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人妖!  作者: 家中由真
夏休み編
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六十三話 家の事情

 ──夏休み。


 大雑把に約四十日間の間学校にいかなくてよいという、超大型連休。学生の超がつくほどの味方。その夏休みの間に色々な催し物に行ったり、恋を発展させたり、様々なイベントが起こるのが夏休みだ。

 そして、それは小中……なんなら幼稚園から友達が誰一人としていなかった俺も決して例外ではない。そう、決して!!


 何を隠そう、今回の俺の夏休みには予定がある! だから俺だって立派にDKやれているのだ!


「蒼ー、ねえモバ充持ってな……何その顔、キモ」


「!? あ、朱さん!? きっ、え、今、俺のことキモいって……」


「そういうのいーから。モバ充貸して」


「あ、はい。どうぞ」


 これ以上はからかったら本当に起こられるのでやめておく。そういう踏みとどまれる男なのだ、俺というやつは。


「……蒼が北海道に行くのってあと五日後でしょ? なんでもう荷物詰め終わってるの?」


「いや、事前の準備不足で友達に迷惑はかけられないよなーって。だからもう終わらせちゃった」


「……これが十数年友人という存在がいなく、拗れに拗れた男の末路か……気をつけよ」


「?」


 どこか顔が青い朱は俺が指さした場所にあるモバイル充電器を取って足早に部屋から出ていってしまった。……なにかしてしまっただろうか。


「……まあ、いっか」


 そのまま布団にゴロゴロと転がって、偶にスマホを弄ったり、偶に漫画や雑誌を見たりを繰り返す。夏休みの宿題はやらないといけないとわかっているので目を逸らし中だ。向き合わなきゃいけない、そうはわかっているけど……いや、理屈抜きに勉強は嫌いだ。


 そのまま腹筋の力を借りて立ち上がり、気分転換にでもジョギングに出かけようとした。ジャージを手にとって、扉を開けようとした時、スマホが急に鳴り始めた。


「? ……あ、桜だ」


 電話の相手はどうやら桜だったようで、画面には『鬼城院 桜』と表示されている。すぐに画面をスワイプして応答した。


『──あ』


「どうしたの、桜? なんかあった?」


『……いや、なんでもないんだが、元気かなぁって』


「彼女かよ」


 ……いや、まあ、ある意味告白のようなものをしたのは俺だけども。それでも正式に交際はしていないし、多分そんな未来は、っていうか絶対に訪れないだろう。


「えっと、それで本当の要件は?」


『いや、……その、本当になんでも』


「──嘘。だめだよ?」


 そう俺が言うと、電話越しに桜の息を飲む音が聞こえた。──図星、ということだろう。前から薄々気づいてはいたが、桜は嘘をついたり誤魔化すというのがとことん向いていない。根が優しすぎるのだ。


 ──そう思えば、俺が秘密を打ち明けたのはかなり酷かったのかもしれない。麗の様なタイプは、隠しきれるし、問い詰められても白を切れる性格だ。……けど、桜にとってはもしかしたら嘘を付くという好意そのものが負担になっている可能性だってある。

 こういう時、自分の無計画さが嫌になる。もっとちゃんと考えてから話せばよかっただろう。


「それで、ホントのところはどうなの?」


『いや……ちょっとだけ、色々あったんだ。それで、もしかしたら夏休みが外出禁止になるかもしれなくて……つまり、その、あれだ。コンクールとか、プールとか、行けなくなるかもしれなくて』


 段々と、声が震えていくのが嫌でもわかった。外出禁止……確かに、御三家だなんて呼ばれる、格式が高そうな家だ。そういった処罰があるのかもしれない。理由は、聞かないほうがいいだろう。


「……うん、わかった。でも、来れそうだったら、来てね」


『……ああ。ありがとう』


 そう言って、その後は互いの近況やら勉強の進み具合やらなんやらの雑談を挟んで通話は終わった。

 通話が終わると同時に俺はスマホを布団に雑に投げる。十数万円もする機械であることはわかっていたが。それでも、どうしようもないやり切れない気持ちを当てるような八つ当たりだった。


 家のことに、部外者が、第三者が、他人が、口を出すのはお門違いだろう。そんなの、お節介でしかないし、迷惑になる可能性だってある。──けど、それでも。


「……」


 ──浮かれすぎていたのだろう。





「なんだアイツ、目に見えて落ち込んでないか?」


「んー? なんでも振られたんだって」


「え、マジで? アイツ彼女いたの?」


「男」


「……マジで!?」


 我が家でありえないスピードで誤情報が広まっているが、それを修正するのだって面倒くさい。


 夜ご飯を食べで、そのままそれぞれ色々やったりしている。ちょうど風呂から上がった父さんがダイニングのソファでだらけている俺を見て朱に色々と聞いている。


「──家庭ってなんだろ」


「家の庭、だろ?」


「父さんは黙ってて」


「あたりが強い! これが反抗期か……」


 そんな漢字の成り立ちが知りたいわけじゃない。こういった時に父さんが言う言葉はだいたいどうでもいい、役に立たないものばっかりだ。そう俺が強く言うとどこかしょぼんとしながら父さんは洗面所に向かった。多分歯磨きだろう。あの人、夜に酒飲まないっていうかお酒そのものが苦手だし。


 桜のことで、もしかしたら悩み過ぎなのかもしれない。友達間での約束は、こうやって無くなることだって普通なのかもしれない。けど、それでも考えすぎてしまうことが、あったのだ。


 ──もしかすれば、俺のせいではないか。


 俺が、人間で、それを明かしてしまったからこそ、桜が家族の間でもめてしまった可能性だってあるのかもしれない。そうすれば、もう俺は、加害者だ。勝手に桜を巻き込んだ報いを受けないといけないのかもしれない。


 こうして、一人で蹲っていると、嫌なことばかりを考えてしまう。そんなの全部思い過ごしで、考えすぎで、本当になんでもない、家の事情の可能性だって、むしろその方が高いくせに。


「──蒼」


「あか、ねっ!?」


 ──パシッ、と、額を弾かれた。

 ひりひりと痛みが収まりきらずに痛みの余韻がある。


「……なんで急にデコピン?」


「考えすぎって表情してた。あとシンプルにソファを一人で占拠しないでくれる? 邪魔」


「そ、そんな言い方……」


 ……けど、家族とはいえ他の誰かに察されるほど表情に出ていたのは良くないだろう。こういったすれ違いや喧嘩から同棲ってのは簡単に崩壊へと向かっていくものだ。家族だから同棲というのは正しい表現でない気もするが。


「何考えてんのか、ほんといっつもわかんなくて気色悪い。……それで、何かあったの?」


「ん〜。ちょっと、……と、とも、友達と」


「友達ってのが十数年できこなかったから言葉にするの詰まるの、キモいよ」


「それで友達とちょっと……いや、揉めたんじゃないんだけど、なんか俺のせいかなーって思うことがあって」


「考えすぎだよ」


「そうかなぁ。そうかも」


 凄い、さすが朱だ。ほとんど内容を話していないのにアドバイスしてくれる。これが兄妹間に発生するテレパシーのようなものなのだろうか。本当に、この妹はどれだけ俺を救えば気が済むのだろう。一生その気は済まなくていいよ。


「……ま、蒼ってば誰かの感情を察するのは得意なくせしてなんでそうなったかの過程を共感するのは苦手だからね。そうやって嫌でも勘ぐっちゃうのは、昔っからの癖だ。でも、世の中そんなに誰かのせいで回ってないよ。──個人的には、もっと世界は誰かのおかげで回っててほしい」


「誰かの、おかげ」


「おかげさまで、ってね。だから、自罰的な考え方やめなよ。もしかしたらその友達ちゃん? くん? も、蒼のおかげで救われた可能性だってあるかもでしょ? 心なんて読めないんだから、その可能性だって誰にも捨てきれないはずだよ」


「そう、かも……」


 心が読めるヤツは、実在した。人間ではなく、妖怪だったが。──けど、それは別に俺じゃない。そういった生物がいると言うだけで、俺ではないのだ。俺だって今から今更ながらに犬猫になりたいだとかどうやっても無理なように、不可能だ。


「……ありがとう、朱。ちょっとスッキリした」


「いいよ。このお礼は今日の夕飯の後片付けで」


「わかった、とりあえず食洗機に突っ込んどくね」


「頼む。私はこれからこのちょっとお高い三百円するカップアイスを完食しなければならないというタスクがあるので」


「あはは」





 桜から連絡が入って数日、というより五日後。ついに念願の北海道への旅の当日になった。俺の場合はまず神社に向かって学校前に転移? して、そっから更に空港に向かわないといけない。空を飛ぶ妖怪がいるからと言って航空技術が進歩しなかったとかそんなことはなく、普通にあるらしい。


 事前にチケットを取ってくれたのは全て麗で、旅行のプランを決めたのは葛、そして頼りになる二人にだいたいを任せてほぼ何もしなかったのが俺だ。いや、やろうとは思ってたの。でも予約が可能となるその日になった途端に全てを二人は終わらせていて、出る幕がマジでなかったのだ。

 だから、断じて俺が旅の前に準備しないやつなわけではない。本当に。家族旅行じゃいっつも俺と朱で計画を立ててるし。


 心のなかで言い訳を立てながら神社の鳥居を跨ぐとちゃんと学校の前に転移? して、そこから少し移動して正門に行けば麗と葛が準備万端と言った姿勢で待ち構えていた。


「ごめん、待った?」


「今来たところだ、焦んなくて大丈夫」


「わー、葛ってばイッケメーン。ま、確かに時間ぴったりで蒼を責めるのはお門違い……まあボクも葛も十分前にはいたけどね」


「ごめん……なんか飛行機で食べるお菓子を奢るよ。グミとか、チョコとか」


 いつものように麗からのチクチク言葉を受けつつ、そのまま学校に一番近い駅に向かっていく。その電車で都内をぐるぐる円を描くように回っている沿線に乗り換えて、そっから更に空港に通っている電車に乗り換えて、フィニッシュだ。乗り換えに一度もミスらなかったとしても二時間ぐらいはかかるので早め早めの行動が大事だろう。


「よーし、それじゃあ向かおっか! ヘイ、麗! 道を教えて!」


「誰がバーチャルアシスタントだよ」




夏休み編、開幕! 今回はイベントが結構ある予定です!

更新ペースを維持したままいい感じにやっていきたいって思ってます! 思ってはいるんです!

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