045 七大罪之魔装・強欲
黒く、赤く、赤黒い魔力の奔流が、ハヤトを囲う。
「あああああああああああ!!」
魔力が、うねりをあげる。
ガイは、アイデクセ=ロードは、逃げていた冒険者は、悪魔を垣間見た。
『ガイさん…。早く逃げろ…。』
ハヤトの声と、先ほどの悪魔の声。
二つの種類の声が、ガイにそう告げた。
『おれの、理性があるうちに、早く…。』
「……死ぬなよ。」
頷いたガイは、何人か人を呼んだ。
そして気絶しているSSランク冒険者たちを担ぎ、その場を去って行った。
(情けねえが、この場はあいつに任せるしかねえ…。頼んだぞ…。)
『逃がして、いいのかよ?』
ハヤトはアイデクセ=ロードに向かってしゃべりかけた。
『まあ、追おうとしても、させねえけどな。』
人語を理解できているか分からないが、ハヤトは続けた。
ガイ達が逃げている間も、ハヤトが喋っている間も、アイデクセ=ロードはずっとハヤトを見ていた。
ハヤトだけを倒さなければならない敵と見ているのか、一向に動く気配はない。
『……気づいていないとでも思ったのか?』
否、アイデクセ=ロードは何もしていなかったのではない。
ハヤトやガイに気づかれないように、周囲のアイデクセ達から力を集めていた。
周りのアイデクセ達は表面上変わらないように見えるが、どんどん体力が減っていっている。
だが、ハヤトはそれを見抜いていた。
『悪魔の力、見せてやろう…。』
[強欲]
「グルルゥッ!?」
アイデクセ=ロードが驚いたような声をあげた。
無理もないだろう。アイデクセ=ロードの、周りのアイデクセ達から力を集めるというスキルはたった今、使えなくなったのだから。
アイデクセ=ロードの、アイデクセ達から力を集めるスキルの名は、【眷属之掟】。自分より格下の、同種族から、生死にかかわらず、力を集めることができる。死んだアイデクセから得られる魔力は微々たるものだが。それが数十、数百ともなれば話は別だ。生きているアイデクセからは死ぬまで力を吸い取ることができる。
対して、ハヤトが使った技。これは、【七大罪之魔装】がもつ、【特性】による技だ。【七大罪之魔装】はみな、一つの【特性】をもつ。【七大罪之魔装・強欲】の特性は、【相手のスキルを消し去る】だ。
『さて、やろうか。』
「グオオオオオオオオオッ!!」
ハヤトとアイデクセ=ロードの戦いが、始まった。
『……、氷の銃弾!』
セイナは撤退しながら、違和感を感じていた。
いや、違和感を感じたのはセイナだけではないだろう。
(……アイデクセ達が、弱くなってる…?)
周りの冒険者たちも、手応えのなさに、少なからず動揺しているようだ。
その代わりといってはなんだが、アイデクセ=ロードの魔力が、高まっているような気がしていた。
(嫌な感じね…。ハヤト君、頑張って…。)
祈ることしかできない自分の力不足を感じながら、セイナは撤退戦を続けた。
『はああああ!』
「グオオオオゥ!!」
ハヤトの刀、【宵時雨】と、アイデクセ=ロードの爪が交差し、火花が飛び散る。
お互いが繰り出す一撃一撃は超強力で、刀と爪がぶつかり合う度に、空間が揺れる。
揺れた空間は周囲を破壊し、1人と一頭の周囲はとんでもないことになっていた。
一見、互角に見える戦いだが、その実はそうでもない。
技量の上ではハヤトが上といえるだろう。
だがしかし、相手はSSSランクモンスターだ。
アイデクセ達から奪った魔力と、圧倒的な体力がある。
このままでは、ハヤトの体力が尽きてしまうだろう。
(いつもなら体力負けなんてしないんだがな…。)
心でそう悪態をつきながら、ハヤトは刀を振るう。
(マモン…。おれの自我を奪おうとしてきやがる。)
悪魔というのは、基本的に悪だ。
ハヤトに装備され、一度は従ったものの、隙あらば体の主導権を握ろうとしている。
ハヤトはアイデクセ=ロードと戦いながら、精神ではマモンと戦っているのだ。
いくらハヤトといえども、肉体と精神で同時に戦っているとなると、体力の減りも早くなるというものだ。
『分が悪い、か。なら、さっさと決めさせてもらうぞ。』
【魔煌剣】と、【七大罪之魔装】が合わさって、撃てる技。
いうならば、合体奥義。
『神に贖罪しろ――――――。』
【宵時雨】に、赤黒い魔力が集う。
『罪之剣・強欲』




