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転生してスローライフ  作者: 火川蓮
第五章

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chapter28 崩れ始めた日常

※フィル視点です

村の空気が、少し変わっていた。

いつも通りの昼。

人は動いているし、声もある。

けれど――どこか静かだ。

落ち着かない、という方が近い。

オレは庭に出て、水を集める。

いつものように水人形を生成し、実験を行う。


ここ最近、動かせるようになっていたから今更なんだが――ゴブリンと出会ったとき、“水人形で攻撃していたな”と思ったのだ。

それまでまったく動かすことができなかったのに。

ぎこちなく動く水人形の腕を見て、考えを巡らせる。

そのとき、通りの方から声が聞こえた。


「戻ってきたらしいぞ」


「……怪我人が出たって話だ」


手が止まる。


「森のやつか?」


「ああ。昨日の続きだろ」


低い声。

抑えているが、隠しきれていない。


「結構やられたらしい」


「……マジかよ」


「だから言っただろ、様子がおかしいって」


会話が遠ざかる。

水人形の動きが、わずかに鈍る。


(……やっぱり、か)


予想はしていた。

森の様子。

あの違和感。


(あれで何も起きない方が、おかしい)


水が崩れ、地面に落ちる。

もう一度、生成し直す。

ゆっくりと、形を作っていく。


(ゴブリンは増えた、だけじゃないな)


ゴブリンは狡猾だけど、頭は決して良くはない。

数が増えれば厄介になる――

そういう話を、どこかで読んだ気がする。

――ということはだ。

昔読んだラノベを思い出す。

こういうときは、大体――


「……」


視線を上げる。

通りの先。

衛兵が歩いていた。

数は少ない。

そのうちの一人が、腕を吊っている。

布が巻かれ、血が滲んでいた。

歩き方も、少しぎこちない。

誰も声をかけない。

ただ、視線だけが向く。

すぐに逸らされる。


(……負けたんだな)


完全に、とは言わない。

だが――圧倒された。

それは分かる。

水人形の動きがわずかに歪む。


(村の衛兵だけじゃ、足りないか)


防ぐことはできても、対処はできない。

いや、ゴブリンたちの行動も妙だ。


「何故、森から出てこようとしない?」


そう小さく呟く。

衛兵たちがやられた。


(……このままじゃ、村だけじゃ無理だろうな)


そうなると――面倒なことになる。

外から人が来る。

情報も動く。

森にも入る。

水人形が崩れ、地面へと落ちていく。

気づかないうちに、制御が乱れていたらしい。


「……あ」


小さく声が出る。

再び生成し直す。

周りから見れば、それだけだ。

ただ水で遊んでいる子供。

それ以上でも、それ以下でもない。

けれど――


(……これ、長引くな)


感覚だけで分かる。

すぐに終わる話じゃない。

むしろ、これからだ。

もう一度、水に魔力を流し、形を整える。

腕を動かす。

さっきより、少しだけ安定していた。


(……今のうちに、できることはやっとくか)


小さく息を吐く。

空は、変わらず晴れていた。

読んでくれた方ありがとうございます

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