↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/161

104、聖天に輝く

 結界と言うのは、大きく分けて3種類に分けられる。

 結界の内にあるものを外に出さない捕縛型。

 結界の外にあるものを内に入れない防護型。

 そして、その両方の性質を併せ持つ封絶型。

 今回あたしとメリナの決闘のために張られた結界は1番目の捕縛型だ。

 なので、基本的に結界の内側にあるものは外側に漏れることはない。故に、メリナの放った砲撃魔法をあたしが両断した時、その破壊が外に向かない事は分かっていた。

 唯一の誤算は、制御を失った極光が霧散せず結界にぶつかり、大爆発を起こした事だ。

 そのせいで結界内には爆煙が充満してしまい、視界の確保が出来ない。


「ハッ! 我が極光を防いだ事には称賛を贈ろう! しかし、この視界の中で自慢の剣を振るえるのか?」


 声は聞こえるけど姿が見えない。それに結界のせいで声が乱反射して、距離も方向も判断が難しい。


「あたしよりも自分の心配をした方が良いんじゃない?」


 とは言え、その程度であたしが止まるはずがない。

 BLOの修行クエストの中には目隠し状態で100体のモンスターを倒すとか、100体のゴーレムとの同時組み手とか、そういうバカみたいなものがあったんだから。

 それをクリアしているあたしからすれば、これくらいの視界不良なんて苦でもない。


「この視界でも、我が極光は貴様を捉えているぞ!」


 黒煙の中に、ぼんやりと光る白銀が見えた。

 あー……この人、思ったよりもバカなのかも。

 黒煙の中で光源が見えたら、自分がそこにいるのがバレるに決まってるじゃんね。

 思いがけない光景に、あたしは苦笑しながら、腰だめに【理切】を構え、跳躍する――その直前。

 あたしの首筋の産毛が一気に逆立つ。


「――ッ!?」


 野生の勘、第六感。

 何でも良いけど、とにかくそういったものがあたしの動作を全てキャンセルさせて、大きく身を捩らせた。

 その瞬間、あたしの半身があった位置を黒い光が迸り、首元のファーショールを焼き焦がす。


「あぁーっ!? あたしの衣装が!」


「ドレスより自分の身を案じよ!」


 メリナの鋭い言葉と共に、四方八方から黒い光の奔流が襲いかかってくる。

 現状ではこの黒光の正体は掴めないが、魔法である事は間違いない。であれば『破魔剣』で対処出来る。

 見てから避ける、という芸当も難なくこなせるあたしにとって、反応できる速度での攻撃なんて意味がない。

 黒光を避け、斬り、弾く。

 しかし攻撃の手は止まない。

 そして気付く。


「魔法を斬ってるのに、その手応えがない……?」


「ようやく気付いたか! 貴様が我が極光を斬り伏せる事など始めから分かっていた! だからこそ! この結界内には貴様が斬った極光の魔力で満ちている! 故にここは既に私のテリトリー。全方位から多角的同時攻撃も可能という訳だ! 幾ら貴様が速かろうと、それを防ぐことは出来まいッ!」


 黒の爆煙と、それに紛れる黒光のレーザー、そして、それを悟らせないように自身の魔力光を囮とする。

 おおよそ騎士としては認められないような卑怯な戦法に、あたしは思わず吹き出してしまう。


「そこまでしてあたしに勝ちたいんだ?」


「当たり前だ! 我が誇り、我が矜持、我が極光に泥を塗られたのだ! 我が父にも、私を取り立ててくれた陛下にも顔向けが出来ん! 行くぞ!」


 メリナの覚悟の一声により、黒煙に紛れた黒光の連射速度が上がった。


「っち、面倒ね!」


 未だあたしだから反応出来ている速度で放たれる黒のレーザーを、反応速度と剣技だけで凌いでいるものの、その対処だけで手一杯になりつつある。


「ま、まさか、これを防ぎ切るのか!? だが! 貴様がどれだけ速かろうと、この全方位からの物量攻撃であれば足を止めざるを得ないだろう! であれば!」


 真っ黒な視界の中であっても、燦然と輝く色取り取りの光。

 結界内に存在する飽和した魔力が、一箇所に収束されていく。


「集え7色天幕! 全てを包む光の御手となれ!」


 その光球の大きさは、先ほどのものよりも小さいバレーボールサイズ。しかし、その密度は凄まじい。

 圧縮された魔力がはっきりと歪んで見えるほどで、まるで錯視絵のようにも見える。


「これで終わりだ! 『聖天輝く終焉の極光《オーロライト・ブレイカー》』」


 メリナが杖を振り下ろした瞬間、世界から音が消えた。

 あまりにも高密度で、音すら切り裂く無音の光は、発射と同時に全てを置き去りにする。

 7色の光が混ざり合ったオーロラの光線が、その綺麗な残光の尾を携えて、蔓延する黒煙すら切り裂きながら、必殺の威力と共にあたしを穿とうと迫る。

 故にあたしは――


「私の勝ちだ、野蛮人ッ!」


 その言葉と共に、極光が着弾する。

 結界の内側から震わせるほどの爆発は、衝撃波となって結界に亀裂を入れるほど。その凄まじいエネルギーは拡散する事なく結界内を暴れ狂い、その余波を結界の外にまで伝播させていた。

 カタカタと振るえる会場のテーブルや柱を、不安そうに見つめる貴族たちは、結界内の爆煙のせいで、その勝敗を未だ知らない。

 そして、いよいよ結界の亀裂がその速度を上げて半球状の結界全てに及んだ時、甲高い破砕音と共に崩れ落ち、溜まっていた爆煙が会場に広がった。

 すぐに結界を張っていた魔法使いたちが風魔法で空気を清浄な状態へと戻した時に、王を始めとした貴族たちは、その勝敗を知る事となった。


「ば、馬鹿な……」


「あたしの勝ちよ」


 煙が晴れた会場は、静寂に包まれていた。

 それもそうだろうね。

 メリナの必殺技が直撃したのに、どうして生きているのか? しかも、メリナの背後でその首に刃を突きつけているのか? 理解は出来ないよね。

 現に当事者であるメリナも理解が出来ていないのだから仕方ない。


「どうなっているのだ! あの状態で……あ、あり得ぬ! 我が究極の極光は、確実に貴様を貫き――」


「あー、それは企業秘密ってことで……」


「ふ、ふざけるなッ! 1度ならず2度も我が誇りに泥を塗るなどッ!」


 喉元に刃を突きつけられていると言うのに元気な事で……はぁ、まぁ、話しても良いか。

 あたしはグラディウスを鞘に戻し、突き刺さった【理切】の元へ向かい、引き抜いてこちらも鞘に戻す。


「簡単に言うと、この【理切】には魔力奪取って力があって、魔法を斬れるんだよね。だから、突き立てて身代わりにしたの」


「……な、なんだと? で、では! 私の同時多角攻撃は……」


「あぁ、それは簡単だったよ。ただ処理が面倒だったから、刃を16分割にするスキル『偽・粉塵剣』で瞬間的に攻撃の隙間を作ったの。その刹那にこの子を突き立てて運動系や移動系のスキルを全部使ってあんたの背後に移動しただけ。ほら、斬ったり弾いたりすればまたあんたの魔力が結界内に散らばって再利用されちゃうでしょ? そうなると千日手みたいに勝負が付かないと思ったからね。いやぁ、良い戦いだったけど、ユリシュさんに比べたらまだまだだったわね」


「ユ、ユリシュと言うのは、世界最強と謳われる、あのユリシュ=ダヴラ殿か?」


 他に同じような化け物がいてたまるかっての。


「そうだけど?」


「ま、まさか、ユリシュ殿に勝ったのか?」


「それこそまさか、よ。惜しいところで負けたわ」


 あたしのその言葉を聞き、メリナは安心したようにホッと胸を撫で下ろした。


「そうか……はぁ、ここまでされれば、私は負けを認めなくてはならないようだな……私の負けだ」


 メリナのその言葉でようやく、蚊帳の外にいた王や貴族たちが我に返り始める。

 コソコソという囁きから、徐々にどよめきへと変わり、最終的には興奮に満ちた歓声へと変わっていく。

 誕生祭の余興とでも思っているのか、貴族たちは興奮したように笑みを浮かべては周囲とその感想を言い合っている。

 そんな中、この誕生祭の主役たる王は密かに溜息を吐いて、誰にも聞こえないほどの声で呟く。


「………主役より目立ってどうするのだ」


 誕生祭はまだ始まったばかり。

 やっぱり、バスターとくればブレイカーもないとね!

 今回モカが使った戦法は至ってシンプルですが、これはモカの技量があって初めて成立するものでした。

 普通の剣士が同じことをしても、同時多角攻撃でやられるか、それを防いでもブレイカーでやられるか、です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。