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転生してスローライフ  作者: 火川蓮
第六章

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chapter43 噛み合わない指揮

戦場は、少しずつ形を変えていた。

ゴブリンの数が減っている。

それでも、旅烏の前から群れが消えることはない。


「くっ……!」


カインが剣を振り抜く。

一体。 その横から迫ってきたゴブリンを、リシアが短剣で仕留める。


「次!」


「分かってる!」


ノアの槍が突き出される。 また一体。

倒れたゴブリンの身体を踏み越え、別のゴブリンが飛び込んでくる。

ヴァルトがそれを受け止めた。


「焦るな」


「焦ってない!」


カインが息を吐きながら答える。


「ただ、数が多すぎるんだよ!」


「だからこそ、目の前だけ見ろ」


ヴァルトはそう言って剣を振るった。


次々と――旅烏は、確実にゴブリンを討伐していく。

苦戦している。 傷も増えている。 息も上がっている。

それでも、誰一人として動きを乱してはいなかった。

森の奥。サージェントは、その光景を見ていた。

着実に減っていくゴブリンたち。

想定していたよりも、明らかに早い。

サージェントの喉から、低い声が漏れる。


「……ギィ」


すぐに腕を動かした。 ホブゴブリンが反応する。

前衛が下がり、後方にいたゴブリンが前へ出る。

空いた場所を埋める。 だが、それだけでは足りない。

サージェントはもう一度、腕を振った。

今度は左右、ホブゴブリンがそれを受け、周囲へ指示を飛ばす。

ゴブリンたちが動く。 旅烏の左右から圧がかかる。


「右!」


ノアが叫ぶ。


「分かってる!」


カインが身体を向ける。

迫ってきたゴブリンを斬り伏せる。

その隙を狙って別のゴブリンが飛び込む。

僅かに…リシアの短剣が先に届いた。


「甘い」


ゴブリンが倒れる。 カインが一瞬だけリシアを見る。


「助かった」


「礼は後」


リシアはすぐに前へ向き直る。


「まだ来る」


その言葉通り、またゴブリンが迫ってくる。

旅烏は迎え撃った。

津波のように押し寄せてきたゴブリンたちを倒す。

だが、数はまだ多い。

サージェントの視線が鋭くなる。

減り続けるゴブリンたちに指示を出す。

動く。 けれど、思ったようには崩れない。

サージェントは再び腕を振った。


すると、近くにいたホブゴブリンが動く。

しかし、その指示を受けたゴブリンの一体が、ほんの少しだけ動きを遅らせた。

それは一瞬だった。 それでも、旅烏には十分だった。


「そこだ!」


カインの剣が走る。 ゴブリンが倒れた。

サージェントの身体が少し揺れる。


「ギィ……」


サージェントが上げた声は、先ほどより低かった。

それでも、指揮を止めることはない。

むしろ。 指示が増えた。

戦場を維持するために、サージェントは次々と指示を飛ばしていく。

そのたびにゴブリンたちは動く。 まだ動けている。

まだ戦えている。 しかし――その動きには、以前にはなかった微かに遅滞し始めていた。

旅烏は、それでも戦う。 誰も諦めることはしなかった。


そしてサージェントは、そんな旅烏を睨みつけていた。


(なぜだ……なぜ、まだ崩れない)


森の中に、低い唸り声が響いた。


「ギィ……ギギ……」


だが、その声を聞いても、旅烏は止まらなかった。

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