六十六話 手作り料理
今回の話はマジで短いです。申し訳ありません。
夏休みの宿題と格闘すること約二時間。途中途中に氷花さんが家の手伝いの間を縫ってお菓子を持ってきてくれたり、簡単な休憩を取らせてくれた。
そうして俺は今回の読書感想文の課題である本を、著作権が切れているのでネットで読み切り簡単に原稿用紙に書いていく。この原稿用紙は葛から分けてもらった。これらをきちんと清書して、ホチキスで止めたら俺の読書感想文の宿題は終わる。
葛は数学のワークと格闘しているようで、たまに分からない所があったら麗に聞いていた。どちらかというと文系な葛は国語や古典の成績では学年でトップクラスだが、理数系になると真ん中あたりらしい。俺なんて大体が全部中の下か下の上なのに、努力量の差だろうか。
そんな俺達二人を煽るー……なんてことを麗はしていなかった。麗はどちらかというと葛の部屋に興味があるらしく、そのまま本棚を漁って本を呼んでいた。速読家なのか、もうすでに五冊ほどの本が積み上がっている。
カリカリ、シュッシュ。紙とシャーペン、時折消しゴムが擦れ合う音が響き二時間、そして──
「──終わったー! 読書感想文、おーわり! その前にやってた国語の文章題も終わったら国語から解放だー!」
「俺も……なんとか数学終わった……」
「お疲れ様ー。互いに一教科ずつ終わって良かったね。これなら夏休みの後半もちょっとは楽になるんじゃない?」
カバンから手帳を取り出して、挟んでいた夏休みの宿題を印刷した紙に終わった宿題の欄にバツをつけていく。麗の言う通り、一科目終わったので全体からもかなり減った。残る宿題で厄介そうなのは主要科目のワーク系だ。家庭科とかは料理を作ろう! みたいな内容なのでサクッと終わるし、先生の指示で料理コンテストで作ったやつがそのまま宿題にしていいらしいので転用する。
「あー、今って何時?」
確か宿についたのが朝の十時ぐらいだった気がする……
「今はね……ん、十二時だよ。十二時二十四分、お昼時だね」
「じゃあ用意してくるよ。アレルギーってあるか?」
「ないよー。……え、葛が作ってくれるの!?」
「おう。これでも旅館の息子として十五年生きてきたからな、作れるぞ」
「おおー!」
「じゃあ任せたよー」
葛の手作り料理……どんななんだろ。
あ、これで料理コンテストのライバルの腕前を知れるのか。なら味わって噛み締めて食べないとな。
「そんなこと葛は考えてないだろうに」
「俺も多分三分後には忘れてるな、これ……」
そう言ってとりあえず葛の部屋の真ん中にある机から勉強道具を退避させる。俺のは自分のバッグに、葛のは葛の勉強机に。
「ちゃんと勉強机あるのにちゃぶ台で勉強させちゃって、悪いな」
「まあ、自分ひとりだけ椅子に座ってたら気まずいんじゃない?」
「……そうか!」
なんとなくの謎が解けたと、そのまま麗と会話の話題を一転二転させながら笑ったり、ボケたりしているとしばらくして葛が戻ってきた。その手には透明な、そこそこ大きめなお皿があって、その上にはそうめんが盛り付けられている。そして三つのお椀とめんつゆ。
どうやらお昼ご飯は三人でそうめんらしい。個人的には蕎麦よりそうめん派だったりする。
「ん、待たせたな」
「ぜんぜん、大丈夫! おいしそうだねー」
「なら良かった。というか、普通にめんつゆ持ってきちまったが、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫」
「ボクも特にアレルギーとかはないよー」
「そうか」
野菜やらハムやらがきれいに盛り付けられていて、とても美味しそうだ。これは、料理コンテストで強敵になる予感……!
「いただきます。……程よい硬さだね」
「いただきまーす……ん、美味しい!」
「……褒められるのも悪くないな。よし、もっとだ」
「葛はつけあがるタイプだったか……ちゃんと母さんが教育しないからこうなるんだぞ」
「亭主関白の時代遅れとは離婚だね。絶縁状を書こう」
「待って、展開が早い、追いつけないっす」
そうしてもう一回、そうめんを箸で取ってめんつゆに付ける。うーん、美味しい。これが家庭……旅館の味か。時折麺だけじゃなくてきちんと綺麗にカットされているきゅうりやらトマトを食べる。
「やっぱり夏って言ったらそうめんだろ?」
「代名詞ではあるよね」
夏と言ったら、という質問は結構定番だとは思う。夏祭りだとか、プールだとか。たしかにそうめんをいつ食べるかと言われたら大体の日本人は即答で「夏」と答えるだろうし。まあ、茹でる時にあっつい空間に数分いないといけないのがネックだが。
「──それで、山で遊ぶったってどうするの? 葛ん家の私有地?」
「現実的だな、麗。ああ。この山と、あと隣りにあるもう一つが私有地だ。なんでも曾祖父さんの代からなんだとか。それでこっちの山は旅館があるから下手にできないけど……もう一つの方にはよく俺も氷花も行くんだ。川とかもあって、小動物がいて。結構いい場所……だと思う、俺は。少なくとも」
自分の家の山を褒める気恥ずかしさからか段々と声量が落ちてきていたが、それでも葛が強くおすすめしてるのは伝わった。なにか、いい思い出もあるのだろうか。
──そうして俺達はそうめんを食べ終わり、部屋とお皿を片付けて、山に行く準備が三人整って出発したのだった。




