いて、休んで、と言うのを繰り返していると、どうしても暇を持て余して来る。なので、休憩の度に改めてステータス画面を確認する事にした。


「BLOのUIと変わってないよね……ログアウトとか運営へのDMとか、あとは設定とかセーブも無いな……ステータスは結構変わってるね……」


 あたしの現在のステータスはこうだ。

 名前:モカ

 レベル:1

 称号:無し

 職業:平民

 状態:瀕死

 体力:3/10

 魔力:10/10

 持久力:10

 筋力:10

 耐久力:10

 敏捷:10

 幸運:10

 所持金:0

 ステータスポイント:0

 スキルポイント:0

 所持スキル:無し

 所持魔法:無し

 武器:ボロボロの短剣

 防具

 頭:無し

 胸:平民の服

 腕:無し

 腰:平民の服

 足:無し

 アクセサリー:無し

 所持アイテム:無し


 ステータス画面についてはこんな感じ。

 残るはログ一覧、スケジュール一覧、メモ一覧くらいで、マップは削除されている。


「悲惨な状態だぁ……」


 大木にもたれ掛かって休みながら、肩を落とす。

 基礎ステータスが低いのと、体力が少ないせいで思ったよりも進めないし、すぐに疲れてしまう。ゲームの中ではそんな事は無かったから、やはりここはBLOの中ではなく、現実なんだろうか?


「でも、スキルはアクティブにしていないだけで、BLOの時のスキルが結構残ってるな」


 剣神になってからよく使っていた『天閃』や『天断』、『神速瞬動』なんかは、グレーアウトしたままだ。多分、使用条件が未達成なんだと思う。

 またこのスキルたちが使えるようになるまで、どれくらい掛かるんだろ。


「……魔法もおんなじか……はぁ、またレベル上げの日々が始まるのか」


 気分が沈んでくる。あのレベルまでに上げるまでにどれくらいの時間と労力と金が掛かったと思ってるのよ……


「誰が転生だか転移だかをしてくれたのか分からないけど、ぶった斬ってやりたいわ……」


 沸々と怒りが湧いてきた所で休憩を終えて、立ち上がる。


「道、合ってるよね……?」


 いくら進んでも変わらない光景に不安が鎌首をもたげてくるが、それでも何とか気合いだけで歩き続けること二時間。

 既に森の中に日が差し込み始めており、薄暗かった森は朝焼けに包まれようとしている。

 そんな中をノロノロ、ヨロヨロと歩き続けて、遂に開けた道に出た。


「あ……道、だよね? 道、だ。道だ……やった……助、かっ…た……」


 日が昇ってきた事、大きめの通りのような道に出た事で、今まで張っていた緊張感がふっと途切れ、少ない体力と頭痛と体の痛みに耐えていた心が安堵に満たされた途端、あたしの記憶はそこで途切れてしまった。

流石に(エナドリをがぶ飲みして4徹した事は)無いです。


次回の更新は6/27の予定です。

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