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転生してスローライフ  作者: 火川蓮
第五章

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chapter33 群れの輪郭

※旅烏視点です

森の奥は、もう“森”ではなかった。

木々はある。草もある。だが、それらは自然のままではない。 踏み固められ、押し分けられ、一定の“道”のようなものが出来ている。

カインが周囲を見て舌打ちする。


「これ、完全に人の通る道だろ」


「人じゃないけどな」


ヴァルトが短く返す。

ノアは喉を鳴らした。


「ゴブリンが……こんなふうに?」


リシアは地面を見ながら静かに言う。


「“群れ”の規模が想定より大きいわね」


ヴァルトは足を止めない。


「奥へ行く」


誰も異論は出さない。

進むほどに、異常ははっきりしていく。

枝は意図的に折られ、視界が通るように整えられている。 ただの移動ではない。 “監視と移動の両立”を考えた痕跡だった。

ノアが小さく呟く。


「これ……ゴブリンの森っていうより……」


言い切る前に、前方で気配が変わった。

カインが即座に身構える。


「いるぞ」


木々の間。

数体の影。

ゴブリン。


そしてその後ろに、一回り大きい影が混じっている。

ホブゴブリン。


さらに、その配置が“ばらばら”ではない。

前後左右、間隔がある。

カインの表情が変わる。


「……隊列かよ」


ノアは息を呑む。


「ゴブリンが……?」


だが答える間もなく、気付かれた。

ゴブリンの一部がこちらを見る。

次の瞬間。

奇襲ではなかった。

叫びもない。


ただ、統一されたように一斉に動き出す。

突撃。

だが無秩序ではない。 左右に分かれ、挟み込むような動き。

ヴァルトが剣を抜く。


「来るぞ」


カインが横へ滑り込む。


「面倒くせぇ動きしてくるな!」


戦闘は一瞬で始まった。

ゴブリンは単体では弱い。 だが“連携している”だけで厄介さが跳ね上がる。

カインが一体を切り伏せる。

その瞬間、別の一体が隙を突く。


「チッ……!」


ノアが槍で受け止める。

だが今度は後ろ。

ホブゴブリンが動く。

単なる突撃ではない。 明らかに“流れを見ている”。

ヴァルトが一閃。

ホブの動きが止まる。

しかし倒れない。


「浅いか……!」


リシアが短く言う。


「引いてる!」


その言葉通り、ゴブリンたちは戦いを続けない。

一定の損耗を見た瞬間、即座に距離を取る。

撤退。

それもバラバラではない。

統率された後退だった。

カインが舌打ちする。


「逃げ方まで揃ってやがる」


戦場に静けさが戻る。

だが、軽くはない。

ヴァルトは剣を収めずに言う。


「確定だな」


ノアが息を整えながら問う。


「何がですか……?」


ヴァルトは森の奥を見たまま答えた。


「ここには“巣”がある」


リシアが静かに続ける。


「しかも、ただの群れじゃない」


カインが肩をすくめる。


「で、まだ上がいるってわけだ」


誰も否定しなかった。

森の奥は静かだった。

だが、その静けさはもはや平穏ではない。

“何かがこちらを見ている森”だった。

そして、それはまだ姿を見せていない。

読んでくれた方ありがとうございます

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