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転生してスローライフ  作者: 火川蓮
第七章

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chapter46 生じる綻び

剣と槍が、迫ってくるゴブリンたちを迎え撃つ。


「くっ……!」


カインが剣を振り抜く。

剣の勢いに押されたゴブリンが後ろへよろめき、別のゴブリンとぶつかった。


「ギィッ!」


二匹がもつれる。

一瞬だけ開いた隙間を、リシアがかいくぐる。


「ここ!」


短剣が閃く。

リシアはそのまま振り返った。


「右、薄い!」


「分かった!」


ヴァルトが応じる。


ノアが槍を構えたまま横へ移動する。

カインもそれに合わせて位置を変えた。

無理に前へ出る必要はない。

開いた場所を見つければ、そこへ合わせる。

それだけで、なだれ込むゴブリンたちの勢いが少しずつ削がれていった。


「ギ……?」


ゴブリンの一匹が周囲を見回す。

前には仲間がいる。

けれど、その横には妙な空間ができていた。

そこへ別のゴブリンが入り込もうとする。


「ギィ!」


「ギッ!」


互いに進路を譲らず、肩がぶつかる。

その瞬間――。


「今!」

ヴァルトが踏み込んだ。 旅烏が一斉に動く。

ゴブリンたちは押し返そうとするものの、まとまって動けない。

前へ出ようとする者。 横から回り込もうとする者。

後ろから押される者。

それぞれの動きが、少しずつ噛み合わなくなっていた。

少し離れた場所から、その様子を見ていたサージェントの目が細くなる。


「ギ……」


腕を上げる。


「ギィッ!」


ホブゴブリンが反応した。

すぐさま周囲へ指示を飛ばしていく。

ゴブリンたちが動き始める。

今度は、旅烏の左側へ集まっていった。


「左が増えた!」


ノアが叫ぶ。


「分かってる!」


カインが剣を構え直す。 ゴブリンたちが一か所へ集中する。 その圧力は、確かに強かった。


「くそっ……!」


カインが一歩下がる。 旅烏の陣形が押される。


その瞬間――リシアが右を見る。


「……空いた」


「何?」


「右」


そこには、さっきまでゴブリンがいたはずの場所があった。

サージェントが左へ戦力を寄せたことで、別の場所が薄くなっていた。


「ヴァルト!」


「行くぞ!」


迷う時間はなかった。 旅烏が右へ動く。

ゴブリンたちが慌てて振り向く。


「ギッ!?」


「ギィ!」


ホブゴブリンが声を張り上げる。

けれど、すでに旅烏は動き始めていた。

ほんのわずかに開いた空間を、旅烏が押し広げていく。


「抜けるぞ!」


カインが叫ぶ。


「まだだ!」


ヴァルトが制した。 前方には、まだゴブリンがいる。

すぐに塞がるはずだった。

サージェントが指示を出す。

ホブゴブリンが叫び、ゴブリンたちが動く。


しかし――別の場所が空いた。


「……」


サージェントが動きを止めた。

視線の先には、旅烏の前にできたわずかな隙間。

それはまだ小さい。

だけど――確かに存在していた。


「ギ……」


サージェントの手が震える。

命令を出せば、ゴブリンたちは動く。

それは変わらない。

それなのに、動かした先で別の場所が空いてしまう。

埋めれば、また別の場所が開く。

その繰り返しだった。

そして旅烏は、その綻びを見逃さない。


「……見つけた」


リシアが呟く。 カインが剣を構える。

ヴァルトが前を見る。 ノアも槍を握り直した。

小さな隙間。

それはまだ、戦場を変えるほどのものではない。

それでも――崩れ始めた陣形には、確かな綻びが生まれていた。

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