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『体育祭のMVP景品が「話題のハロウィン街ペアチケット」だったので、隣の席のツンデレ魔導姫シェリアとガチで競い合うことになりました』  作者: eccen.


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第7話 夕暮れの帰路と、ハロウィンへのカウンドダウン

 体育祭が終わった翌日。


 俺――アルス・クライドは、いつものように教室へ向かっていた。


 ただし。


「……おはよう」


「お、おう。おはよう」


 教室の入り口でシェリアと顔を合わせた瞬間。


 二人とも、なぜか固まった。


「…………」


「…………」


 昨日までなら、普通に「おはよう」と言えたはずなのに。


 今は違う。


 俺たちは――恋人になった。


「……何よ」


「いや……」


「私の顔に何かついてる?」


「そうじゃない」


 俺は頬をかく。


「なんか、昨日から意識しちゃって」


「…………っ」


 シェリアの顔が赤くなる。


「そ、それは……私だって……」


「ん?」


「何でもない!」


 シェリアは慌てて席へ向かった。


 俺も自分の席に座る。


 そして。


 隣の席。


 今までと同じ距離なのに――。


 昨日までとは、まるで違って見えた。


「…………」


 横目でシェリアを見る。


 金色の髪。


 いつも通り整った横顔。


 でも。


 昨日、俺の腕の中で笑っていた姿を思い出してしまう。


「……」


 心臓が跳ねた。


「アルス」


「うわっ!」


「何をそんなに驚いてるの?」


「いや、急に話しかけるから!」


「隣の席なんだから普通でしょう」


 シェリアは呆れたように言った。


 そして、小さな声で続ける。


「……恋人なんだから」


「……っ」


 今度は俺の顔が熱くなった。


「お、お前……!」


「何よ」


「そういうの、急に言うなよ」


「だって事実でしょう?」


 シェリアは澄ました顔をしている。


 けれど。


 耳が真っ赤だった。


「……可愛い」


「なっ!」


 シェリアが机の下で俺の足を軽く蹴った。


「調子に乗らないで!」


「痛っ!」


「ふんっ」


 でも。


 口元は少し笑っていた。


 昼休み。


 俺たちは校舎裏のベンチに並んで座っていた。


 手元には、あのペアチケット。


「あと三日ね」


 シェリアがチケットを見ながら呟く。


「ハロウィン街に行くまで」


「ああ」


「楽しみだわ」


 昨日までなら、こんなことを言うシェリアは想像できなかった。


「やっぱり、そんなに楽しみなのか?」


「当たり前でしょう」


 シェリアはパンフレットを広げる。


「見て。巨大カボチャのランタンパレード」


「おお」


「それから、魔法仕掛けのゴースト列車」


「それも乗りたいな」


「こっちは?」


 シェリアが指差した。


「ちびゾンビのお菓子屋さん」


「……なんだそれ」


「可愛いじゃない」


「シェリア、そういうの好きだったんだな」


「悪い?」


「いや」


 俺は笑った。


「もっと知りたい」


「…………」


 シェリアが黙る。


「どうした?」


「……あなたって、時々ずるいわよね」


「また?」


「ええ」


 彼女は少しだけ顔を背けた。


「そんなこと言われたら……もっと楽しみになるじゃない」


 その日の放課後。


 俺たちは一緒に帰ることにした。


 校門を出ると、秋の夕日が街をオレンジ色に染めている。


 昨日までなら、俺が少し前を歩いて、シェリアが隣から追いついてくる。


 そんな距離だった。


 でも今日は――。


「……ねえ」


「ん?」


 シェリアが俺の手を見る。


「その……」


「?」


「手……」


 彼女が小さく指を動かす。


 俺は意味を理解した。


「……繋ぐ?」


「……うん」


 そっと手を差し出す。


 シェリアの指が、俺の指に触れた。


 そして。


 ぎゅっ。


 指と指が絡まる。


「…………」


「…………」


 二人とも無言になった。


 ただ歩く。


 けれど。


 繋いだ手だけが、妙に熱かった。


「……アルス」


「何?」


「こういうの……慣れないわね」


「俺も」


「でも……」


 シェリアが少しだけ握る力を強くする。


「嫌じゃない」


「俺もだよ」


 夕暮れの道を、二人並んで歩いていく。


「ハロウィン街って、夜になると本当に幽霊が出るのかな?」


「魔法で作られた幻影でしょう」


「でも、もし本物だったら?」


「……あなたが守ってくれるんでしょう?」


「もちろん」


「ふふ」


 シェリアが笑った。


「あなたと一緒なら、どんなお化けが出ても怖くないわ」


「じゃあ、俺も怖くないな」


「どうして?」


「お前が一緒だから」


「…………」


 シェリアが立ち止まった。


「え?」


「今の……もう一回言って」


「え?」


「聞こえなかったから」


「いや、絶対聞こえてただろ」


「いいから」


 彼女は頬を赤くしながら、俺を見上げる。


「もう一回」


「……シェリアが一緒だから、俺も怖くない」


「…………」


 シェリアは満足そうに笑った。


「……うん」


「何だよ」


「別に」


 そして。


 また歩き始める。


 今度は、さっきよりも近い距離で。


 やがて家へ向かう分かれ道が見えてきた。


「じゃあ、また明日」


「うん」


「……アルス」


「ん?」


 シェリアが少し迷ったあと。


「……また明日も、一緒に帰りましょう」


「ああ。約束する」


「約束よ」


 彼女は小さく手を振って、自分の家へ向かっていった。


 俺も歩き出す。


 そしてポケットの中を確認する。


 ペアチケットは、ちゃんとある。


 あと三日。


 たった三日なのに。


 こんなにも待ち遠しい。


 そして俺はまだ知らなかった。


 ハロウィン街には、ただの観光だけではなく――。


 俺たち二人の距離を、さらに近づける仕掛けが待っていることを。


 ――最高のハロウィンまで、あと三日。

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