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天下統一?いや、まずは田植えと味噌や。~河内の弱小城主、今日も家族総出で生き残ります~  作者: 奈羅
第一章 河内の没落大名〜優先順位、野良仕事と商売。そして、時々戦〜
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河内へ帰還

河内・杉下城。


清洲を発って数日。

ようやく見慣れた城門が見えてきた。


「兄上や!」


櫓の上から義長が手を振る。


「殿ぉー!」


領民たちも次々と駆け寄って来た。

義藤は馬を降りると、大きく伸びをした。


「やっぱ河内は落ち着くなぁ。」


義長が笑う。


「無事で何よりです。」


「綾部様と奥方様自ら見送ってくださったわ。」


「えらい丁重にしてもろたな〜。」


房春も頷いた。


「そうですか。兄上、疲れたでしょ。早よ中へ。」


「ああ、せやな。」


義藤たちは馬を引いて、城内へと入って行った。


馬屋まで馬を連れて行き、その足で大広間へ向かうと、真智と義保、隆と桐、そして清武と美津が待っていた。


「お帰りなさいませ。」


真智が頭を下げると、義保たちは一斉に頭を下げる。


「長らく留守にしてて悪かったな〜。」


義藤は上座に腰を下ろしながら、呟く。


「真智。」


「なん?」


「土産や。」


義藤は真智へ一つの壺を渡す。


「うちに?」


真智は不思議そうに壺を受け取る。


「……これは?」


「清洲の市で買うてきた。」


義藤は嬉しそうに笑う。


「八丁味噌いうてな。三河の名産やそうや。」


「へぇ〜。」


真智は興味津々で壺を眺める。


「どんな味するんやろ。」


そして、ふと房春を見る。


「……義兄上。」


「ん?」


「値切ったんか?」


房春は胸を張った。


「基本や!」


「何言うてんの。」


隣で隆が呆れたようにため息を吐く。


「『旅先やから』言うて、最初は向こうも強気なんや。

せやから、一回断る。ほな向こうが呼び止める。……そこからが勝負や。」


「自慢げに言う事やない。」


真智が笑いながら壺を抱える。


「まぁ、ありがと。」


「今晩、早速使うわ。」


その様子を見届けると、義長が義藤へ向き直った。


「兄上。」


「ん?」


「……綾部は、何をご所望やったんです?」


義藤はあっさり答えた。


「鉄砲三千丁や。」


一瞬だけ静かになる。


「三千丁?」


義長は腕を組んだ。


「ほな、松野屋に行こか。」


義昭も頷く。


「火薬は有田屋にも声掛けときます。」


房春が指を折る。


「鍛冶は美濃にも話通っとる。」


美津は側に置いていた帳面を手に取る。


「代金の受け取り方法、先に決めときましょ。」


誰一人、慌てる者はいない。


「ほな明日から忙しなるな。」


「せやな。」


義藤は笑って頷いた。


「ところで兄上。」


義長が尋ねる。


「他には?」


「色々あったで。」


義藤は指を折る。


「まず、土山十兵衛殿。」


「……土山って、あの、将軍家の御伽衆かいな。」


義長は目を丸くしていた。


「政変で職を解かれて、浪人しとったらしい。

そんときに綾部に拾われたんや。」


「へぇ……。どんなお人なん?」


「礼儀正しい、ええ人や。

あと、木浪藤間。アイツはおもろい奴や。

子ども八人おるん。」


「「八人!?」」


「元足軽やけど、人望ある。」


義藤は続ける。


「槍の又兵衛こと、仁藤殿にも顔覚えてもろた。」


「ほぉ。」


「玄蕃は左衛門を連れて、尾張や美濃の情報集めまくっとった。」


房春が笑う。


「来たからには、見て回らんと損や。」


「勘右衛門は?」


義長が尋ねると、義昭はさらっと答えた。


「美濃の鍛冶衆と繋がり作ってきました。」


「……さらっと言うな。」


「一番大事やないですか。」


義昭は照れ臭そうに頭を掻く。


「向こうも商売ですから。」


義藤は最後に藤嗣を見た。


「んで、藤嗣は……。」


藤嗣は少し困ったように笑う。


「綾部の姫様方と若様のお相手を。……遊ばれてきました。」


「はっはっは!」


義藤は豪快に笑う。


「仕事しとるやないか!」


「松姫様によじ登られました。」


「そら災難や。」


「珠姫様には惚気聞かされました。」


「何やそれ。」


「三日置きに駿河の許嫁から文が届くらしいです。」


「三日!?」


今度は義長が目を丸くした。


杉下城には、久しぶりに賑やかな笑い声が響き渡った。

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