040 開戦
「みんな、今日はよく集まってくれた。今日の戦いでは、おそらく死者が出るだろう。それも何十人、何百人も。相手はそれぐらい危険だ。しかし、我々は立ち向かわなければならない。それこそが、冒険者に課された使命だからだ。」
ガイがギルドを代表して演説している。
場所はピューリトンを南に20㎞ほど行った、くぼみがある岩場だ。
冒険者約1200人が、ガイの演説を静かに聞いている。
Dランク以上の精鋭だけあって、皆が凛々しい顔つきだ。
国中から可能な限り集められた冒険者たちだ。
残念ながら亜人の大陸にいるXランク冒険者や、首都ユリゼンにいたSSSランク冒険者パーティはいない。
だが、元SSSランク冒険者であるガイを始めとして、ピューリトンを拠点としていたSSランク冒険者パーティ、わずか四日の準備期間ながらも駆けつけてくれた数人のSSランク冒険者がいた。
「だがしかしッ、我々がこれまで強くなってきたのは何のためだッ!そう、こんな時に戦うためだ!我々が負けるということは同時に、何十万人もの市民の犠牲を意味するッ!」
「いいか野郎どもォォッ!勝つぞォォォォッッ!」
『ウオオオオオオオォォォォッォォッッ!!!』
そしてガイが下がり、ギルド副支部長と思われる男が檀上に上がった。
「これより、主な作戦を指示します。まず、グロース=アイデクセの大群についてですが、C・Dランクの冒険者の方々が中心に討伐を行ってください。数の利はこちらにあるので、二人一組で倒して行ってください。」
これに対し、招集された冒険者の約6割以上がうなずく。
「次に、ボス=アイデクセですが、Bランク冒険者の方々に主に相手をしていただきます。人数と相手の数がほぼ同じなため一対一のようになってしまいますが、奮起してください。」
これに対して数十人ほどの冒険者が、何かを決意したような面持ちで頷く。
「そしてジェネラル=アイデクセですが、確認したところ12頭確認できました。これらにはA・Sランク冒険者の方々に相手をしていただきます。こちらもほぼ一対一になってしまいまずが、Sランクの方々は相手を倒した後に救援に向かってください。」
これに対し、約十人ほどがうなずく。
「最後に、キング=アイデクセですが、SSランクパーティ≪海神の杖≫・SSランク冒険者のレイラム様・カルドーラ様に相手をしたいただきます。」
その言葉に、にわかに場がざわめいた。
「カルドーラって、あの、聖域でジークフリート様とグリーンエメラルドドラゴンを捕獲したっていう?!」
「ジークフリート様の一番弟子…」
「SSSランク昇格は確実と言われている…。」
カルドーラ・リ・カディウス。
名門カディウス家に生まれながら、大きな武術の才能をもち、青年になったころには負けなしだったという。そして有頂天となり悪に手を染めようとしていたころ、Xランク冒険者・ジークフリートに出会ったといわれている。
ジークフリートに完敗したことで改心して弟子になったといわれており、聖域にてグリーンエメラルドドラゴンを2人で捕獲した話はあまりにも有名である。
「静粛にッ!」
ガイの一声で、ざわめいていた場が再び静かになった。
「おそらく、残り一時間程で群れが現れます。その時、初撃はハヤト様・セイナ様の両名にお願いします。」
副支部長が言葉を引き継ぎ、話した。
その話に、再び場がざわめき始める。
「誰だよ…。その2人。聞いたことねえぞ。」
「いや、確か、ギルドの壁を試験で破壊したやつがそんな名前だったような…。」
「まじかよ。あそこの魔力壁すっげえ厚いぞ。」
「静粛にッ!」
再びガイの一声で場が静かになった。
「開戦に備えて、各々準備をしてください。それでは、解散!」
副支部長はそういうと、檀上を下りた。
時は遡ること五時間程前、ハヤトとセイナは馬車の中にいた。
開戦地へ向かう馬車の一つで、ガイと話をしていた。
「なあ、ハヤト。お前にやってほしいことがある。」
ガイが話を切りだした。
「…なんすか?」
「ギルドの壁を壊したあの一撃、あれを初撃にぶっ放してほしい。」
「…別にいいすけど、そりゃまたなんで?」
「あれほどの威力の一撃だ。いい牽制にもなるし、大きなダメージを与えられるだろう。」
「…なるほど、それなら、いい案がありますよ。」
「…なんだ?」
「セイナも、トンデモ威力の魔法が使えるんです―――――
ガイはその会話を思い出しながら、瞑想していた。
「き、きたぞおおおおおお!!アイデクセの群れだ!」
「六百、いや、七百はいるぞ…っ!」
そんな声を聞き、ガイは目を開けて、武器であるハルバードを手に取った。
アイデクセの群れと冒険者達が対峙する。その直線距離、およそ100m。
そして、2人の冒険者が前にでた。
直線距離はどんどん縮まる。
80、70、60、50…
そしてアイデクセの群れは突進を始めた!
高速で近づいてくるアイデクセの群れに2人の冒険者は…、
「火剣奥義・火の旅」
「火轟氷滅」




