044 トカゲの皇帝
キュウカは呆然と立ち尽くしていた。
ポリゴン片となっていくプロペンの死体をただただ眺めている。
普段快活であった少女の心は、案外脆かったようだ。
「ちっ、聞こえてねえな。やるぞ、セイナ!」
「分かったわ。」
そう言ってハヤトが駆け出す。
「闇剣•闇時雨」
【宵時雨】は刀身の黒をさらに濃くし、闇の力を宿らせる。
超高速で繰り出される突きに、ジェネラル=アイデクセはただ打たれるだけだ。
『氷の精霊、我が魔力にこた……なに?!
セイナも追撃しようとするが、その時にアイデクセ=ロードの復活が起こった。
セイナもハヤトも、ジェネラル=アイデクセでさえも、アイデクセ=ロードを見ている。
「なんだあれは…。」
「あれが、アイデクセ=ロードじゃないかな?」
ハヤトとセイナも伝わってくる圧力を肌で感じている。
(あいつはヤバイ。俺がやらねえと…っ!)
ハヤトがすぐさま向かおうとするが、ジェネラル=アイデクセがそれをさせない。
「クソったれ…。そこを退け!」
ハヤトはジェネラル=アイデクセに斬りかかった。
アイデクセ=ロードの復活を見て、SSランク冒険者達は瞬時に動き出す。
すなわち、新たな強敵を速攻で殲滅するために。
「我々は、もう魔力が残っていない。」
「くそ、おれだってそんな力残ってねえよ!!」
悪態を突きながらも、カルドーラは槍で攻撃をしかける。
同時にレイラムも魔法で援護しようとするが…
GUUUULOOOOOOOOO!!
アイデクセ=ロードの巨大な咆哮に思わずたじろいでしまう。
その隙を見逃してくれるはずもなく、アイデクセ=ロードは攻撃に移る。
最初に狙われたのは…《海神の杖》だ。
尻尾による薙ぎ払い、ただそれだけだ。
しかし、先ほどまでのキング=アイデクセとは段違いのスピードと威力だ。
咄嗟に杖でガードしようとするも、四人もろとも吹き飛ばされてしまった。
更に追撃しようとするアイデクセ=ロードだったが、レイラムとカルドーラが攻撃して注意を向かせる。
「風突•十二連ンン!!」
「一………ぅぐう!!
二人のうちまず攻撃されたのはレイラムだ。
魔法を唱えようとした瞬間に腕で攻撃された。
レイラムもまた吹き飛ばされた。
「チクショ…っ!」
カルドーラが一人で抗えるはずもなく、槍技の途中で吹き飛ばされる。
「う、うわあああっあああ」
「逃げろおおおおおお!」
その様子を見ていた冒険者達が一斉に逃げ出す。
SSランク冒険者が1分もかからず戦闘不能にされたのだ、無理もないだろう。
だがしかし、アイデクセ=ロードの追撃は無慈悲に襲いかかる。
(クッソ、あばらに、左足、それに肩までやられてやがる…。動けねえ…。)
カルドーラは必死に手足を動かそうとするも、思い通りに行かないようだ。
(すんません師匠…。おれはここまでみたいです。)
カルドーラは心の中でジークフリートに謝りながら、意識を落とした。
GUOOOO!!!
アイデクセ=ロードの覚醒で勢いづいたアイデクセ達も、冒険者達に襲いかかる。
戦意を失った冒険者達は、次々と命を散らして行く。
「雷鳴ノ斧!」
「火炎ノ斧!」
そんな中で、アイデクセ=ロードに立ち向かったのはガイと《歴戦の剣》だ。
「俺らが時間を稼ぐ。その間に逃げろ!」
「他のS、Aランク冒険者は道を切り開く役だ!早く行け!」
ロイゼとガイはそういった。
「ウィスプ、ロコモ!いくぞ!ここがおれらの死地だ!」
「地獄の底まで付き合ってあげるわ!」
「…もうちょっと長生きしたかったけどなあ。」
ロコモも悪態を突きながらも杖を構える。
対峙してみて、圧迫感にさらされることで、改めて理解した。
(さて、何秒かせげることやら…)
「くっそ、くっそ、くっそおおおお!!」
一方ハヤトは、アイデクセ達の相手にかかりきりになっていた。
冒険者達が逃げていったせいで、標的を失ったアイデクセ達が向かってくるのだ。
「あああああああああああ!!!」
雄叫びを上げながら、ハヤトは斬り続ける。
(あんなの相手にマトモに戦えるのはおれだけなのに……!!)
焦燥に駆られながら、ハヤトはアイデクセ=ロードを目指して歩を進める。
無限にも思えるアイデクセ達を斬り倒しながら。
その頃セイナは、キュウカと一緒に逃げていた。
「キュウカさん!しっかりしてください!」
「…私も死にに行く!離して!」
先ほどからキュウカがこの調子なので、無理矢理引きずっている感じになっていた。
パーティーメンバーの2人と一緒に止めているものの、キュウカは馬鹿力なので苦労しているうようだ。
(ハヤト君…死なないで…。)
心の中ではハヤトの無事を祈っていた。
ハヤトはようやく、アイデクセ=ロードに辿り着いた。
目にした光景は、残酷なものだった。
「ちくしょう…、なんだよこれ……っ!」
アイデクセ=ロードから少し離れた死角に転がっているSSランク冒険者達。
満身創痍のガイ。
そして、たった今散った、《歴戦の剣》の3人のポリゴン片。
ハヤトの中で、何かがきれた。
(何が神だ。こんな力があったって、結局何も、救えねえっ!!)
(力が、力さえあれば!!)
そして、ハヤトの右手の指輪が赤黒く光り出す。
指輪の名は、【七大罪之魔装•強欲】。
そして悪魔の声を聞く。
『我、大悪魔マモン。主の【強欲】に応えよう。』
悪魔が、嗤った。




