128、それ以下
予約投稿の時間ミスってました。
20時になってた……
申し訳ない……
明日からは気を付けます!!
あたしとミーナさんが子供たちを牢屋から連れ出した時、子供たちの中にカティナちゃんはいなかった。
当然ながら、追体験をしたあたしはその可能性が高いと思っていたけど、万が一、億が一の可能性を考えなかったと言えば嘘になる。
そして、カティナちゃんと同じ牢屋に入れられていた子たちに話を聞こうと思ったのだが、子供たちはそんな状態ではない。
外に出るための階段を登れなかったのだ。
外に出られるという希望は活力を与えてくれるが、体力まではどうしようもない。
ロクな食事を与えられず、生きるために必要な水も満足に貰えていなかったのだろう。
子供たちの歩みは遅々として進まず、大して長くもない階段を全員が上がるのにかなり時間がかかってしまった。
途中でミーナさんにお願いして、誰か助けを呼んできてもらったのだけど、どうやら王都警備隊は王都全域に散らばっていて、応援は頼めないらしい。その代わりと言ってはなんだけど、王国騎士団を派遣するという返事が、どうしてか王様から直々にきたらしい。
その結果、階段の途中で座り込んでしまった子供たちを励まし続けていたあたしの元に、総勢50名の騎士たちが駆けつけ、子供たちを抱えてあっという間に階段を駆け上っていった。
あたしは、あたしの外套の裾をずっと掴んでいた犬耳幼女を抱き抱えて、階段を登っていく。
外に出ると、孤児院の敷地内に簡易的なテントと、子供たちのための食事の準備が騎士たちによって行われていた。
どうやらあたしが最後だったみたいだね。
「モカ様」
「ミーナさん。助けを呼んでくれてありがとうね」
「いえ、流石にこの数の子供たちを保護するのに、私たちだけと言うわけにもいきませんので」
「でも、なんで騎士団の人なの? 警備隊の人は?」
「救援の魔法を打ち上げたのですが、返事があったのが王宮だったのです。そして陛下より直々に伝令魔法が届きまして……」
ミーナさんがどうにも申し訳なさそうな表情で俯いてしまう。
王様から直々に、か……そりゃめんどくさいよね。
「いえ、その……派遣された騎士たちというのが……陛下直属の第1騎士団でして……」
「へぇ、すごい騎士たちなの?」
「というよりも、その……」
どうにも煮え切らないミーナさんに、あたしは首を傾げると、抱き抱えていた犬耳幼女も真似をして可愛らしく首を傾げた。
「お前のような野蛮人でも、人のためになることが出来るのだな」
その声を聞いた時、あたしはどうしてミーナさんが申し訳なさそうにしているのかを理解する。
そっか。
王様直属と聞いた時に気付くべきだったね。
「どうしてあんたがここにいるわけ? メリナ」
「それはこちらのセリフだ、野蛮人。王命によって派遣されたと思えば、孤児や奴隷の子供たちを保護しろ、だと? このような下賤な輩など救って何になるというのだ」
物理的に手が塞がっていて良かったと心の底から思った。
もし、犬耳幼女を抱き抱えていなかったら、あたしはブチギレてメリナを真っ二つにしていたと思う。
だけど、その殺気と怒気は犬耳幼女も感じたようで、ギュッと身体を強張らせて震えだしてしまった。
「おっと……ごめんね。君を傷付ける気はないんだよ。ごめんね」
あたしに抱き付く犬耳幼女をあやしながら、メリナを睨みつける。
「あんた、どうしてそんな言葉が言えるわけ? 何様のつもり? あんたそんなに偉いの? 今すぐぶった斬ってあげても良いんだよ?」
「ふん、下賤な奴は思考まで下賤だな」
あぁ、ダメだ。
あたし、こいつ、嫌い。
絶対に仲良くなれない。
差別主義とかそういうレベルじゃない。
多分、こいつはあたしたちを同じ人間だと思っていないんだ。
蔑むとかじゃなくて、そもそも同じステージに立っていると思っていない。
どうして王様はこんなのを送ってきたんだろうか?
「メリナ様、さすがにお言葉が過ぎます」
「ふん、メイドごときが私に意見か?」
「いい加減にしろ。あたしが本気になる前に謝れ、メリナ」
自分でも、どこからこんな声が出たのか分からないほどの低い声に、腕の中の犬耳幼女がビクッと震える。
「これ以上、みんなのことを侮辱してみろ。今度こそ、本気で斬る」
殺気と怒気には慣れているのだろうけど、ここまで直情的に自分に感情が向けられた事がないのだろう。
メリナは「っぐ……」と言葉を詰まらせた。
「今度は失禁だけじゃ済まないよ」
「……何故だ?」
「何が?」
「どうしてお前はそこまでして下等な奴らを助けようとする? 高貴なる血筋でもないこいつらを助けたところで、何もないのだぞ?」
ここまで言っても、まだ負けじと人を小馬鹿にするように笑うメリナに、あたしの堪忍袋の緒が限界を超えた。
「何も、ない? 馬鹿を言うなッ! みんな一生懸命に生きてるんだよッ! こんなにも明日を望んでいるのに、生きようとしているのに、それのどこが何もないだッ! 何もないのはお前だ、メリナ! その空っぽの頭でよく考えろッ! 貴族とかいう高みから世界を見下して、同じ世界で生きる人を笑うのなら……お前こそが下等で、下劣な、野蛮人だ。ううん、違う。あんたはそれ以下だよ、メリナ」
そこに殺気も怒気も、もうない。
あるのは、軽蔑と嫌悪、そして哀れみだけ。
きっと、メリナの中で何かが変わらなければ、この考え方も変わらないだろう。力も責任感もあるのに、すごくもったいない。
「行くよ、ミーナさん」
あたしは抱き抱えている犬耳幼女の背中を撫でながら、ミーナさんと一緒に炊き出しが行われているテントへと向かった。
その背後で、メリナは下を向いてワナワナと体を震わせる。
これがきっかけになってくれると嬉しいけど、こればかりはあいつの問題だ。
「モカ様……大丈夫ですか?」
「何が?」
「とても、悲しそうなお顔ですので……」
あたし、今そんな顔してるの? はぁ、なんか柄にもないことしちゃったな。
「大丈夫だよ、ミーナさん。ちょっと、まぁ……カチンときちゃったから。でも、ちょっとはすっきりしたよ?」
「あれだけ言えばそうでしょうが……いえ、モカ様が大丈夫と言うのなら、それを信じましょう」
「うん、ありがとう、ミーナさん」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございます」
2人でえへっと笑い合うと、ようやく犬耳幼女が怖いのが終わったと感じたのか、ピコピコと耳や尻尾を動かし始めた。
「あ、そういえば、君の名前はなんて言うのかな? お名前、言える?」
今まで犬耳幼女としか呼んでいなかったけど、名前があるならちゃんと呼んであげたいもんね。
「………ミミミ」
「ミ、ミミミ? す、すごい名前……でも可愛いね。ミミって呼んでいい?」
「うん、いいよ」
「じゃあミミ、ここでご飯を食べようか」
「お姉ちゃんは?」
「あたし? あたしはね、これから大事なお友達を助けに行ってくるよ」
そう言うと、ミミはあたしの服をギュッと強く掴んだ。
そりゃそうか。
地獄みたいな日々を過ごしてきたんだから、そこから助けてくれた人の側から離れたくないよね。でもごめんね?
「ミミ、あたしの大事なお友達はね、自分が怖い目にあっても絶対に泣かないで、自分よりも他の人のことをちゃんと心配して、励まして、勇気づけられる素敵な女の子なんだ。きっとミミと仲良くなれるよ? だから、あたしがカティナちゃんを連れて帰ってきたら、お友達になってあげてくれる?」
「お友達?」
「そうだよ。出来る?」
「……うん」
「じゃあ、良い子で待っててね?」
「……うん」
名残惜しそうだが、ミミはちゃんとあたしの服から手を離してくれた。
そのままあたしはミミを降ろして、近くにいた騎士にお願いする。
そして、あたしとミーナさんは再び孤児院の地下へと潜った。
メリナさん、どうしてこんな人になってしまったんだ……
その理由は家柄にあるのですが、それはいずれまた。
ついでにメリナさんが今のキャラになる前の設定では、おっとりお母さんタイプの強キャラでした。
うーん、どうしてこうなった?




