042 歴戦の剣
キング=アイデクセが怒りの咆哮を上げた―――
それはつまり、相手を追い詰めているということ。
しかし、その事実に魔物たちは奮起する。
キング=アイデクセの怒りは、他の魔物の動きを格段に良くさせた。
「ちっ、また、厄介なっ…!」
「ハヤト君、後ろ!」
「分かってるよ!」
そんな会話をしながら、ハヤトとセイナの2人はグロース=アイデクセの殲滅を行っていた。
「闇剣・影斬」
ハヤトの剣技によって後ろから迫っていたグロース=アイデクセは一瞬で四散する。
奥義を使わないまでも、神としてのハヤトの馬鹿げたステータスは、Cランクモンスターを一撃で葬るのに充分だった。
ハヤトのスキルを感嘆しながら見ていたセイナは、後ろから迫る存在に気付かなかった。
「グルッガアアアア!!」
「……きゃあっ?!」
迫る気配に気づいたのか、セイナは悲鳴を上げて距離をとる。
迫っていたのはジェネラル=アイデクセだ。深手を負っているようで、怒り状態に陥っている。
(丁度いいわ…。ランクA相手にどれだけ戦えるか、試してっ…?!)
セイナはそう考えていたが、数秒後に自分の考えが甘かったことを知る。
一撃、たった一撃。
ジェネラル=アイデクセが放った、尻尾を振った一撃。
その一撃をセイナの眼は、全く捉えられなかった。
杖を構えた状態のままのセイナに、ジェネラル=アイデクセの尾が迫る―――。
「水剣・飛水牙!」
ジェネラル=アイデクセの尾がセイナに命中することはなかった。
突如、ジェネラル=アイデクセの尾が蒼い剣に切断された。
セイナは瞬間的にハヤトが放ったものだと理解した。
どうやら、グロース=アイデクセの殲滅をしながら、斬撃を放ったようだ。
援護を確認したセイナは、安心した。
安心してしまった。
だから、ジェネラル=アイデクセの二撃目に、気づけなかった――。
グオオオオオオォォッ!
ジェネラル=アイデクセは、セイナを仕留めた、と確信したように見えた。
振り返ったセイナの顔は驚愕に染まっている。
――――キィンッ
しかし、またしてもその一撃がセイナに届くことはなかった。
「嬢ちゃん、迷惑かけたな。」
そんな声をセイナは耳元に聞いた。
そして……
「光剣・大聖剣!!!」
巨大な光の奔流がジェネラル=アイデクセを飲み込んだ。
いや、奔流に見えた、巨大な光の剣だ。
いうまでもなく、ハヤトの仕業だ。
「セイナ、大丈夫かっ…!」
ハヤトがうろたえたような声でセイナに近づいてきた。
「う、うん。ありがとう…。」
「ああ、それと、この人たちにも礼を言わないとな。」
ハヤトはそういうと、セイナの後ろにいた3人の方を向いて頭を下げた。
「セイナを助けてくれてありがとうございました。」
セイナも慌てたように頭を下げる。
「あ、ありがとうございました!」
「なあに、いいってことよ。元より、あいつを逃しちまったのは俺らの責任だしな。」
「それより、自己紹介が先でしょ。」
「ああ、そうだな。」
3人のうちの2人がそういうと、改めたようにハヤト達の方に向き直った。
「俺の名はロイゼ!Sランクパーティ≪歴戦の剣≫のリーダーをやってる。まあ、肩書は戦士ってとこだな。よろしくな。」
「私はウィスプ。魔法使いよ。よろしく。」
「僕はロコモ。同じく魔法使いで、サポート系の魔法が得意です。よろしく。」
3人の自己紹介を聞いて、ハヤトは軽く驚く。
こいつらできるな、と思ってはいたがまさかSランク冒険者だったとはな、といった感じなんだろう。
「おれはハヤト。Cランク冒険者だ。」
「わ、わたしはセイナといいます。Dランク冒険者です。改めて、さっきはありがとうございました!」
セイナとハヤトも同じように自己紹介した。
「おいおい、あの光の剣、一撃でジェネラル=アイデクセを葬る威力だったぞ。あれで、Cランクだってのか?」
「…今のとこは、ね。それに、そっちが随分痛めつけてたみたいじゃないか。横取りしたようで悪いな。」
「がっはっは。なあに、気にすんな。ガールフレンドのピンチとなりゃあ、即座に敵を倒しちまうようなこともあるだろ。」
「「ガ、ガールフレンドォ!?」」
ロイゼのそんな言葉に、ハヤトとセイナは全く同時に声を上げた。
「ん?なんだ違ったのか?若い男女2人となりゃー、てっきりそういうもんかと……いてっ。」
「余計なお世話よ。」
中学生みたいな目をしてロイゼが話している所を、ウィスプが杖で殴った。
ロイゼが恨めしそうな眼でウィスプを睨んでいるが、ハヤトとセイナは内心
(グッジョブ!)
と思わずにはいれなかった。




