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アブソリュート・ディーライゼ  作者: 青空テツ
第3章 エルフ大陸編
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039 代償



「アイデクセの群れだと!?それは真実か?!」


「間違いありません。中にはキング=アイデクセの姿もありました。


「……遭遇して無事だったのか?」


「いえ、ハヤト君の遠見の魔法で確認しました。」


「……そうか、群れの詳細を教えてくれ。」


「はい。グロース=アイデクセがおそらく数百以上、ボス=アイデクセが数十、ジェネラル=アイデクセが十匹ほど、そして、キング=アイデクセが一匹、確認できました。」


「ランクC以上のモンスターの大侵攻か…。こんなの千年前以来だ…。」


 ガイがこめかみを押さえながらつぶやいた…。

 その呟きに気になるところがあったのか、今まで黙っていたハヤトが口を出した。


「千年前にも似たようなことがあったのか?」


「……ああ。第二次死炎龍襲来戦と呼ばれた戦いがあったんだが、その戦いの始まりが、アイデクセの大規模侵攻だったと言われている。史書によると、当時は5万人以上の死者を出した未曾有の大災害だったそうだ。」


「…その千年前の大侵攻は、どうやって終わったんだ?」


「詳しいことは余り分かったいないが、世界中の高ランク冒険者が集まり、総力戦になっていたと言われている。まあ今回は、アイデクセ=ロードがいないだけマシだと考えるべきだな。」


「そのアイデクセ=ロードってのは強いのか?」


「アイデクセ系統の魔物の最上位だ。ランクはSSSだな。千年前はこいつが大災害を及ぼした。当時のXランク冒険者2人がかりでやっと仕留めたらしい。それも1人は相討ちでな。」


 ハヤトは聞きたい事を全て聞いたのか、再び黙った。


「せめてもの救いはやつらの進行速度が遅いことだな。おそらく決戦は四日後…。それまでに戦闘準備を整えないとな。」


「緊急招集に近隣の町村の避難ですね。それに国中からの物資の運搬…。忙しくなりますね…。」


「前線にはおれたちギルド職員もでるが、避難は主におまえたち冒険者にやってもらうことになる。頼むぞ。」


「分かりました。できる限りのことはさせていただきます。」













『緊急依頼:アイデクセ殲滅戦  参加可能ランク:D以上

 討伐対象:グロース=アイデクセ・ボス=アイデクセ・ジェネラル=アイデクセ・キング=アイデクセ

 報奨金:上記より左から一頭30000z、100000z、500000z、20000000z』










 依頼を見た冒険者たちは驚く。

 慌てて避難する者や、準備を整える者。

 

 そして、各地から高ランク冒険者が集まる。

 緊急招集のために超特急馬車や、対海竜用軍船も使用され、大陸中から冒険者が集められた。

 

 低ランク冒険者による避難誘導もつつがなく進む。

 不測の事態が起こることもなく、着々と戦いの準備は進む。






 そして、決戦の前日。

 ハヤトとセイナはカフェで話をしていた。


「なあ、セイナ。魔法について教えてくれないか。」


「…どうゆうこと?魔法ならハヤト君の方が詳しくない?」


「確かに合成魔法のような知識はあるが、上位属性なんてものは3200年前にはなかったんだ。その辺について、な。」


 ハヤトはそう言った。

 3200年前は図書館で本を読みふけったりしたものだが、それらは全て過去の事柄だ。


「…分かったわ。まず、魔法の属性は全部で8つね。火・水・氷・土・雷・風の下位属性6つと光・闇の上位属性。それとは別に治癒魔法もあるわね。」


「…待て、8つ?空の属性はどうした?」


「……空?そんな属性、聞いたことないけど…。」


 二人とも首をかしげた。

 

「…この3200年間になくなったのか?」


「そうかもしれないね。」

 

 ハヤトは不思議そうにしているが、空の属性の魔法は神、そしてZランクの魔物にしか使えないと言われている。

 それを知らないだけなのだ。


「それと、もう一つ。この世界には神はいないのか?」


 これこそがハヤトが真に聞きたかったことなのかもしれない。

 ハヤトは今までの旅で、一つの宗教しか見たことがない。

 

 それこそが、ソラミネ教だ。

 人智を超えた力を以て、世界を変えた神の宗教である。


 しかし、地球との違いにハヤトは疑問を抱いたのだ。

 一つの宗教しかないなんて、宗教戦争頻発の地球人からしたら驚きなのだ。


「…ああ、それは簡単よ。この世界にも大昔、それこそ何万年も前には神様がいたと言われているわ。神様たちは遊びで、自らの力の半分以上を使った魔物を作り出したのよね。」


「神はアホなのか。」


「…まあ、それは置いといて。それで、その魔物たちが神様を全部食べたらしいわ。その魔物たちがいわゆるZランクの魔物ね。」


「……なるほどな。そもそも信仰する神がいないってことか。」


「そうだね。流石に魔物を信仰するわけにはいかないから。そこで出てきたのがハヤト君だったんだよね。」


「なるほどね、ありがとよ。」


 そしてハヤトは一息つくと、少し真面目な顔をしてセイナに言った。


「なあ、セイナ。明日の戦いについて行っておきたいことがある。」


「…なに?」


「おそらく明日、死者を出さないのは不可能だ…。」





「――――――っどうして?」


「数百にも及ぶ魔物を一瞬で葬り去る魔法は、今のおれは魔力量不足で使えないだろう。」


「…3200年前の、大陸移動は魔法なんじゃないの?」


「そうだな。神化すれば可能かもしれない。けど、今は完全に人だ。3200年前(あのころ)は、半神半人だったから色々できたが、完全に神と人と使い分けられるようになった今じゃ、ムリだな。」


「……だったら、神化してよ。」


「………できないんだ。やろうとしても。三日前、群れを見つけたときはすぐに殲滅しようとしたが、できなかったんだよ。」


「………そんな!なんで!」


「おそらくそれが、3200年の長い眠りの、代償だろうな。」














 そして、戦いの日が来る。


 

 

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