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亜空間の戦士 弥への道(「亜空間の戦士 暗黒界編」として書籍化)  作者: 亜空間ファンタジー&弥剣龍
第四章 魔将軍
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2 大会戦

 須弥軍と伍部浄軍は亜空間通路の前で整列して待機していた。

 静香から進軍の合図がくるまでの間、伍部浄は手持無沙汰の四天王に試された。

「お前が須弥族の(すえ)だと言うなら、須弥族らしい妖力を使って見せてみろ」

 巨漢で剛力の提頭頼吒(だいずらた)が伍部浄に挑んだ。

 仕方なく伍部浄は言われるがままに、印を結び呪文を唱えて白象をつくり出した。

「須弥族の伝統で、俺の乗り物は天帝釈と同じ白象なのだ」

 伍部浄は胸を張って言った。

 提頭頼吒(だいずらた)はそれを見て、伍部浄の象の胴体の下に屈んで手を入れ、片手でぐいっと持ち上げた。

「お前の象は見掛け倒しなのか?こんなに軽いぞ」

 怪力の提頭頼吒(だいずらた)は片手で象を毘楼勒(びるろく)(しゃ)に放り投げた。

 毘楼勒(びるろく)(しゃ)は投げられた象を両手で難なく受け止めた。

「確かにこの軽さはまやかしだ。剛力の提頭頼吒(だいずらた)でなくても楽に投げられるぞ。ほれっ」

 毘楼勒(びるろく)(しゃ)は伍部浄にむかって象を投げ渡した。

 伍部浄は毘楼勒(びるろく)(しゃ)の真似をして両手で受け止めようとしたが、象の巨体に押し倒されて下敷きになった。伍部浄は反射的に念動力で身を守り、必死になって隙間をつくって象の腹の下から這い出した。危うく象の重さで押し潰されるところだった––––––提頭頼吒(だいずらた)毘楼勒(びるろく)(しゃ)が恐ろしい怪力で、象を軽く見せて伍部浄をからかったのだ。

「念動力が使えてよかったな。さもなければ今頃潰れて臓物が口から飛び出していただろう」

 提頭頼吒(だいずらた)は、まだ起き上がれないままの伍部浄を嘲って笑った。

 伍部浄は屈辱で緑色の顔が真っ赤になった。

「念動力が使えるなら、どれほど力があるか俺に使ってみろ」

 伍部浄は膝に手をついて立ち上がり、提頭頼吒(だいずらた)を念動力で持ち上げようとした。しかし、提頭頼吒(だいずらた)は大地に根が生えたように梃子(てこ)でも動かなかった。

 ムオーッ

 伍部浄が念動力を振り絞ると、逆に伍部浄のほうが爪先立ち、遂には宙に浮き上がってしまった。伍部浄は、空中で手足をばたつかせたが、どうしても地面に降りることができなかった。

提頭頼吒(だいずらた)よ。あまりいたぶるのはやめてやれ」

 毘楼(びる)(ばく)(しゃ)が見かねて助け舟を出した。

毘楼(びる)(ばく)(しゃ)、こいつはどう見てもククノチ族にしか見えないが、ウゴロ族まがいの念動力と、見掛け倒しの妖力を持っている。どう言う素性の者かわかるか?」

 提頭頼吒(だいずらた)は伍部浄を宙吊りにしたままで、千里眼を持つ毘楼(びる)(ばく)(しゃ)にきいた。

此奴(こやつ)はククノチ、ウゴロの混血で須弥の血は薄く、代わりに魔族の血が複数入っている。下賤の生まれの者の分際で、須弥族を(かた)るとはいかさま師もいいところだ。四天王が相手にすべき(やから)ではない」

 毘楼(びる)(ばく)(しゃ)はいとも簡単に伍部浄の正体を見抜いた。

 提頭頼吒(だいずらた)が念動力を緩めたので、伍部浄はようやく足を地につけることができた。

「下賤ないかさま野郎は斬って捨てよう」

 短気な毘楼勒(びるろく)(しゃ)は今にも剣を抜きそうだった。

 伍部浄は背筋が寒くなった。

「まあ待て。まずは魔軍との(いくさ)だ。こやつのウゴロ勢も魔軍相手にはそこそこ役に立つだろう。我の先兵の手前もある」

 武芸では四天王随一といわれる毘沙門(びしゃもん)が気の荒い毘楼勒(びるろく)(しゃ)をなだめた。

 その時、伍部浄が持っていた静香の霊感鈴が鳴った。

「進軍の知らせだ!」

 伍部浄は霊感鈴を持ち上げて叫んだ。

 四天王は一斉にそれぞれの持ち場についた––––––いいところで静香の霊感鈴が鳴ってくれて伍部浄は救われた。

 須弥軍は亜空間通路に整斉と進入し始めた。

 時を同じくして、敵の背後に回り込んでいた毘羯羅の霊感鈴も鳴った。

「進軍」

 毘羯羅の号令で夜叉軍の騎馬隊も速やかに行動を開始した。

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