小咄其の弐拾八 『魔法使い堀田半平』
ここはとある魔法学校。生徒の堀田半平ことハンペー=ホッターくんは学友たちと夏休み前の教室で歓談していた。
「しかしこの学校、生徒がうじゃうじゃいよるなー。こいつら皆魔法使いになるっちゅうんかい?」
「いや、けっこう出口は狭いらしいで〜」
赤毛の友人が言った。
「せやなー、こんだけぎょうさん魔法使いおったらかなわんわ。…あ、でも」
堀田くん、丸い眼鏡をくいっと上げる。何か思いついたようだ。
「わしら全員で魔法つこたら、世界なんかあっちゅー間に思い通りに出来るんと、ちゃうやろか?」
「うんうん」
赤毛も乗り気でうなずく。
「アホなこと考えんとき。ほら、スネーキー先生が来たで!」
しっかり者の堀田くんのガールフレンドがよからぬ企みに水をさす。三人が席につくや否や、先生が現れた。
「えー、皆さん、夏休みを前に課題を出します。みんなが一人前の魔法使いになる大切な試練です」
無表情な先生はそう言って皆にリング状の物を渡し、首に付けるよう促した。
「我々魔法を使える者は世間から見れば異分子です。昔から魔女狩りの例もあり、やっかい者なわけですな。じゃあ、何故我等は生き延びていられるのか?」
皆、休み前のお説教を興味なさげに聞いている。スネーキー先生はさらに続けた。
「魔法でうまいことをやろう、と考える者を駆逐するためです。
さあ、今から魔法合戦です。逃げようとした者はリングに付いている"愚者の石"が爆発する仕掛けになっています。君たちは"秘密の部屋"の"囚人"なわけ。なはははは」
スネーキー先生はたいして面白くもなさそうに笑った。
「な、なんやっちゅーねん…」
堀田くんをはじめ全員が絶句する中、先生は首をカクカク揺らし、なはなは笑いながら言った。
「では、BR(バトル=ロワイヤル)法、すたーと」
<おしまい。>