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アブソリュート・ディーライゼ  作者: 青空テツ
第二章 チート獲得編
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010 過去の世界と今の世界

 今回は過去話が主となっていて、いつもよりちょっと長めになってます(^^♪

「空峰特別将軍、これから三日後米軍と一戦交えることになる。場所は真珠湾だ。君にはハワイ島攻略で我々とは別行動を取ってもらう。島の裏から単騎で突撃し、敵の本陣営へと奇襲をかけてくれ。攻略自体は我々が主となって行うので、君には敵の錯乱を誘って欲しい。以上が作戦の全容だ。君が本艦を出るのは午前3時になる。よろしく頼むぞ。」


 わざわざおれの部屋まで作戦の説明に来てくださった総司令官殿は、説明を終えるとそそくさと帰っていってしまった。

 2016年8月7日、日本軍戦艦【疾風】。現在は友好条約を結んだグアムへと滞在している。


 単騎で敵本陣営に突撃、ね。上はおれを最後まで作戦に有効利用して処理しようという事か。まったく、鋼鉄を斬り銃弾より早く動く人間か。まあそんな化け物であるおれという危険因子を生かしておくにはリスクも大きいからな。しかし、今まで中国の官邸を陥落させたりロシア軍砦を単独で攻略した功績について少しは考慮して欲しいもんだな。

 まあ信頼できる家族もいなけりゃ、友達すら1人もいない現状じゃなあ。のろのろ生きてお国様の役に立ち続けるのもシャクだしな。

 

 なんとなく寝る気分にはならなかったので、戦艦内の軍営図書室へと向かう。本が唯一の友達…なんてな。



 図書室にはほとんど誰も来ないので落ち着くと思ったんだが、先客がいた。メガネをかけた黒髪の少女は、おれと同じく未成年に見えた。

 久しぶりに人に興味をもったな。話かけてみようか。


「なあ、アンタ。どこの所属だ?」


「…え、あ、私ですか!?」


「…アンタ以外誰がいるんだよ…。」


「…えっと、医療部所属の漣早香です。」


「…ワリィ。聞いたことないわ。それにしても歳いくつだ?随分若く見えるんだが。」


「あ、はい。あなたと同じ17歳です。医療部では最年少ですね。」


「へえ、おれ以外にも未成年がいたんだな。しかし、何でおれの年齢知ってんだ?」


「…それは、あなたが有名人だからですよ。とゆうか、あなたが有名にならないワケないじゃないですか。」


「はは、生意気な若造のうわさ…か?」


「……え、と。」


「わり、引っ込み思案のあんたに意地悪な質問だったな。」


「ど、どうして私が引っ込み思案だってわかったんですか?」


「無理してるように見えたからさ。読書の邪魔して悪かったな。」


「じゃ、邪魔なんてとんでもないです。無理もしてないですよ。その…わたし1人だけ部のなかで若いから、話す人がいなくて…」


「はは、おれと似たようなもんかもな。」


 この娘の眼、ちょっとした怯えは見えるけど軽蔑は見えない。おれを軽蔑しない人は久しぶり、というより人前で鋼鉄を斬ってみせてから初めてだな。

 夜中の0時にもなるのに、ついつい話に入れ込んでしまった。話し始めて1時間以上たつな。


「…へえ、じゃあ今回が初めての任務なんだ。」


「…はい、緊張しちゃってどうすればいいか分かんなかったんですけど、図書室があるって聞いて…。読書が大好きなんです。」


「それでここにいたのか。それにおれが初めて見たのもこれが初任務だったからか。」


「そうですね。空峰君はよく図書室に来るんですか?」


「ああ、まあな。」


「へえ、なんでですか?」


「…ここしか居場所がないからな。おれは嫌われ者なんだよ。」


「…あ、そのイヤなこと聞いてすいません…。」


「いや、気にしないでくれ。」


「そ、その私はそうは思わないですよ?」


「…え?」


「確かに空峰君は怖いし近寄りがたいし国からも嫌われてるって聞いた事あります。けど、今みたいに実際話してみるととっても気さくでいい人だって思いました。だから、その、わたしはあなたの事軽蔑したりしないですよ…?」


 顔を赤くしながらそんな事を言った。正直、うれしかったな。


「…ありがとう。」


 …沈黙がきた。コレがあれか。気まずいってやつか。




「…あ、あ!そ、そろそろ見回りの人が来ますね!怒られちゃうので、部屋に戻りまそう!」


 …最後思いっきり噛んでた。


「お、おう。そうだな。」


「そ、それでは失礼しますです!」


 …そういって足早に図書室を出て行った。おれも帰るか。

 しかし、初めて友達が出来たな。正直、うれしくてニヤけてしまう。おれの余命3日だけど、明日も話すのが楽しみだな。


 翌日、また図書室で話した。


 その次の日も、話した。絶対生き残ろうって約束をしたけど、正直おれにそれはむずかしい。けど、俺達は親友だって言ってくれた。


 


 3日後、彼女は戦死した。単騎で突入したおれは生き延びた。

 本隊と合同行動していた医療部隊だったが、道中敵の伏兵にあい、銃の乱撃戦になったらしい。敵はどうやらおれが本隊にいると思っていたらしく、敵本陣営は手薄だった。焦ったおれは敵本陣営を全滅させ、急いで本隊と合流した。そのまま本隊と合流して敵の伏兵を壊滅させたが、医療部隊はとくにひどい攻撃をくらっていた。そして、すでに冷たくなっていた彼女の遺体を発見した。

 この時、おれは初めて涙した。言葉のあやではなく、生まれて初めて涙した。そして、米軍に対して猛烈な殺意を覚えた。親友を殺された怒りは、大きい。

 戦艦に戻り、翌日の米軍ハワイ第二基地の攻略会議がおこなわれた。一度攻略を始めたら一気に攻略しないと敵に態勢を立て直されてしまう。先の戦いは一応日本軍の勝利にあたるが、おれにとっては到底勝利とは呼べないものだった。


「おれが単騎突撃して罠の有無を確かめる。そしてそのまま敵本陣営に突入する。敵も迎撃態勢は整っているだろうが、別におれが戦死しても構わんだろ。」


 おれが会議でこんな発言をするほどだった。総司令官殿はおれの作戦を喜んで採用した。


 


 そして翌日、単騎で敵本陣営に突撃したおれは軽量化により戦いで実装されていたガトリング銃部隊と相対し、敵部隊を半壊させたものの戦死した。やはり親友を失った傷は大きく、充分な実力が出なかった。


 そして傷が癒えていないのは、今も同じだ。まだ彼女が死んで4日とたっていないのだ。強敵は燃えるが、戦いが終わった後の心の冷えが痛い。



















 

 蒼き龍との激闘に疲れたおれは、崖に寝そべって満天の星空をみていた。そして、ふいに先日失った親友の事を思い出していた。

 この世界でも親友は見つかるのか、そもそも友達ができるか。そんな心配と共に親友を失った喪失感がいまのおれの心にはあった。

 この世界に来てまだ2日目の夜、いろんな事がありすぎた。この世界でも前の世界でもチートのおれは、この世界では軽蔑されるのか尊敬されるのか。


 …はー、ちと疲れたな。寝るか。

 読んでいただきありがとうございました。

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