124、作戦会議
今日、残業を頑張ったおかげで、明日の休日出勤は無くなりました!!
やったー!!!!
レファルナさんの占いの館を出たあたしは、一度メルツェナさんの元へと向かった。
と言うのも、孤児院の場所を知らないんだよね。
「メルツェナさん!」
「小娘、ちょうど良いところに来たわ!」
あたしが簡易テントに入ると、そこにはメルツェナさんの他にミーナさんと侯爵さんがいた。
「あれ、ミーナさんは分かるけど……なんで侯爵さんがいるの?」
「なんだ、いてはダメなのか?」
「ダメじゃないけど……侯爵さんは他の所で指揮を取ってるのかと思って」
話を聞くと、どうやらメルツェナさんが言っていた通り、指揮権は王宮に移ったらしい。だけど王様は総指揮を侯爵さんに移譲したので、こうして侯爵さんが現場に来ているのだとか。
「って、そんなのはどうでも良いんです! メルツェナさん、この王都の孤児院の場所分かりますよね? どこですか?」
机を叩きながら、メルツェナさんに詰め寄るあたし。対してメルツェナさんは体を引いてあたしから距離を取ったのだが、すぐに首を傾げた。
「孤児院? なんで孤児院? ちょっと待って……マダムの所で?」
「はい」
「……ってことは商業区の倉庫街はブラフだったってこと?」
どういう事だろう? 孤児院以外にも何か手がかりを見つけたのかな? でも、あのエプロンを見つけたのも商業区だって言ってたよね。
「あの、倉庫街で何かあったんですか?」
そう聞けば、メルツェナさんは地図の一角をトントンと指で叩く。
「ここの倉庫の契約者が架空の商会だったのよ。しかも倉庫には大量の石材があるはずなのに、あったのは子供が1人入れるくらいの大きさの樽ばっかり。しかも、その樽が大量に持ち出されていたの」
その話を聞いて、あたしの中の点が繋がり始める。
「それ、ブラフじゃないと思います。むしろ手掛かりになると思います」
「あんたをマダムのところに送り出した時は、こっちに情報を流さなくていい、って言ったけど、撤回するわ。あんた、マダムのところでどんな情報を手に入れてきたわけ?」
レファルナさんのところで得た情報を包み隠さずにメルツェナさんに教えてあげる。あたしがカティナちゃんを追体験したところまで話せば、呆れているのか後悔しているのか、メルツェナさんは項垂れてしまった。
「はぁ……あんた、厄介なのに気に入られたわね」
「レファルナさん、良い人でしたよ?」
「そっちじゃないわよ。まぁ良いわ。あんたの情報は確実だから、孤児院の地下をメインに捜索する必要があるわ。入り口の場所は分からないのよね?」
「はい、地下の牢屋にいたので」
あたしが答えると、メルツェナさんは地図をトントンし始めて、思案し始める。
その隣で侯爵さんは腕を組んで地図上にある凸型の文鎮みたいなのを動かし始めた。
良く戦争ものとかで見かけるけど、これの名前なんて言うんだろうね? 普通に駒とかかな?
「モカ嬢の齎した情報の確度はどの程度だ?」
「確定ですわ、侯爵様。しかも単なる占いではなく、マダムの持つ魔道具による記憶の追体験があったのですから、まず間違いありません」
メルツェナさんが広域に散らばっていた凸型の駒を全て回収して、改めて2つに分けると、倉庫街と孤児院とに配置する。
「基本的には孤児院を中心に展開させるべきよね……でも相手は『9つの骸』なんだから、絶対に上に繋がる情報は残していないでしょうね」
「いや、この孤児院の地下は通常では発見されないアジトの可能性が高い。取引の書類や物品があるかも知れんぞ?」
メルツェナさんと侯爵さんがあーだこーだと議論を交わす中、蚊帳の外になってしまったあたしはミーナさんの元へ行く。
「モカ様」
「ミーナさん。王宮に報告に行ってたんだよね? どうだった?」
「陛下より侯爵様に全権委任が行われましたので、他の貴族が首を突っ込んでくる確率は低いですが……いえ、そういう事ではありませんね」
ミーナさんが優しく微笑むと、こほんと咳払いを1つ。
「陛下はカティナ様よりもモカ様の心配をしておりました」
ん? あたし? なんであたしの心配を?
「モカ様は、その……少しばかり直情的に話を進めるきらいがあるから、と」
「失礼な……あたしは常に冷静だよ」
ぷんぷん怒ってはみるものの、今日はなかなか上手くいっていないことに気付く。カティナちゃんが拐われた時もそうだし、追体験した時もそうだ。
いつも冷静であるべき、と言い聞かせてそれを実践して来たのに、どうにも今日はそれが上手くいかないな。……って、まだまだあたしが未熟な証拠だね、これは。
「モカ様、侍従の身ではありますが、1つよろしいですか?」
あたしはコクリと頷いた。
「モカ様には何事にも変えがたい美点があります。ご自身がまだお気付きになられておりませんので、私の口からお伝えするのはお控えさせていただきますが、それはとても大事なものです。ですが、それは同時にモカ様の心を蝕む闇でもあります。その闇とどう向き合うのか、モカ様はいずれ選択を迫られることになりましょう。その時はどうか立ち止まって、思い出してください。モカ様には私たちがいることを。あなたに救われた人々がいることを。そして……いつかご自分の力だけで、その美点にお気付きになられてください」
ミーナさんの口から出たのは、助言だった。
まだまだ付き合いが短いというのに、ミーナさんがあたしをちゃんと見てくれているのが伝わってくる。そして不思議なことに、その声音からはこれまでに感じたことのない熱がこもっていた気がした。
「差し出口、失礼しました。罰は如何様にでも……」
「ううん、ありがとうミーナさん。その……そうやって話してくれる人、初めてだから……ちょっと反応に困っただけ。でも、うん! ありがとう」
あたしはミーナさんに近づいて、ゆっくりと抱き締める。
暖かい体温と、とくとくと脈打つ心音に包まれると、何だかとっても安心する。それに
「良い匂いがする」
柔らかなミルクの香りと、仄かに香る女性特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。
ギュッと抱き締め返されると、余計にそれらを感じられて、とっても穏やかな気分になれた。
「よしッ! 元気いっぱい!」
ミーナさんからマイナスイオンとかリラックス効果がある何かが放出されているに違いない。きっと寝る時に抱き枕にしたら熟睡出来るかもね。
「それは良かったです。ではモカ様、参りましょうか」
ミーナさんに手を引かれ、あたしはメルツェナさんの所へ戻った。
会議は踊っておらず、サクサクと進んでいたようで、おおよその流れは決まったみたいだね。
「小娘、あんたにはミーナと一緒に孤児院の調査に行ってもらうわ」
メルツェナさんが一瞬だけミーナさんを一瞥すると、ミーナさんは静かに頷いた。
「私は倉庫街の方を担当するから、何かあっても助けに行けないわ。油断するんじゃないわよ?」
「分かりました! 任せてください! パッと行ってパッと片付けて、カティナちゃんを助けて戻ってきます!」
あたしの言葉に、メルツェナさんは不満げな顔をしている。
「小娘が張り切ると、面倒な事になりそうで憂鬱だわ……」
「後輩の尻拭いも先輩の役目ですよ、メルツェナ先輩!」
「こう言う時だけ後輩面するんじゃないわよ、小娘!」
2人してへへ、っと笑う。
「んじゃ、さっさと行きなさい。場所はミーナが知ってるわ」
「はい、行ってきます!」
あたしはミーナさんと一緒に簡易テントを出ていく。
その直前に、侯爵さんから声が掛かった。
「モカ嬢! カティナの事、頼んだぞ!」
「はい! 無事に連れ帰ってきます!」
手を振って、あたしは孤児院へと向かう。
早くカティナちゃんを見つけて、ドレスを買いに行きたいな。
あれ、おかしいな? プロットではもう孤児院に行っているはずなのに、どうしてまだ出発してないんだ……?
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