chapter25 群れの兆し
※衛兵のリーダー視点です
ゴブリンが、先に動いた。
低い唸り声とともに、二体が前に出る。
間髪入れず、さらに後ろから一体。
「前列、受けろ」
リュシェアの声は短い。
隊列が動く。
前に出た二人が盾を構え、その背後から槍が伸びた。
一体目が突っ込んでくる。
鈍い音。
盾で受け止め、体勢が崩れたところを槍が貫いた。
二体目も同じように処理される。
「……問題ないな」
低く呟く。
連携は崩れていない。
動きも悪くない。
三体目が横から回り込もうとするが――
「左、来るぞ」
声を飛ばす。
反応は速い。
横に回った兵が剣を振るい、ゴブリンの首を落とした。
血が地面に散る。
「クリアだ」
短く告げる。
一瞬、静寂が戻る。
「……こんなもんか」
誰かが小さく息を吐いた。
そのときだった。
「……まだだ」
リュシェアが呟く。
視線は奥。
木々の隙間、そのさらに奥。
――気配。
「構えを崩すな」
声を落とす。
次の瞬間。
また一体、姿を現した。
さらにもう一体。
「……来るぞ」
低い声。
ゴブリンは、迷いなく突っ込んでくる。
先ほどと同じように、隊が動く。
盾、槍、剣。
連携は変わらない。
一体、二体と仕留める。
だが――
「……多いな」
ぽつりと漏れる。
倒した数に対して、減った感覚がない。
「隊長、奥から……!」
声が上がる。
見るまでもない。
分かっている。
(まだいる)
剣を振るいながら、奥を睨む。
木の影が揺れる。
一つじゃない。
二つ、三つ――それ以上。
「……問題ない。落ち着け」
声を落とす。
まだ対処できる。
まだ崩れていない。
だが、胸の奥に引っかかるものがあった。
(数が合わん)
ここまで出てくる量じゃない。
本来なら、もっと奥にいるはずだ。
「前に出すぎるな。引きつけて削れ」
指示を飛ばす。
隊は応じる。
一体ずつ、確実に処理していく。
動きに乱れはない。
――それでも。
「……減らねぇな」
誰かが呟いた。
リュシェアは何も言わない。
ただ、奥を見た。
まだ、来る。
その事実だけが、はっきりとそこにあった。
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