三日置きの恋文
小夜の高速詠唱質問攻めを喰らい、義藤と義昭のHPはゴリゴリに削られていた。
「商人との交渉でも、こない喋りまへんで……。」
珍しく義昭がグッタリしている。
そんな義弟を見て、義藤は苦笑しながらお茶を啜る。
そして、ふと顔を上げて、キョロキョロと辺りを見渡す。
「あれ?そういや……藤嗣どこや?」
義昭も顔を上げて、辺りを見渡す。
「……あ、ほんまですね。若殿、どこ行ったんや?」
すると、按察局が緩やかに答える。
「若殿様は、いま我が姫様たちと若様のお相手をしていただいておりまする。」
「そうですか。」
義藤はホッと息を吐いたが。
「粗相のないようにしてくれたらええけど……。」
義藤の呟きに、按察局が首を横に振る。
「いえ、どちらかと言えば……。」
一拍。
「粗相があるのは……姫様たちかもしれませぬ。」
義藤と義昭は顔を見合わせる。
「元気でよろしいやん。」
「元気過ぎるのです!」
小夜は穏やかに微笑みながら、お茶を啜っていた。
◇◇◇
奥御殿のとある部屋。
藤嗣は四人の子供に囲まれて、タジタジになっていた。
十二歳の長女・珠姫、八歳の三女・五姫、七歳の嫡男・夜叉若丸は、藤嗣を質問攻めにしていた。
「河内はどのようなところですの?冬は雪は降りますか?積もりますか?寒いですか?」
「藤嗣様、鉄砲は見たことはありますか?撃ったことはありますか?」
「藤嗣様、車懸りの陣は実戦でも有効なのでしょうか?」
「……あの、一人ずつ……。」
そして、三歳の六女・松姫は……。
「大きいぃ〜!ちちうえより大きいぃ〜!」
藤嗣の身体をよじ登っていた。
「これこれ、其方たち。その辺にしてやりなさい。
藤嗣殿が困っておいでじゃ。」
現れたのは、気品漂う尼僧だった。
珠姫と歳の変わらない二人の姫を連れていた。
「杉下のご嫡男であられるな。
私は信綱の母にございまする。今は清雲院と名を改めておる。どうぞ、よしなに。」
「杉下源太郎藤嗣にございまする。
綾部の御母堂様のお目に掛かりまして、恐悦至極にございまする。」
清雲院は目を細めて、藤嗣を見る。
「成る程……。没落したとは申せ、名門の誇りは失っておらぬようじゃの。
……ふふふ、左近亮もこれまた面白い家を引き入れたものじゃ。」
「恐縮です。」
清雲院は、藤嗣によじ登っている松姫を抱き上げて、自分の膝の上に座らせた。
「ババさま〜!まだ登りきっておりません!」
「人によじ登るとは何事ですか。」
松姫は、ぷぅっと頬を膨らませる。
「……あの、御母堂様。此方の姫様方は?」
「ああ……。佐藤の生き残りよ。
お富、お勝、ご挨拶なさい。」
「「はい。」」
二人は藤嗣の前に座り、小さく手を付く。
「お初にお目に掛かりまする。
佐藤雪之丞龍興が長女、富にございまする。
こちらは妹の勝にございまする。」
二人の姉妹は小さく頭を下げる。
(綾部の奥方様の姪御やな……。家は滅んでも、血は残したんか。)
藤嗣も手を付いて小さく頭を下げた。
「杉下藤嗣にございまする。以後、お見知りおきを……。」
先ほどとは打って変わって、穏やかな空気が流れていたのだが……。
「失礼いたします。」
一人の侍女が部屋に入ってきた。
「珠姫様、松原の若様より御文にございまする。」
書状を差し出すと、珠姫はパッと笑顔になる。
「まぁ!もうお返事をくださったのですか!」
そして、書状を開きウキウキしながら読んでいる。
「もしや……ご婚約者の?」
「ええ、松原家嫡男の綱重殿から。」
清雲院は苦笑していた。
「三日置きに。」
「三日!?」
藤嗣はなんとも言えない顔で、珠姫を見つめた。
「珠姫に似合いそうな小袖を手に入れたので、贈ります……。もう〜!綱重様ったら〜!」
惚気に若干、胸焼けを覚えた。




