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天下統一?いや、まずは田植えと味噌や。~河内の弱小城主、今日も家族総出で生き残ります~  作者: 奈羅
第一章 河内の没落大名〜優先順位、野良仕事と商売。そして、時々戦〜
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大金より、塩が欲しい

清洲城・評定の間。


義昭は静かに進み出ると、深く一礼した。


「御屋形様。

お約束の鉄砲三千丁――全て、お納めいたしました。」


広間が静まり返る。


秀俊が一本一本確認し、最後の一挺を静かに置く。


「……相違ございませぬ。全て一級品にございます。」


重臣たちから安堵の息が漏れた。


「見事じゃ……。」


「本当に揃えおった。」


しかし、その中の一人が口を開いた。


「されど。」


広間の空気が張り詰める。


「納期三日前とは、些か危うかったのではないか。」


「途中で間に合わなんだら、どうするおつもりだった。」


義昭は静かに顔を上げる。


答えようとした、その時だった。


「……やめんか。」


小山田綱勝の低い声が広間へ響く。


「徳之丞殿……。」


綱勝は腕を組んだまま、家臣を一瞥する。


「約定は守った。それ以上、何を申す。」


一拍置く。


「鍛冶が逃げたとも聞いた。それでも三千丁揃えた。……それが答えではないか。」


さらに低く言う。


「みっともない真似はするな。」


広間が静まり返る。


義昭は静かに綱勝を見つめ、小さく頭を下げた。


「……恐れ入ります。」


信綱は満足そうに笑う。


「勘右衛門よ。皆に伝えよ。

大儀であった。」


「はっ!」


◇


数日後。


河内・杉下城。


綾部家より約束の代金が届けられた。


大広間へ運び込まれる木箱。

蓋を開けると、中にはぎっしりと銭が詰まっていた。


「おぉ……。」


若い家臣たちから歓声が上がる。


義保は目を輝かせた。


「これだけあったら、畳を新しいのに換えれますね!」


義藤も豪快に笑う。


「せやな!」


一同が盛り上がるかと思いきや――。


義長が帳面を開いた。


「ほんなら、薬も買い足しましょう。」


房春が頷く。


「殿。裏門横の柵、ええ加減建て替えてください。」


真智が手を挙げる。


「塩も買うで、塩。」


すると、阿南も手を挙げる。


「真智さん、あと油もや。」


正義は槍を見つめる。


「……ちょっと新しい槍、欲しいです。」


義長の妻・古満がスッと手を上げる。


「義母上、義姉上。そろそろ新しい布と糸が欲しいです。

源九郎の裾直しが間に合いまへんねん。」


義長の長女・凛と次女・琴の間に立っている源九郎はキョトンとした顔をしている。

一歳にして、既に身長は五歳である琴の胸元付近まで伸びている。


「せやな〜。源九郎は大きゅうなるの早いからなぁ。」


阿南はそっと源九郎を抱き上げる。(抱き上げるのに、苦労していたが……。)


「母上、買うんやったら木綿の方がよろしいです。源九郎、すぐ大きゅうなるから。」


凛はさも当然、と言わんばかりだ。


「……この子、誰に似たんやろか。」


美津は藤嗣を見る。


「そろそろ、若殿の兜を揃えなあきませんね。」


「せやな〜、そろそろ初陣や。」


義藤も賛同すると、美津は算盤を弾きながら淡々と言う。


「全部買うても、まだ余ります。」


義藤は腕を組み、大きく頷いた。


「ほな、その残りは貯めとこか。」


「「賛成。」」


誰一人として、「宴だ。」と言い出す者はいなかった。


今日も杉下家は、いつも通りである。

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