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転生してスローライフ  作者: 火川蓮
第六章

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chapter42 揺らぎ始める指揮

ゴブリンの群れは途切れることなく押し寄せて来る。

一体倒せば、また一体。

二体倒せば、その隙間を埋めるように次が現れる。


「はっ!」


カインの剣が一閃する。

飛び込んできたゴブリンが倒れる。

だが、足を止める暇はない。


右、左、前、三方向から牙が迫る。


「ノア!」


ヴァルトの声が飛ぶ。


「はい!」


槍が突き出され、一体の喉を貫く。

そのまま身体をひねり、迫るもう一体を払い退けた。

リシアの短剣が木陰を走る。

回り込もうとしていたゴブリンが、声もなく崩れ落ちた。


それでも、群れは止まらない。

サージェントは森の奥から戦場を見つめていた。

赤い瞳が、旅烏の動きを追う。


減っている。

確実に。

だが、倒れているのはゴブリンだけではない。

旅烏も疲弊している。

呼吸は荒くなり、動きも少しずつ重くなっている。


まだ押し切れる。

サージェントはそう判断した。

短く腕を振る。

ホブゴブリンが応えるように鳴き、群れが左右へ散った。


包み込むような陣形。 逃げ場を削る配置。

旅烏へ、じわじわと圧力をかけていく。


「また変わるぞ!」


カインが叫ぶ。


「落ち着け!!」


リシアは短く返した。


「変わるなら、合わせればいい」


ヴァルトも静かに頷く。


「ああ。崩れるな」


その一言だけだった。

四人は陣形を保ったまま、一歩だけ位置を変える。

無理に攻めない。

無理に下がらない。

目の前の敵だけを確実に倒していく。


一体。 また一体。 確実に。

サージェントの視線が細くなる。

また減った。 想定より、少しだけ。

群れはまだ優勢だ。 それでも――

その"少し"が積み重なっていく。


サージェントは再び指示を送る。

ホブゴブリンが動く。 ゴブリンたちが応じる。

一体だけ。 動き出しが遅れた。

すぐに列へ戻る。 誰も気付かないほどの時間。

だが――リシアだけは、その瞬間を見逃さなかった。


「……また」


カインが横目で見る。


「見えたか? あのズレ」


ヴァルトも森の奥へ視線を向ける。


「少しずつだ」


ノアは首を傾げた。


「何が起きてるんですか……?」


ヴァルトは静かに答える。


「向こうも、戦い続けている」


その言葉の意味を理解できた者は、まだ誰もいなかった。

ただ一つだけ確かなことがある。

完璧だった戦場は、まだ支配されている。

それでも、その奥では――誰にも気付かれないほど小さな変化が、静かに積み重なり始めていた。

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