034 ハヤトvs魔力竜
「こいつは驚いたな。あの嬢ちゃんは2属性持ちなのか。」
セイナの試験を見ていたガイがそう言った。
「これはおれも驚きました。火属性だけかと思ってましたよ。」
ハヤトも驚いているようだ。
「なんだ、相棒のことなのに知らなかったのか?」
「まーまだ浅い付き合いなんで。それより、2属性もちってどれくらい凄いんすか?」
「滅多にいないぞ。数万人に1人ってぐらいだろうな。しかも、おれが知る限りではそいつらは全員ギルドランク上位の実力者たちだ。」
「へぇ。じゃあセイナにもその素質はあるって事っすよね?」
「まあ、そうだな。」
ガイとハヤトが話していると、試験を終えたセイナがハヤト達がいる方に来た。
「ふー、疲れた。さすがにBランクって感じで、中々強かったわ。」
「お疲れ。じゃあ、おれの出番だな。」
「うん。頑張って!」
そう言って、ハヤトは席を立った。
「セイナって言ったか。中々見事な戦いぶりだったぞ。」
「…あ、どうも。ありがとうございます。支部長さんですよね?」
「ああ、自己紹介が遅れたな。このギルドの支部長のガイだ。ガイさんとでも呼んでくれ。」
「はい、よろしくお願いします。」
「まあ、座れよ。」
ガイにそう言われて、セイナは隣の席に座った。
「さて、次はハヤトの試験だが。お前さんはどう見る?」
「まあ、大丈夫だと思いますよ。何が出てきても。彼、強いので。」
「…随分とハヤトの力を評価してるんだな。相手は強いぞ。」
「まあ、見れば分かると思いますよ。」
セイナはそう言って前を向いた。ハヤトの試験の準備が完了したようだ。
「では、ハヤトさん。準備はよろしいですね?」
「ああ。」
ハヤトがそういうと、目の前に魔力がたまり始めた。
魔力の塊はどんどん大きくなっていき―――――――
緑の竜の形になった。
≪グリーンエメラルドドラゴン魔力体 Rank SS≫
大森林の奥地や聖域に生息する爬虫竜類の魔物の魔力体。緑の宝石竜の名を冠するこの竜は、レッドルビードラゴンと似て非なる存在。緑の宝石で覆われた背中はとても固く、もしその宝石を採取できれば莫大な金になるといわれている。風を使った攻撃を得意とし、竜巻のようなブレスを吐く。
「あれがギルド最強の魔力体だ。SSランクのドラゴン。それを見てもまだ勝ち目はあると思うか?」
ガイはセイナにそう言った。
「…楽に勝つと思いますよ。それよりも、ハヤト君以外にあんなドラゴンを捕獲できる人がいることに驚きです。」
「……楽に勝てる、ね。あの竜は、現役で世界最高のXランク冒険者が聖域で捕獲したドラゴンが元になってる。捕獲するときは相当の激戦だったらしいぞ。」
「まあ、やっぱり見た方が早いですよ。彼の実力は――――」
「ふーん、レッドルビードラゴンの仲間か。」
【万物理解】で敵の情報を得たハヤトはそんなことを呟いていた。
緑の宝石竜の容貌にも全くひるんだ様子は見られない。
「では、始めます。試験、開始!」
受付嬢のその声と共に、グリーンエメラルドドラゴンが動き出す。
一気にハヤトとの距離を詰め、巨大な腕を振り下ろした。
「GUOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
巨大な咆哮と共にハヤトに浴びせられた一撃は、なんなくハヤトの体を吹き飛したかと思われた。
「落ち着きのない野郎だな。」
しかし、ハヤトはしっかりとグリーンエメラルドドラゴンの腕を止めていた。指一本で。
「さあ、来いよ。叩き潰してやる。」
ハヤトのそんな挑発に乗せられたのか、グリーンエメラルドドラゴンはハヤトの指を振り払って大きく飛んだ。
そして、グリーンエメラルドドラゴンの口に大きく風が集まり出し…
ハヤトに放たれた。
「……そんなもんかよ。」
「火剣・気炎斬」
赤く染まった【宵時雨】の一振りによって、大竜巻は掻き消された。
ハヤトの【魔煌剣】と魔力体が合わさった【宵時雨】は、不気味な朱に煌めいている。
「【魔宵時雨】ってとこか。さて、そろそろ決着をつけようか。」
そう言ってハヤトは、ブレスを再び放とうとしているグリーンエメラルドドラゴンに【魔宵時雨】の切っ先を向けた後、抜刀の体勢に入った。
「火剣奥義・火の旅
」
ハヤトのそんな声と共に、【魔宵時雨】は大豪炎をあげた。
だが、先ほどより遥かに大きな竜巻を生み出したグリーンエメラルドドラゴンが、ハヤトより早くブレスを放つ!
「GUOOOOOOOOOOOOOAAAA!!!」
迫りくる大竜巻にハヤトは不敵な笑みを浮かべながら、
【魔宵時雨】を真横一文字に振り抜いた。
コォォォォオォォォォォ―――――――。
ハヤトが剣を振り抜いた先には、空気が流れ込んできている闘技場があった。




