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『体育祭のMVP景品が「話題のハロウィン街ペアチケット」だったので、隣の席のツンデレ魔導姫シェリアとガチで競い合うことになりました』  作者: eccen.


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第8話 最高のハロウィン

 そして――。

 待ちに待ったハロウィンの日がやってきた。

「アルス、こっち!」

「待てって、シェリア!」

 王都から少し離れた場所にある、話題沸騰中の観光地。

 かつてゴーストタウンと呼ばれていた、奇跡のハロウィン街。

 巨大なゲートをくぐった瞬間、俺は思わず息を呑んだ。

「……すげえ」

 見上げれば、オレンジ色の光を灯したカボチャのランタンが街のあちこちに浮かんでいる。

建物は漆黒と紫の装飾で幻想的に彩られ、上空ではマントを羽織った男――カフェのウェイター長兼演出リーダーだというアルという青年が、飛行魔法で空中ランタンの夜空パフォーマンスを披露していた。

 そして。

「い、いらっしゃいませー……です!」

「ハッピーハロウィーン!」

 ダボダボの服を着た小さなゾンビの女の子が、自分の足につまずいて転びそうになりながらも、元気いっぱいに手を振っている。

「……可愛い」

 隣から、シェリアの声が聞こえた。

 俺は思わず彼女を見る。

「やっぱり好きだったんじゃないか」

「な、何よ!」

「いや、すごく嬉しそうだから」

「……だって」

 シェリアは一生懸命に頭(ぬいぐるみ仕様)を整えているちびゾンビを見つめながら、頬を緩めている。

「こんなの……可愛いに決まってるでしょう」

「ははっ」

「笑わないで!」

 すると。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん!」

 そのちびゾンビの女の子――本編の看板マスコットであるココちゃんが、とてとてと駆け寄ってきた。

「カップルさんですか?」

「……!」

 シェリアが真っ赤になって固まった。

「そ、そうだけど……」

「わあ! カップルさんには、特別スタンプを押してあげます!」

「えっ?」

 ちびゾンビのココちゃんが差し出したのは、二人分のスタンプカードだった。

「街の五か所を回ってスタンプを集めると、この街のプロデューサーのヨイ様特製『超巨大パンプキンパイ』の切り分けがもらえます!」

「やろう!」

 俺が即答すると。

「……仕方ないわね」

 シェリアも嬉しそうに頷いた。

 こうして。

 俺たちの初めての恋人デートが始まった。

 最初に向かったのは、2章でヨイがチート魔法で育てたという伝説のカボチャが鎮座する、巨大カボチャ広場。

「見て、アルス!」

「おお……!」

 中央にそびえ立つのは、三階建ての建物ほどもある巨大カボチャのランタン。

 目と口が妖しく光り。

「グワッハッハッハ!」

 突然、大音量で笑い声を上げた。

「きゃっ!」

 シェリアが驚いて、俺の腕を強く掴む。

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫よ!」

 そう言いながら。

 彼女の手は俺の腕から離れない。

「……怖い?」

「怖くないわ!」

「じゃあ、離す?」

「…………」

 シェリアは少しだけ考えて。

「……このままでいい」

「そっか」

 俺も胸の高鳴りを隠しながら、そのまま歩いた。

 次は、可愛いモンスターたちが手厚く(?)脅かしてくれるお化け屋敷アトラクション。

「絶対怖くないからな」

「私は怖がらないわよ」

 ところが。

 暗闇の中から、頭に小さなカボチャを被った悪戯好きな魔物――パンプくんが突然飛び出してきた瞬間。

「きゃあっ!」

 シェリアが俺の腕にしがみついた。パンプくんは「ニシシ! 驚いたかー!」と嬉しそうに笑っている。

「……」

「……何よ」

「いや」

 俺は笑いを堪える。

「可愛いなって」

「……言ったら置いていくわよ」

「ごめん」

 でも。

 シェリアは腕を離さなかった。

 その後も二人で街を歩き回った。

 魔力付与で作るオリジナルランタン作り。

 トマト料理が自慢のハロウィンカフェ巡り。

案内役のヨイさんや副代表のルミナさん、可愛いモンスターキャストたちとの記念撮影。

 気づけば、空はすっかり暗くなっていた。

「……綺麗」

 シェリアが空を見上げる。

 無数のカボチャランタンが、夜空に優しく浮かんでいる。

 オレンジ色。

 紫色。

 青色。

 かつてゴーストタウンだった街全体が、幻想的な魔法の光に包まれていた。

「来てよかったな」

「ええ」

 シェリアが俺の手をぎゅっと握る。

「体育祭、頑張った甲斐があったわね」

「シェリアも頑張っただろ」

「私は……」

 彼女は照れくさそうに少し笑う。

「あなたと来るために頑張ったもの」

「……俺もだよ」

「ふふ」

 二人で顔を見合わせる。

「ねえ、アルス」

「ん?」

「これからも……こういう場所に来たいわ」

「もちろん」

「ハロウィンだけじゃなくて」

「ああ」

「春になったら、お花見もしたい」

「いいな」

「夏は海」

「それも行こう」

「冬は――」

「雪祭りとか?」

「……うん」

 シェリアが嬉しそうに笑う。

「ずっと、一緒に行きたい」

 その言葉に、俺は胸が熱くなった。

「俺も」

 そして。

 そっと彼女の手を握り直す。

 体育祭の日。

 俺たちは、一枚のペアチケットを巡ってガチで競い合った。

 絶対に負けない。

 絶対にMVPを取る。

 そんなことばかり考えていた。

 でも。

 本当に欲しかったものは、チケットじゃなかった。

 シェリアと一緒に過ごす時間。

 笑い合う時間。

 これからも隣にいられる未来。

「アルス」

「ん?」

「……ありがとう」

「何が?」

「私をここに連れてきてくれて」

「こっちこそ」

 俺は笑った。

「一緒に来てくれて、ありがとう」

 その瞬間。

 夜空いっぱいに魔法の花火が咲いた。

 パンッ!

 鮮やかなオレンジ色の光が夜空を染める。

「わあ……!」

 シェリアが目を輝かせる。

 俺はそんな彼女を見つめた。

 賑やかなハロウィン街よりも。

 空に浮かぶ幻想的なランタンよりも。

 今、隣で笑っている彼女のほうが――。

 ずっと綺麗だった。

「シェリア」

「何?」

「来年も来ような」

「……うん」

 彼女は俺の肩にそっと頭を預けた。

「来年も、その次も」

「ああ」

「ずっと一緒に」

 俺たちは手をつないだまま、夜の街を歩いていく。

 その手にはもう、チケットはない。

 だけど。

 代わりに、確かなものが残っていた。

 体育祭から始まった、小さな恋。

 競い合って。

 支え合って。

 ようやく素直になれた二人。

 そして今日。

 最高のハロウィンが、二人の大切な思い出になった。

 ――これは、体育祭のMVP景品から始まった。

 ちょっと不器用で。

 ちょっと甘くて。

 そして、どこまでも幸せな。

 二人の恋の物語。

ハロウィン短期連載、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました

――そして!明日からは、早くも新連載がスタートします!


新しい世界、新しい主人公、そしてまた一味違ったワクワクする物語をお届けする準備を進めていますので、ぜひ明日からの新たな旅も一緒に見届けていただけると嬉しいです!


それでは、次の世界でお会いしましょう!

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