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天下統一?いや、まずは田植えと味噌や。~河内の弱小城主、今日も家族総出で生き残ります~  作者: 奈羅
河内の没落大名〜優先順位、野良仕事と商売。そして、時々戦〜
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敵襲?ほな、大筒試したろ

河内・杉下城。


清洲へ義藤たちが旅立ってから、三日。


城下はいつもと変わらぬ朝を迎えていた。


畑では領民たちが鍬を振るい、城内では古満や真智たちが味噌の様子を見に蔵へ向かっている。


そんな穏やかな空気を切り裂くように、一人の物見が櫓から叫んだ。


「敵襲ーっ!!」


城内が一気に慌ただしくなる。


「どこや!」


義長が駆け出す。

物見は城の外を指差した。


「遊佐勢です!!それから……!」


望遠筒を覗いた杉下家家老・伊藤格之進(いとうかくのしん)保武(やすたけ)が顔をしかめる。


「戸塚の旗です。」


「大和郡山か。」


義長は腕を組んだ。


「援軍を出してもろたみたいやな。」


保武は苦笑する。


「ざっと千はおります。」


「よう集めたもんや。」


義長は櫓の上から敵陣を見つめた。


「……なんで、あない執念深いんやろな。」


保武が肩を竦める。


「堺ですわ。」


「堺?」


「杉下が持っとる堺への伝手が欲しいんでしょうな。」


義長は「成る程……」と呟きながら頷いた。


「力で従わせたら、そのまま商人との繋がりも手に入る。戸塚も同じ考えでしょうな。

堺を押さえたら、この国の銭を握ったも同然ですから。」


義長は鼻で笑った。


「そら諦めん訳や。」


保武が続ける。


「せやけど……親父殿の代から何十年も攻め続けとるけど、ウチに一度も勝ったためしがありまへん。」


そして、保武は指を折る。


「ウチがやって来た事と言えば、山道を塞ぐ。落とし穴を掘る。

夜になれば奇襲しまくった。

挙げ句、土地勘では勝負にもならん。」


義長が笑う。


「懲りへん人らやなぁ。」


その時、城門の方から声が上がる。


「源次郎様!」


「堺の松野屋が置いてった大筒!」


「あれ、試します?」


義長は一瞬考えた。


「……せやな。」


にやり、と笑う。


「折角や。……試してみるか。」


城壁へ据えられた大筒へ、兵たちが慌ただしく火薬を詰めていく。


保武は腕を組んでいる隣で、義長が笑う。


「松野屋もえらいもん置いてったなぁ。」


「売れん言うて置いてったんですよ。」


「ほんまに売れんかったんやろか。」


「いや。」


保武は敵陣を見ながら口元を緩めた。


「宣伝でしょう。」


「宣伝?」


「『実戦でこれだけ威力があります』いう実績作りですわ。」


義長は大きく頷いた。


「流石、商売人やなぁ。」


「源次郎様!支度、整いましたっ!」


義長はスッと手を上げる。


「放てっ!」


次の瞬間。


ドォォォォォォォォンッ!!


轟音と共に砲弾が敵陣へ飛んだ。

土煙が高く舞い上がる。


「当たった!」


「見事や!」


敵陣は大混乱となった。


「おぉー……。」


城壁の上から歓声が上がる。


「次の陣、前へ出て来よったで。」


義長は頷く。


「ほんなら……。もう一発や。」


兵たちが再び火薬を詰め始めた、その時だった。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」


城中に響き渡るほどの大音量。

両軍の兵たちが思わず動きを止める。


「……なんや?」


保武が首を傾げると、義長は苦笑した。


「源九郎や。」


「ああ……。さっきの音で驚いたんですかねぇ。」


「いや。」


義長は首を横へ振る。


「腹減っただけや。」


「……飯時ですしな。」


保武も納得したように頷いた。


「古満が呼ばれとる頃やな。」


義長は平然と手を振る。


「ほな、続けるで。」


砲弾が仕込まれたのを確認してから、手を上げる。


「放てっ!」


ドォォォォォォォォンッ!!


二発目も敵陣へ見事に着弾した。


その日の夕刻。


遊佐・戸塚連合軍は、一歩も杉下城へ近付くことなく退却していった。


杉下家にとっては、いつもの一日であった。

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