chapter47 広がる綻び
「……ここだ」
リシアが短剣を構えた。
目の前には、ゴブリンたちの間にできたわずかな隙間。
「ヴァルト!」
「分かってる!」
ヴァルトが踏み込み、カインとノアも続いた。
ゴブリンたちが慌てて集まろうとする。
「ギィ!」
「ギッ!」
前後から押し合うようにして、旅烏の進路を塞ごうとする。
しかし――。
「遅い!」
カインが剣を振り下ろす。
ゴブリンの群れが揺らぐ。
その横をリシアが抜ける。
「こっち!」
旅烏が一歩前へ出た。
ほんの数歩、それだけだった。
それでも、さっきまで保たれていた距離が変わった。
サージェントがそれを見て、すぐに腕を上げる。
「ギィッ!」
ホブゴブリンが声を張り上げた。
今度は旅烏の正面へゴブリンたちが集まる。
「前が増えた!」
ノアが槍を構える。
「無理に押すな!」
ヴァルトが叫んだ。
ゴブリンたちが正面から押し寄せ、旅烏は受け止める。
剣と槍が交差し、ゴブリンたちを倒していく。
すると、今度は左右の動きが変わった。
「……右」
リシアが呟く。 カインが視線を向ける。
さっきまで右側にいたゴブリンが、前へ集められている。
「また空いた」
「行けるか?」
ヴァルトが尋ねる。
「行ける」
リシアが答えた。 旅烏が動く。 サージェントが気づく。
「ギィッ!」
指示が飛ぶ。 ホブゴブリンが叫ぶ。
ゴブリンたちが向きを変える。
だが、今度は前にいたゴブリンとぶつかった。
「ギッ!」
「ギィ!」
足が止まる。 その一瞬を、旅烏が利用した。
カインが進み、ヴァルトが後を追う。
ノアが槍で牽制し、リシアが横へ回る。
「行ける!」
カインが叫んだ。 旅烏がさらに前へ出る。
「ギ……」
サージェントが息を呑む。
今までとは違うことは理解していた。
旅烏はゴブリンの群れに押し返されているのではない。
少しずつだが――前へと来ていた。
サージェントが周囲を見回す。
どこを見ても、ゴブリンたちはまだいる。
数も十分に残っている。
なのに、思うように旅烏を押し込めない。
「ギ……ギィ……」
握った拳が震える。 そして――。
サージェントは、再び腕を上げた。
今度は、これまでよりも強く。
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