2 大会戦
須弥軍と伍部浄軍は亜空間通路の前で整列して待機していた。
静香から進軍の合図がくるまでの間、伍部浄は手持無沙汰の四天王に試された。
「お前が須弥族の裔だと言うなら、須弥族らしい妖力を使って見せてみろ」
巨漢で剛力の提頭頼吒が伍部浄に挑んだ。
仕方なく伍部浄は言われるがままに、印を結び呪文を唱えて白象をつくり出した。
「須弥族の伝統で、俺の乗り物は天帝釈と同じ白象なのだ」
伍部浄は胸を張って言った。
提頭頼吒はそれを見て、伍部浄の象の胴体の下に屈んで手を入れ、片手でぐいっと持ち上げた。
「お前の象は見掛け倒しなのか?こんなに軽いぞ」
怪力の提頭頼吒は片手で象を毘楼勒叉に放り投げた。
毘楼勒叉は投げられた象を両手で難なく受け止めた。
「確かにこの軽さはまやかしだ。剛力の提頭頼吒でなくても楽に投げられるぞ。ほれっ」
毘楼勒叉は伍部浄にむかって象を投げ渡した。
伍部浄は毘楼勒叉の真似をして両手で受け止めようとしたが、象の巨体に押し倒されて下敷きになった。伍部浄は反射的に念動力で身を守り、必死になって隙間をつくって象の腹の下から這い出した。危うく象の重さで押し潰されるところだった––––––提頭頼吒 と毘楼勒叉が恐ろしい怪力で、象を軽く見せて伍部浄をからかったのだ。
「念動力が使えてよかったな。さもなければ今頃潰れて臓物が口から飛び出していただろう」
提頭頼吒は、まだ起き上がれないままの伍部浄を嘲って笑った。
伍部浄は屈辱で緑色の顔が真っ赤になった。
「念動力が使えるなら、どれほど力があるか俺に使ってみろ」
伍部浄は膝に手をついて立ち上がり、提頭頼吒を念動力で持ち上げようとした。しかし、提頭頼吒は大地に根が生えたように梃子でも動かなかった。
ムオーッ
伍部浄が念動力を振り絞ると、逆に伍部浄のほうが爪先立ち、遂には宙に浮き上がってしまった。伍部浄は、空中で手足をばたつかせたが、どうしても地面に降りることができなかった。
「提頭頼吒よ。あまりいたぶるのはやめてやれ」
毘楼博叉が見かねて助け舟を出した。
「毘楼博叉、こいつはどう見てもククノチ族にしか見えないが、ウゴロ族まがいの念動力と、見掛け倒しの妖力を持っている。どう言う素性の者かわかるか?」
提頭頼吒は伍部浄を宙吊りにしたままで、千里眼を持つ毘楼博叉にきいた。
「此奴はククノチ、ウゴロの混血で須弥の血は薄く、代わりに魔族の血が複数入っている。下賤の生まれの者の分際で、須弥族を騙るとはいかさま師もいいところだ。四天王が相手にすべき輩ではない」
毘楼博叉はいとも簡単に伍部浄の正体を見抜いた。
提頭頼吒が念動力を緩めたので、伍部浄はようやく足を地につけることができた。
「下賤ないかさま野郎は斬って捨てよう」
短気な毘楼勒叉は今にも剣を抜きそうだった。
伍部浄は背筋が寒くなった。
「まあ待て。まずは魔軍との戦だ。こやつのウゴロ勢も魔軍相手にはそこそこ役に立つだろう。我の先兵の手前もある」
武芸では四天王随一といわれる毘沙門が気の荒い毘楼勒叉をなだめた。
その時、伍部浄が持っていた静香の霊感鈴が鳴った。
「進軍の知らせだ!」
伍部浄は霊感鈴を持ち上げて叫んだ。
四天王は一斉にそれぞれの持ち場についた––––––いいところで静香の霊感鈴が鳴ってくれて伍部浄は救われた。
須弥軍は亜空間通路に整斉と進入し始めた。
時を同じくして、敵の背後に回り込んでいた毘羯羅の霊感鈴も鳴った。
「進軍」
毘羯羅の号令で夜叉軍の騎馬隊も速やかに行動を開始した。
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