030 プロローグ 邂逅
タイトル変えました。
忙しすぎて更新できない…
神こと、ソラミネ•ハヤトは目覚めた。
セイナとローレンの死別、覚醒したハヤトは、丁度その場面に出くわしてしまった。
周囲に無数に舞うガラス片を見て、ハヤトは瞬時に何があったかを理解した。
(くそ…誰かあのドラゴンにやられたな…。おれがもう少し早く目覚めていれば…)
ハヤトが心の中でどうにもならない後悔をしていると、村長が慌てたような声で叫んだ。
「君、早くこちら側に来るんだ!ドラゴンに殺されてしまうぞ!」
村長はハヤトにそう呼びかけるが、ハヤトはまるで聞いていない。それどころか、腰に差している刀を鞘から抜き始めた。
「クソトカゲが…。おかげで最悪の目覚めだ…。仕置きしてやる。」
瞬間、ハヤトから猛烈な殺気が溢れだす。意識の覚醒から肉体の覚醒までの一年間、イメージトレーニングだけでハヤトは覇気だけでなく殺気も完全にコントロールできるようになっていた。
ハヤトの殺気にあてられたレッドルビードラゴンは一転、警戒するような眼から怯えるような眼に変わっていた。
「君、はやく下がるんだ!」
ハヤトが殺気をコントロールしているため、殺気の影響を全く受けていない村長がハヤトに呼びかける。
が、もう遅い。
怯えを紛らわすためか、レッドルビードラゴンはハヤトに頭から突っ込んだ。直撃すればひとたまりもない一撃だ。
ドッゴォォォォォンンンッッッッッッ!!
その爆音を聞いたエルフ達は、今日2人目の犠牲者となった見知らぬ若者に憐憫の情を覚えた。あの巨体の突進を受けたのだ、もうすぐガラス片が舞い散るだろうと誰もが思った。
しかし、一向にガラス片は舞わない。エルフ達が首をかしげていると、土煙が晴れてきた。そして、エルフ達は驚愕の光景を目にした。
見知らぬ少年は顔色一つ変えずに、赤の宝石竜の巨体を片手で受け止めていたのだ。
≪レッドルビードラゴン Lv126 Rank SS≫
赤の宝石竜の名をもつ爬虫竜類。火山付近の岩山に生息している。15mを超える巨体を有しており、宝石のように赤く光る背中の鉱石が特徴。紅蓮の体躯と相違なく炎のブレスを吐く。竜族のブレスは魔法とは別物で、レッドルビードラゴンは魔法を使うことは出来ない。しかし、岩のように固い体と鋭い爪、そしてブレスだけで超強力な脅威となる。体は重いが、飛行することは可能である。
【万物理解】で敵の情報を得たハヤトは、軽い脱力感を覚えていた。それはすなわち、目の前の相手が取るに足らないものである、と。
「粋がるなよ赤トカゲ。おれが編み出した剣術ですぐに殺してやる。」
レッドルビードラゴンを片手で受けとめたハヤトは、一つ大きな深呼吸をした。そして、【宵時雨】を抜刀術の態勢で構えた。
「水剣奥義・水の旅」
瞬間、宵時雨は黒の刀身を輝かしい蒼に変えた。
そして、ハヤトは蒼の刀身を振り抜いた。
その場にいた者達の中に、ハヤトの剣の軌道を見切ったものはいない。
しかし、剣の軌跡だけははっきり見てとれていた。
赤の宝石竜の巨体には、無数の蒼の線が刻まれていた。
「グォォォォオォッッッッ!!!」
そして、赤の宝石竜は断末魔をあげ、無数のガラス片へと姿を変えた…。
誰もが驚きを隠せない中、セイナは咄嗟に鑑定キットに手を伸ばしていた。いつも活発に行動していたために癖がついてしまっていたのだろう。
そして鑑定キットをハヤトに向け、表示されたデータに思わず息を飲んだ。
名前:ソラミネ ハヤト
種族:人神
年齢:17
職種:元Xランク冒険者
そして、思わず口走ってしまう。
「神様……ッ!?」
思わず漏れてしまったその一声、自分の予想以上に大きかったセイナの声を、ハヤトは聞き逃さなかった。
(神…!?おれのことを一瞬で見抜いたのか…!?)
ハヤトは、何かカラクリがあるのだとは思ったが、結局なぜ自分が神だとバレたのか分からなかった。
そこで、直接聞いてみようという結論にいたった。
「対象限定睡眠魔法」
ハヤトがその魔法を唱えた直後、セイナを除くエルフ達は一斉に崩れ落ちた。そして、ハヤトはまた別の魔法を唱えた。
「絶対防御」
そして、エルフ達全員を囲むようにして透明の結界のようなものが張られた。
「さて、そこのあんた。ちょっと聞きたいことがある。」
ハヤトはセイナにそう言った。
「……みんなに何をしたの?」
「ちょっと眠ってもらっただけだ。人に聞かれたらまずい話があるんでな。」
「…そう。それで、聞きたいことは何?」
「あんた、おれの事を神様って呼んだよな。あれはどういう意味だ?」
「どういうって…。鑑定キットの結果を見て言っただけよ。」
「…鑑定キット?なんだそれ?」
「…知らないの??この鑑定キットを相手にかざしたら、相手の情報がある程度読み取れるのよ。名前と種族と年齢、それに職種の4つね。」
セイナは鑑定キットをハヤトに見えるようにかかげた。
「……そんなものが開発されてたのか。これはちょっとまずいな…。」
ハヤトはあごに手をあてると、何かを考え始めた。
2分ほど考えた姿勢のままのハヤトにセイナが声をかけようとすると、突如ハヤトが言った。
「なあ、もう一度おれを鑑定してみてくれ」
「…??」
セイナは言われた通りハヤトを鑑定してみた。すると、
名前:ハヤト
種族:人
年齢:17
職種:
「……そんな、鑑定結果が変わるなんてありえない。」
「やっぱり変わったか。これでOKだな。」
ハヤトは想像魔法で、鑑定キットによる鑑定に偽装情報を与えることに成功した。ソラミネハヤトの名は3200年前に広がっているので名字を消し、職種、種族共にバレるとまずいので、偽装した。
「……待って、あなたどうやってこれを…。まさか、本当に神様!?」
「そのことは他言無用だ。絶対におれの真の情報について口にしないでくれ。」
「……私からも聞きたいことがある。」
「なんだ。」
「神様なら、わたしのお母さんを生き返らせる事はできる?」
ハヤトはセイナから、今日あった出来事の一連の流れを聞いた。急に村が魔物の群れに襲われて、逃げている時にレッドルビードラゴンに襲われ、セイナの母親ローレンがセイナを庇って死んだこと。
「それで、お母さんを生き返らせることはできるの?」
「……結論から言うと不可能だ。おれの魔法は死者を蘇生させることだけはできないんだ。」
そう、ハヤトの想像魔法に唯一できないこと。それが死者の蘇生だ。
理由は単純だ。それは、ガラス片となって死んだ人が生き返る姿を、ハヤトは想像できないからだ。それに出来たとしても、莫大なMPを消費するだろう。それこそ、今のハヤトのMPじゃ到底足りないほどの。
「……そう、そうなのね。分かったわ…。」
再び目に涙を浮かべ始めたセイナは、しかし途中で涙を振り払って言った。
「あなたにお願いしたいことがある。」
「…なんだ?」
「私を、アーカイヤ森国の首都、≪森都ユリゼン≫まで連れていって欲しい。」
「……おれの旅に、着いてくると?」
「それが、あなたの真の情報を口外しない条件。」
(……どうするべきかな。ここで断るのは簡単だが、さっき親を殺されたばかりだ。無理して気丈に振る舞っているだろうに、それは可哀想すぎる、か。それに、首都へはおれも行こうとしてたんだ。道案内に丁度いい。)
「……仕方ない、かな。おれはハヤトと呼んでくれ。」
「……私の名前はセイナ。17歳。よろしく…。」
「なあ、今日会ったばかりのアンタに言うのもなんだが、泣きたいときは泣いて良いと思うぞ。」
「……ッ」
セイナがハヤトに同行を頼んだ理由、それは、森都ユリゼンの中心にそびえる世界樹の伝説が起因している。世界樹の最も高い枝に宿る、木の精霊王。かの精霊には死者と僅かな時間、一度だけ、対話させることができるという能力がある。という噂がある。
噂ではあるが、過去何人か、実際に死者との対話を経験したという逸話も残っている。信憑性は怪しいが、セイナはローレンに謝るためなら、どんな可能性にも賭けてみたいと思った。
それで、世界樹の頂上までの同行を、ハヤトに頼んだのだ。
自分は17歳。もう大人になる。セイナは自分にそう言い聞かせて、ハヤトと話しているとき必死に涙をこらえていた。
セイナはハヤトに対して思うところがあった。ハヤトはSSランクのドラゴンをモノともしないぐらい強いのに、なぜかとても寂しげに見えるのだ。
親を失ったばかりの自分よりも、寂しげで、儚くて。
出逢ったばかりなのに、セイナに「泣きたいときは泣け」などと、儚そうな笑顔で言った。
その儚い笑みは、セイナが必死にこらえていた涙腺を、簡単に、崩壊させた。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁああおかあさぁぁぁぁん!!」
これが、神になった少年と母を失った少女の、最初の出会いだった。
もう1話だけ、プロローグ続きます。




