024 罠
唐突に休止してすいませんでした。
そして、唐突に再開します。
おかしいとは思っていたんだ。いくらなんでもランクが上がるのが早すぎる。国王との謁見にしてもそうだ。急に現れた素性不明の冒険者をすぐに国のトップと面会させるようなことが普通あるだろうか。いや、そんなことがあるわけない。
なのにおれは国王とふつうに会うことができた。いや、見事に罠にはまっていたというべきか。
なぜおれがこんなことを考えているのか、その理由は………ッ!!
「どうしたんですか?仮にもXランクでしょう?本気で戦わないと死にますよッ!!」
彼女――――――――アリス・センテルグの火魔法を剣で相殺し、打ち消す。そして反撃の水魔法を放つ。見様見真似の【ウォーターガン】だ。威力は圧倒的にこちらの方が上だが。
なぜおれがアリスと戦っているのか。その理由は単純だ。
国はおれを危険人物と判断し、抹消しに来た。それだけだ。
どうやら、戦争の援護として派遣されたおれがハルン村を襲ったために軍で討伐した、という筋書きらしい。まったく、嫌なことをしてくれる。
今おれは、アリスとハルン村にておれを待ち構えていた軍と戦っている。数にして、1vs6000ほどだろうか。
目の前のアリスによると、先ほどおれが面会していたグレン将軍率いる王国軍とイースト国軍もおれの殲滅のためにハルン村へと行軍してきているらしい。そして、獣帝との戦争は和平により終結していたようだ。
それはつまり、同時に龍王が攻撃してくる可能性も消えた、ということになる。そして、龍王対策のために≪サラブレット≫にいた大冒険者イクサスは、やることがなくなったために≪サラブレット≫から消えたらしい。
そして、この目の前の自称16歳の少女はおれの水魔法を受け止める実力はある。まったく本気ではないといえ、ゴブリンキングぐらいなら殺せる威力をもつおれの【ウォーターガン】を、だ。
この少女の正体……、誰がどう考えても1人しか当てはまる人物はいない。大冒険者イクサスは幻影魔法や転移魔法も使えるという。つまり…
「なあ、大冒険者イクサスさんよ。そろそろ本当の姿を現したらどうだ?その姿はおれを油断させるためのものなんだろ?」
「ほう、さすがに気づいていたか。確かにアリスという名の少女はわたしが貴様を油断させるために変装した仮の人物だ。」
イクサスはそう言うと、変装を解いた。そして目の前に現れたのは、40代ぐらいのオッサン…もとい渋い賢者のような恰好をした男性だった。
「イースト国軍の兵士に襲われて無抵抗だったのも演技だったてことかよ…。あの時点でおれの接近に気づいてたのか…。」
「その通り、あれも全て貴様をはめるための罠よ。」
…オッサンの変装の肌に少しでも興奮した過去の自分を殴り飛ばしたい。
「さて、わざわざ変装を解いてやったんだ。わたしの本気を耐えるぐらいの力は見せてくれよ?」
「…バトルジャンキーかよ。めんどくせえ…。」
「だれが戦闘狂だ。それに此度の戦いはわたしの意志ではない。」
「……察するに王国からの依頼か。」
「その通りだ。だが、強者と戦うのに心が躍ってしまうのは仕方がないものだろう?」
「…結局バトルジャンキーじゃねーかよ。」
「ふ、まああながち間違いではないかもしれんな。それより、雑談はこれまでだ。遺言ぐらいなら聞いてやるが?」
「ち、殺しに来る気満々かよ。まあいい、やれるもんならやってみやがれ。」
しばらくの静寂のあと、先に動いたのはイクサスだった。やつは詠唱破棄によって発動までが極端に短縮された魔法を放ってきた。
「フレイムランス・レイン」
イクサスの魔法は、火の槍が空中から雨のように降ってくるものだ。その数は数えるのもめんどくさいぐらい。
「ウォーターウォール」
それに対しておれは水の壁を空中に浮かべて全ての火の槍を防ぐ。
が、おれが魔法名を唱えた一瞬でイクサスは次の魔法を撃っていた。さすがは白人族。ふつうの人が使える魔法の属性は一つまでらしいが、彼は他の属性も使うことができるらしい。
「ライトニングボルト!」
刹那、雷光がおれへと放たれる。光速のそれは常人が避けられるようなものではない。
が、そこはおれだ。瞬時に反応して刀で相殺する。
「…わたしの雷魔法を受けきるだと。なんだその刀は。」
「雑談は終わりじゃなかったのか?」
「まあいい、ならこれも防いでみろ!」
すると、イクサスが雷光を…纏った。
そして、瞬時におれの目の前に現れた。そしておれは油断していたためか、一気に後方へと吹き飛ばされる。相手は剣で攻撃してきたが、そこはきっちりガードする。
「…雷を纏って攻撃力とスピードを大幅に上げたのか。さすがはXランク冒険者だ。化け物じゃないか。」
「憑依・雷だ。まさか剣を防がれるとは思わなかったがな。」
「なるほどな。じゃあおれもやってみようか。」
「…なに?」
「憑依・炎。なるほど、こんな感じか。」
おれは創造魔法で自分に火を纏わせた。なるほど、これは身体能力が上がるわけだ。ついでに火属性の魔法も威力が上がりそうだな。
「…見よう見まねでわたしの必殺技を使う、か。貴様も化け物だな。」
「んなこと、自覚してらあ。」
「だが、その結界を維持したままでわたしに勝てるか?」
……そう、なぜ1vs6000の状況で一騎討ちができているのか。それはおれが半径50メートルほどの結界を張っているからだ。たかが軍の兵士にこれを破れるものはいないだろう。
が、この程度の結界を維持することは別に苦でもなんでもない。どうやら相手はおれの実力を過小評価しているようだな…。
「…あんま人をなめてんじゃねえぞオッサン。1割程度の力を出す。…耐えてみせろよ?」
「…なんだと。どちらがなめt…グッ!!!」
過小評価されて良い気分なやつなどいないだろう。宣言通り1割程度の力で接近して殴ってやった。
「いくぞオラァ!バーニングライトォォッッ!!」
「グッ、なんて威力だ……、グホォォォォァァァッッッッ!!!!!!!」
炎を纏ったおれの右手による圧縮爆発魔法。イクサスは雷の盾で防御しようとしたみたいだが、そんなもの大した抑止力にすらなっていない。
盾は一瞬で崩壊し、爆発がイクサスを襲う。どうやら結界の端まで吹き飛ばされたようだ。
「ハァ、ハァ…。それで1割だと…?」
「その通りだ。まだまだ行くぞぉ!」
「なめるなよ!プラズマフレイム!!」
火と雷の合成魔法か。雷の速度で進む炎。それは確かに驚異的な威力だろう。
「…それがどうしたァァ!!バーニングブラストォォッッ!!!」
そんなものおれには関係ねえ。炎で威力が増大した爆発でプラズマフレイムごとイクサスを吹き飛ばす。
「クッ…、グハァァッ!!」
結界に叩きつけられたイクサス、世界最強クラスでもおれの1割程度の力もないのかよ。
「おいおい、その程度か?十傑の名が泣くぜ?」
「…ハァ、ハァ、確かに貴様はわたしより強い。そしてわたしが貴様を侮っていたのもまた事実。……この手だけは使いたくなかったのだがな。」
「…へえ、まだなんかあるのかよ?出し惜しみしてる余裕はあるのか?」
「…このような姑息な手で勝ちたくはなかったのだが、……恨むなよ。」
「ぁあ?なに勝った気でいんだよオッサン。」
奥の手がなんだかは分からないが、勝った気になってるのは気に入らないな。
すると、オッサンの指輪が輝き始めた…、やらせねーよ。
「フレイムランスッ!」
とりあえず炎の槍を撃ちこもうとしたが、なぜか、炎の槍は形成されなかった。
そして、おれが憑依していた炎も消えた。
そればかりか、おれとイクサスを覆っていた結界まで消えた…だと。
慌ててステータス欄を見ると、【創造魔法】がなくなり、【想像魔法】になっていた。【魔法使用時MP無消費】がなくなっている。
「…おいオッサン、何をした?」
「…七大罪之魔装・強欲。大悪魔マモンによる特殊能力だ。相手のスキルを1つだけこの世から消しさる。…これでお前は魔法が使えない、ということだ。悪く思うなよ。」
怠惰の悪魔はベルフェゴールでした!アスタロトと間違えてました。




