047 森都ユリゼン
「見えてきたな。あれがユリゼンか。」
「うわぁ、おっきいね。」
ハヤトとセイナはついに森都ユリゼンへと到着した。
森都の中心には巨大な世界樹がそびえたっている。世界樹の頂点は雲の上にあり、下から見てとることは出来ない。胴囲は約20㎞を超えており、規格外の大きさの樹がそこにはあった。
その世界樹を中心として街がつくられていた。樹の付け根に王城があり、城下町は円形に展開されている。直径約7㎞ほどの巨大な城下町を覆うように、20mほどの城壁が街を覆っていた。
街には四方角に門があり、その中の西門から街へと入る。
「この馬車のまま、王城へと向かわせていただきます。服装を整えておいてください。」
御者の言葉に従い、自分の衣装のチェックをする。
「とはいっても、冒険者用の装備だけどな。」
「まあ、仕方ないよ。」
セイナが苦笑する。
ガラガラと音をたてながら馬車は進んでいった。
「冒険者ハヤト、セイナ両名、お連れしました。」
「入れ。」
扉の向こうから聞こえてきたのは、女性の声だった。
ハヤトとセイナは王城の案内人へとつられ、謁見の間に案内されていた。
「失礼します。」
謁見の間は、とても大きな空間だった。玉座へとたどり着くまでの回廊の左右には貴族が控えており、そして10段ほどのわずかな階段の上に玉座があった。そして、その玉座に座っているのが―――
「私がアーカイヤ森国女王のアリア=フューレン=アーカイヤだ。このたびはわざわざ森都まで来てくれて感謝する。」
開口一番、女王が2人への感謝の意を述べた。
その言葉に周囲の貴族がざわつく。
「もったいないお言葉です。」
そういうと同時に、ハヤトとセイナは片膝をつき、謁見のポーズをとる。
「面をあげよ。」
その言葉通り、2人は顔を上げる。
女王の顔は烏帽子から垂れ下がっている幕によって見ることができない。
ただその雰囲気から、とても凛とした、美しい女性だというのは分かった。
ハヤトが女王の雰囲気に見惚れている間、2人の功績が隣にいた執事のような男に読まれている。
それは5分以上続き、そんなに功績あげたっけな?、と二人が思っている頃に…
「両名、なにか欲しい褒美はあるか。」
唐突に女王が告げた。
「何なら爵位でも構わんぞ。」
その言葉に、2人が驚いていると…
「女王様!先ほどから、その2人に対して甘すぎるのではないでしょうか!低俗な冒険者ごときに感謝の意を述べ、あげく爵位まで!いくらなんでも…、
「静かにしたまえ、ネル子爵。」
貴族列の末端――、おそらくもっとも位が低い貴族だろう、ネル子爵と呼ばれた人物が立ち上がって文句を言ったが…
「ここは公共の場だ。意見は後で言いなさい。」
先ほど二人の功績を述べていた執事のような男に注意され、ネル子爵は歯ぎしりしている。
「……後で応接間に来い。この場はここで終わりにしよう。」
気まずくなった雰囲気を察してか、アリア女王はそう言った。
「さて、改めて自己紹介しよう。女王のアリア=フューレン=アーカイヤだ。先ほどはうちの子爵が済まなかったな。」
応接間にいるのは、女王、ハヤト、セイナ、そして先ほどの執事に、護衛が2人だ。
「いえ、とんでもありません。Cランク冒険者のハヤトです。」
「お、同じくDランク冒険者のセイナです。」
セイナがちょっと緊張気味に挨拶した。それを見て軽く微笑みながら、
「ネル子爵は新参でな、根は悪いやつじゃないんだ、許してくれ。」
「いえ、大丈夫です。気にしてませんし。」
ハヤトが応対する。
すると、女王は烏帽子をとって…
「それに、帽子をかぶったままというのも失礼だったな。」
綺麗、華麗、美麗、そんな言葉じゃ足りないくらい、女王は美しかった。
世界最高の美女と名高いアリアを目に、ハヤトの心は……
バチィッ!!
そんな音がアリア女王の意識の中で聞こえた。
「ほぅ、私の魅了を弾くとはな、中々やるじゃないか。」
「いえ、それほどでもありません。」
ハヤトと女王が黒い笑いを浮かべる。
「女王様!もし彼が魅了にかかってしまっていたら、どうしていたんですか。」
隣に控えている執事が諌めようとするが、
「なに、実力を測ってみただけさ。これが並のCランク冒険者なら一瞬で魅了されていただろう。それより、お前も自己紹介したらどうだ。」
「む、これは失礼しました。執事のジェームズと申します。」
ジェームズが一礼した。
「あ、よろしくお願いします。」
セイナとハヤトが答えた。




