037 セイナVSボス=アイデクセ
≪ボス=アイデクセ Lv60 Rank B≫
グロース=アイデクセの上位個体で、アイデクセの群れを率いていることが多く、単体で出現することは滅多にない。全ての攻撃手段においてグロース=アイデクセよりも強力であり、300kgを超える体重を利用した突進は岩をも砕く。また、1mほどもある尻尾から繰り出される鞭のような攻撃も脅威である。頭に小さな角があるのが特徴。
「…Bランク魔物か。セイナ、やれるか?」
ボス=アイデクセの突進を躱しながら、ハヤトはそう問いかけた。
「…やってみる。危なくなったら助けてね。」
「分かった。なら、任せたぞ!」
そう言うと、ハヤトはその場から大きく跳躍し、10mほど離れた。
(相手は岩のような体皮…、火魔法じゃ余り効果は見込めそうにない…)
続く相手の突進を躱し、セイナは少し多めに距離をとった。
『氷の精霊、我が魔力に応え、敵を撃て。氷の銃弾』
瞬間、セイナの杖から何十もの氷の弾が現れ、ボス=アイデクセに向かって放たれる。
ガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッ
半分以上は命中したが、さすがにBランク、これしきでは倒れない。
「ゥグオオオオオオオオオ!」
しかし、ある程度のダメージは入ったようで、大きな咆哮をあげた。
全身を見てみれば、筋肉が先ほどよりも隆起し、眼が赤く血走っている。
(怒り状態…。ランクB以上の魔物に見られる特徴ね…。冷静さを著しく欠く代わりに、身体能力が大きく上昇するっていう…。)
怒りに身を任せたボス=アイデクセは、再び突進を敢行した。
セイナは先ほどと同じように回避しようとするが…
「…ッッ、うぅっっ!」
ボス=アイデクセはそれ以上の速さだった。
セイナは突進を避けきれず、相手の体がかすり、体勢を崩した。
そして、体勢を崩したセイナに鞭のような尻尾による追い討ちが迫る!
セイナは咄嗟に盾を構えるが…
ズッドオオオォォォッンンン!!!
(こりゃセイナの負けだな。確かに試験でBランクのデザート・スコーピオンに狩ったが、魔力体にはそもそも怒り状態なんて概念はない。実際のBランク魔物はまだ早かったか。)
ハヤトが刀を抜こうとすると…
「待って!まだ、やれる…っ!」
セイナのそんな言葉が聞こえた。
盾はもう使い物にならないし、盾を持っていた左手も痺れているし、さっき吹っ飛ばされた衝撃で体のあちこちに傷がある。それに、背後にはハヤトが控えている。
(それでも、私が強くならないと意味がない!お母さんを超える冒険者になって、誤りに行くんだ!)
『氷の精霊、我が魔力に応え、敵を貫け。氷崩落』
しかし、氷の礫は当たらない。
最初よりも格段に速く動くボス=アイデクセは、礫の全てを回避した。
そしてまた突進をしかけてくるが、タイミングを合わせてセイナも避ける。
この膠着状態が15分ほど続いた。
しかし、もはや膠着状態ではない。
明らかにセイナの方が消耗している。
ボス=アイデクセは俊敏に動く上に、攻撃力も高い。Bランク魔物に恥じぬ体力もある。
対してセイナは、まだ有効な一撃を与えられていない。先ほどの傷もあるし、体力的に限界だった。魔力はまだ余裕があるが、このままではじり貧だ。
(くっ、やっぱりハヤト君に頼るしかないのかな…?)
その時、セイナの背後の茂みが動いた。
即座にセイナが振り向くと、そこには、
もう1匹のボス=アイデクセがいた。
「なんだとっ…!?」
これにはさすがにハヤトも驚いた。
(ちっ、最初から隠れてたのか…?!生命反応探知を怠るんじゃなかった!)
ハヤトも瞬時にセイナの元に駆け寄る。
「衝撃波!」
ハヤトが放った衝撃の魔法で、ボス=アイデクセ2匹は大きく後ろに飛ばされる。
「ハヤト君、わたし…。」
「分かってる。最初の方はお前にやる。後からきたやつはおれがもらうぞ。」
「…うん!」
「あと、ちょっと見とけ。ヒントをやるよ。」
ハヤトはそういうと、魔法の詠唱、そして魔力のコントロールを始めた。
両方とも必要ないのに、セイナに手本を見せるためだろう。
『空の精霊・闇の精霊、我が魔力に応え、古の合成霊波となりて、敵を喰らえ。
歪曲せし黒き闇 』
ハヤトの魔法によって小さな黒球が現れた。
1cmほどの小さな黒球はフラフラ進みながらボス=アイデクセへと向かう。
警戒しながら回避しようとしたボス=アイデクセだったが、
黒球は急に速くなった。
速度の変化に対応しきれなかったボス=アイデクセに、黒球が命中した。
そして命中した瞬間、
まるでそこには最初から何もなかったかのように、ボス=アイデクセの姿が消えた。




