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アブソリュート・ディーライゼ  作者: 青空テツ
第3章 エルフ大陸編
28/50

027 プロローグ ウォリア村の異変

 本編開始ですが、まだ主人公はでてきません。

 エルフの大陸において西半分の地域で巨大な勢力を形成している国は『アーカイヤ森国』と呼ばれている。アーカイヤ森国は建国500年ほどであり、国を治める者は森王と呼ばれ、善政によって国民に慕われていた。エルフは不老長寿のため、建国されたその時から森王は代わっていない。森王の名はアリア=フューレン=アーカイヤ。500年前に小さな一団でしかなかったアーカイヤ森国を率いて、数多の敵をその知略で葬った女王である。

 

 アーカイヤ森国の西端にあるウォリア村、この村はこれから滅びようとしていた―――――――――――――。













「セイナ!セイナ!どこに行ったのよ!」


 ウォリア村の外れ、小さな畑をもつこの家庭では、珍しく小さな騒動が起こっていた。

 

「おや、ローレンさん。セイナちゃんがどうかしたのかい?」


 セイナ、と呼ばれる少女を探していた女性、ローレンが声をした方を見る。声をかけてきたのは、この100人ほどの小さな村を治める村長だった。


「あら、村長。ええ、ウチのセイナがどこかに行っちゃったいみたいで。普段は黙ってどこかに行くような娘じゃないんですけどね。」


「まあまあ。セイナちゃんは今日で17歳でしょう?少し気分が浮かれてしまうのは仕方がないことですよ。」


「…ハァ、村長が言うんなら仕方ないですね。けど、セイナを見かけたら家に早く帰ってくるように言っといてくださいね。」


「ええ、分かりました。」


 ローレンはそれだけ言うと、家の方に帰っていった。時刻にして16時過ぎ。初夏にもなっていない今の季節では、涼しくなってくる時間帯だ。17歳にもなる少女が帰宅するにはやや早い時間帯だが、ローレンはセイナを急いで帰宅させようとした。何故だか、今日は嫌な胸騒ぎがしていたのだ。


(今日はいつもより森が騒がしい気がする…。嫌な感じね…。)


 ローレンは家に帰ってから、セイナの帰りを今か今かと待ちわびていた。常人より優れた危機察知能力をもつローレンは、森の異変を敏感に感じ取っていた。





















 一方その頃、ローレンに探されているとも知らないセイナは村の東外れあたりにいた。


「セイナちゃん。誕生日おめでとう!相変わらず可愛いねぇ。」


「ありがとうございます。わたしなんて、女王様に比べたら全然可愛くないですよ。」


「いやいや、負けてないと思うけどねぇ。おや、もう帰るのかい?」


「…はい、ちょっと嫌な感じがするんです。森が騒がしいというか…。」


「そうかい。じゃあ、気を付けて帰りな。」


「はい、さようならパルムさん。」


 ローレンと同様に森の異常を感じ取っていたセイナは、誕生日を祝ってくれたパルムに別れを告げ、少々急ぎ足で家へ帰り始めた。ちなみに、パルムは村で最高齢の女エルフで、年齢は2000を超えているという噂がある。





 セイナが家へ帰ろうとして、村の中心の広場にさしかかったころ、緊急事態を知らせる大鐘が村中に響き渡った。


『『敵襲ーーッ!!魔物の群れの襲来だーー!』』


「なにぃ!?魔物の群れだと!?なんで急にそんな!」


「魔物の数はどれぐらいなんだ!?」


「分からない!けど、戦えるヤツはとりあえず門の入り口に迎え!」


「「おう!」」


 村にいる男戦士や魔法使いが門の入り口に向かう。

 そのまま家に帰ろうとしたセイナだったが、村長を見かけたので現状を聞いた。


「村長!魔物の襲撃って本当ですか!?」


「おや、セイナちゃん。けど、魔物の数はそんなに多くないみたいだから、そんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ。」


「…でも、なんで急に魔物の群れがここに…。」


「報告によると、何かから逃げている様子だったらしい。おそらく森に強い魔物が棲みついたんじゃないかな…。」


「…その強い魔物もここに来るということはないんですか?」


「……有り得ない話ではないね。一応、避難勧告は出した。セイナちゃんも逃げる準備をしてきてくれ。」


「分かりました。」


 セイナは村長との会話を終えて、家へと走って帰る。



 



 




「セイナ!丁度良かった!逃げる準備はもうできてるわよ!」


 セイナが家に帰ると、ローレンはそう言って出迎えた。


「もう準備できてたの!?」


「ええ、嫌な予感がしてたからね。近所の人にも逃げる準備をしといた方が良い、って言っといたわ。」


「…さすがだね。」


「みんなの逃げる準備を手伝うわよ!早く広場に行きましょう。」


「分かった!」


 村の中心の広場では、もうすでに何人かが逃げる準備をして集まっていた。そしてそこには、村長もいた。


『大変だーっ!ドラゴンが出たぞーー!』


「ドラゴンだって!?なんでこんな西の森のはずれに!?」


「村長、急いで逃げましょう!」


「落ち着いてください。ドラゴンの種類はなんですか?」


「…えーと、レッドルビードラゴンです!」


「…ランクSSの魔物ですか。とてもかなう相手ではありませんね。」


 


 レッドルビードラゴン。通常、火山付近の岩山に生息するといわれる爬虫竜類の魔物だ。

 なぜレッドルビードラゴンと断定できたのか、その理由は『鑑定キット』と呼ばれる虫眼鏡のようなアイテムのおかげだ。

 『世界変動』と呼ばれる出来事から3000年以上の月日がたっていたが、3000年前との違いはほとんどなかった。通貨の単位や月、曜日の数え方、冒険者ギルドの仕組みについてもほとんど変化はない。なぜなら、大陸が移動した3000年前、それに並行して多くの文明が失われ、戦争が起こり、技術は衰退したからだ。そしてある程度の収束が世界全体で見られたとき、やっと復興が行われた。しかし、被害は甚大なもので、復興は中々進まなかった。

 だが、『世界変動』による戦争は何も悪いことばかりを引き起こしたわけではない。大陸が近づいたことにより、種族間の差別が少なくなり、交易の輪も広がり、協力して魔族を撃退するなどという協力体制もできていた。

 そのため、『世界変動』を引き起こしたハヤトを、神と崇める宗教もあれば、悪魔と忌み嫌う宗教もあった。

 が、技術は全く発展しなかったわけではなかった。発展した技術の中で最も大きなものが、この鑑定キットの存在だ。誰でも気軽に持つことができ、鑑定キットで相手を覗き込んで魔力を注ぐだけで、相手の名前、種族、年齢、職種を知ることができる。しかも値段は安いため、この世界に生きる大人なら誰でも持っていると言っても過言ではなかった。この魔法は世界の理に干渉する魔法であり、神に相手の特徴を問いかけるらしい。この発展のせいで潜入捜査などは全くできなくなっていた。

 レッドルビードラゴンの場合は、


名前:

種族:レッドルビードラゴン

年齢:1500

職種:上位火竜



と、でるわけである。魔物には基本的に名前はないが、召喚魔法などで人と契約を結んだ魔物には名前がでることもある。







「逃げろーー!村の男達が足止めする!その間に東門から逃げるんだーっ!!」


 レッドルビードラゴンを前にして、ただのエルフにできることなどないに等しい。村長が逃走の旨を皆に伝え、村にある馬屋に向かう。


「女子供を優先して馬車に乗せるんだ!西門には絶対に近づくな!」


 セイナは村へ残していく男達が気掛かりだった。彼らとはもう二度と会えないだろうと分かっていたからだ。しかし17歳のセイナは彼らを助けてと言えるはずも、また助けられるはずもなく、黙って村長の指示に従う他はなかった。






























 ウォリア村を出て五時間ほど、ローレンは敏感に危機を感じ取っていた。


(まずいわね…。嫌な胸騒ぎが消えない…。)


 ウォリア村から隣の村まではまだあと一日ほどは歩かなくてはならない。それまでの道のりに何か不安要素がある気がしてならない。

 

(いえ、胸騒ぎはどんどん大きくなっていく…。すぐに何か嫌なことが起こりそうね…。)


 ローレンはどんどん大きくなっていく胸騒ぎを抑え、村長に一度移動を止めるよう言おうとした。


「ねえ村長。ちょっといいかしら…」


「ローレンさん、どうかしましt……」


 しかし、そこに絶望は現れた。どうやら遅かったようだ。


「GUUUUOOOOOOOOUUUUUUUUU!!!!!!」


 胸騒ぎを伝えようとしたローレンと村長の目の前に、赤の宝石竜が舞い降りた。


 



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