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亜空間の戦士 弥への道(「亜空間の戦士 暗黒界編」として書籍化)  作者: 亜空間ファンタジー&弥剣龍
第四章 魔将軍
25/32

2 大会戦(続き)

 静香は神兵の軍団に進撃の指示を出した。

 攻撃隊形を取った軍団は、輪王大将の戦車師団を先頭にして魔街道に進入した。

 輪王大将の戦車は二連の石火矢を搭載しており、乗員の念動力で回転する大きな六輪で自走する。念動力が車輪の機構で増幅されるので、強力な念動師がいなくとも十分馬力と機動力があった。各車両は砲兵以外に、弓兵と槍を持った歩兵を十名ほど乗せていた。

 妙見大将の剣と長槍の歩兵師団、飛燕大将の飛行師団が続き、最後に青龍偃月刀を持った金剛大将の部隊が後詰めで入った。神兵の軍団は川の流れのように亜空間通路に吸い込まれていった。慎吾は全軍が通過してから、最後尾で霊山龍神宮を亜空間通路に進めた。

 魔街道を出た輪王大将の戦車師団は一列横隊に展開し、その後ろに妙見大将の歩兵師団がついた。

 進んでくる戦車を見て、集結していた魔軍の混成師団はおもむろに動き出した。魔軍は地上で迎え撃とうとする部隊、空中に飛んで頭上から攻撃しようとする部隊、地中に潜る部隊の三つに分かれた––––––地中魔族は誰も見たことのない種族だった。

 魔族の地上軍は奇怪でおぞましい姿をしていた。決まった形状がなく、触手が何本もあって、形の崩れた頭部には目と口が何箇所も裂けていて、見るだけでも不快な生物だった。

 武器を持っている者もいたが、その割合はむしろ少なく、自らの角や牙や爪や触手自体を武器にしていた。武具はつけていなくて無防備だったが、それは斬られても突かれも簡単には死なないことを意味していた。

 空に舞い上がった魔族の中には、念動力で浮遊してくる人型の種族と、翼を持っている種族がいた。翼を持っている種族の中にも、人型で手に武器を持っている者達と、鋭い(くちばし)と爪のある鳥型の者達がいた。

 飛燕大将の飛行師団は、鳥の翼の形をした飛行器具を背負っていて、鳥型魔族のスピードには太刀打ちできなかったものの、かなりの空中機動力があった。当初神兵は編隊を組んでいたが、一旦空中戦が始まると敵味方入り乱れた乱戦になった。

 輪王大将の戦車師団が突進しながら一斉に砲撃を開始した。輪王大将の石火矢は、爆裂弾ではなく、火炎弾を装備しており、大砲というよりは火炎放射器に近かった––––––爆裂弾は敵が身体の破片から再生増殖する増殖魔族の場合には逆効果になるからだ。

 火を吐く戦車は押し寄せる火龍の群れのように、魔族の地上軍を燃え上がらせ、蹴散らした。

 輪王大将の戦車の勢いは止めようがないと見えたが、魔軍の反撃は地中から来た。

 地中魔族は、尖った杭のような(くちばし)と爪を持っており、地中を驚くべき速度で移動し、戦車の進路の地面に大穴を開けた。穴にはまり込んだ戦車は次々と横転し、乗員は投げ出された。そこに地中から槍の穂先よりも長い魔族の爪が突き出され、神兵を串刺しにした。

 戦車が立ち往生しているところに、魔族の地上軍が押し寄せてきた。

 妙見大将の歩兵部隊の半数は剣を持って魔族の地上軍と戦い、半数は長槍を持って魔族の地中軍と戦うはめになった。整然とした隊形で戦うのを得意とする妙見大将の部隊は、意に反して戦列を乱されて乱戦に巻き込まれた。

 神兵と魔軍の戦いは地上でも空中でも混戦になり、今までの(いくさ)のようにすんなりとはいかなかった。

 静香は金剛大将の予備軍を温存しながら、自分自身は戦闘に参加せず、霊山龍神宮に留まって戦況を見守った––––––いままでずっと一剣士の意識だった静香は、全軍の指揮官として戦いを見るのは初めてだった。

 飛び出していって斬りまくりたい気持ちはあったが、甲魔を相手にした時とは状況が違った。おそらく魔軍のほうも先兵の存在を意識して、乱戦に持ち込む狙いがあったと思われた。

 第一撃で魔軍を圧倒することができなかった神兵の軍団が苦戦を強いられる中、魔軍の側面に四天王に率いられた須弥軍が突入した。

 須弥軍は得意とする三叉戟で魔軍を攻撃したが、三叉戟は獣魔を相手にした時ほどには効果がなかった。魔族は三叉戟で一度や二度突いただけでは死なず、太刀で分断するか、金剛杵で雷撃を直撃しないと殺せなかった。

 四天王は早々に三叉戟に見切りをつけて、剣に持ち替え、魔族の触手を斬り飛ばしながら、妖力で魔族を爆破して殺した––––––相手の周囲を真空にして内部からの圧力を掛けて破裂させる高度な念動力の技だ。軟体動物のような魔族は、刺しても殺せなかったが、柔らかい分、爆破するのは簡単だった。

 いったん効果的な魔族の殺し方がわかると、四天王は無類の強さを発揮した。四天王の向かうところ魔軍も手のつけようがなく、次々と細切れの肉片になって飛び散った。

 天帝釈は後方で白象の上から戦いを見守っていた。

 伍部浄の軍は須弥軍が魔軍に突入したのに、臆したように動かなかった。

 ほどなく魔軍の後方でも混乱が起こり始めた––––––敵の背後に回り込んだ毘羯羅の夜叉軍が突入したのだ。

 毘羯羅は大軍を相手取る時はその姿が変わった。腕が四対になり、馬上から八本の剣を風車のように振り回し、当たるを幸い斬りまくった。額には第三の眼が現れ、赤い光を照射して魔族のエネルギーを吸い取って壊死させた。吸い取ったエネルギーで毘羯羅のほうは力を増す。

 四対の腕で振るう八本の剣は、突いても斬っても簡単には殺せない魔族を、一瞬のうちにばらばらに切り刻み、止まることなく回転し続けた。剣が届く範囲では裁断された魔族の肉片が飛び散り、離れたところの敵は第三の眼に睨まれて枯れ木のように干からびて死んだ。毘羯羅の周囲では見る見るうちに魔軍が消し飛んでいった。

 恐るべき武術と妖力だ––––––

 静香は須弥族の四天王は無敵の武将と思ったが、もしかすると毘羯羅の鬼神の如き強さには及ばないのでないかと思った。

 須弥軍と夜叉軍の活躍で、神兵の軍団に対する魔軍の圧力は弱まった。その隙に妙見大将の部隊は、なんとか地中の魔族を掃討することができ、輪王大将の横転していた戦車は引き起こされて、再び石火矢を撃ちながら進み始めた。

 毘羯羅に率いられた夜叉軍の働きは目覚しかったが、少ない兵力で魔軍の密度の濃いところに深く入り込んだため、取り囲まれる形になった。毘羯羅の抜群の武勇にもかかわらず、兵力が少ない夜叉軍は急速に消耗していった。

 須弥軍も、四天王は強かったが、僅か五千の近衛軍は、多勢の魔軍に包み込まれて、戦っている兵の数は次第に減っていった。

 それでも伍部浄軍は戦闘に参加していなかった。

 伍部浄は、戦況を見守りながら、もし魔軍が勝ちそうならそちらに寝返ることを考えていた––––––四天王に嘲弄されて、須弥族の側についても自分が報われることはないことを思い知ったのだ。利に(さと)い伍部浄は、それならそれで自分は魔族の血を引く者として、魔族に自らを売り込めると思っていた。配下のウゴロ兵も何千年もの間、魔族に従属していた種族なので、伍部浄軍が魔軍に早変わりしても、何ら不自然なところはなかった。

 天帝釈は動かない伍部浄を無視して、四天王と近衛軍の戦いぶりを冷静に見守っていた。天帝釈はいつでも望む時に伍部浄を(ひね)り殺して、ウゴロ兵を我が物にできる。四天王が健在である限り、兵力の消耗は天帝釈にとってさしたる痛手ではなかった。

 混戦の中、神兵の軍は魔軍を押していたが、このままでは数の少ない須弥軍と夜叉軍は危うく見えた。

 静香が予備軍の金剛大将の軍団の投入時期を見計らっていた時、須弥軍とは反対側の側面に見知らぬ小部隊が現れ、魔軍に攻撃を仕掛けた。

「あれは衛門軍だ!」

 慎吾はロボット達の通信を聞き逃さなかった。

「いいタイミングで現れましたね。衛門でなくて衛門1が率いています」

 マイナミは目ざとく自分が複製した衛門1を見つけた。

 金色に輝く衛門1と透明な結晶質でできた衛門の複製の部隊は、僅か数十名だったが、レーザーと高熱放射を装備していた。

 まるで焼魔がこちら側についたように、衛門軍は高熱放射で魔族を次々と燃え上がらせた。高熱放射の射程距離は長く、魔軍は衛門軍のそばに寄ることさえできなかった。

 衛門軍は須弥軍や夜叉軍にも増して、破竹の勢いで進んだ。魔軍の戦列に少数の衛門軍がたちまちのうちに大穴を空けた。衛門軍は百発百中のレーザー射撃で、空中にいる翼を持った魔族も次々と撃ち落した。飛燕大将の飛行師団は、衛門軍の援護射撃のお陰で、遂に制空権を握ることができた。

 制空権を得た飛行師団は、須弥軍と夜叉軍を取り囲んでいた魔軍に、空中から矢を射かけた。空からの援護を受けた須弥軍と夜叉軍は、魔軍を切り崩して包囲を脱することができた。

 輪王大将の戦車は間断なく火炎弾を魔軍に浴びせ続けた。魔軍は戦車の石火矢と衛門軍の高熱放射の十字砲火を浴びて、兵力を大幅に消耗した。至る所で魔軍の兵の死骸が燃えていた。

 戦況は新降魔軍の優勢に傾いてきた。静香は依然として予備軍の金剛大将の師団を温存していた。

 衛門軍が来てくれたお陰でなんとか勝ち(いくさ)になりそうだ––––––

 静香はようやく勝利が見えてきたと思った。

 しかし、そのような期待とは裏腹に、戦況はまた一変した。

 突如強風が巻き起こって、衛門軍がいた場所の地面が深くえぐれ、そこにいた衛門軍は跡形もなく消え去った––––––何者かが密集隊形を取っていた衛門軍に反物質弾を使ったのだ。

 反物質弾は我の先兵の武器なので、これが衛門軍に対して使用されたことに、静香は驚いた。

 ()が魔軍を支援しているのか––––––

 静香の脳裏を嫌な予感がよぎった。

 静香は霊感で彼の存在を探ったが、キリタテとイヤシビの気配はなかった。

 そこに突如新手の魔軍の大部隊が現れ、包囲を脱したばかりの須弥軍と夜叉軍に襲い掛かった。慎吾の天眼にも静香の遠知力の網にも掛かっていなかったので、長距離の亜空間移動で忽然と降って湧いたとしか思われなかった。

 新手の魔軍は人型で素早く、剣技に長け、加えて妖力が強かった。衝撃波を発して相手を跳ね飛ばし、押し潰す力を持っていた。

 予期せざる軍勢が押し寄せたので、白象の上で戦況を見守っていた天帝釈も戦闘に巻き込まれた。

 魔軍は天帝釈に斬りかかったが、天帝釈は武器には手をかけず、妖力で魔族を叩き潰した。魔軍の兵士は見えざる巨大な手に押し潰され、肉塊となって地面に飛び散った。

 魔軍も対抗して周囲から衝撃波を放ったが、天帝釈はこれを妖力で跳ね返して受け付けなかった。逆に天帝釈は、より強力な衝撃波で魔軍の兵を束にして吹き飛ばした。

 しかし、新たに現れた魔軍はただの雑兵の集団ではなかった。当たるを幸い魔軍の兵を薙ぎ倒していた須弥軍の四天王の前に、異様な姿の四人の魔将が現れた。

毘楼勒(びるろく)(しゃ)、命は貰った」

 体中に十二匹の蛇が巻き付いた魔将は、八本の手と毘羯羅のような第三の目を持っていた。

「お前はグンダリ––––––」

 グンダリと呼ばれた魔将は、自分の体に飼っている十二匹の蛇を、毘楼勒(びるろく)(しゃ)にむけて放った。毘楼勒(びるろく)(しゃ)は蛇を剣で斬り落とそうとしたが、グンダリの蛇は目にもとまらぬ素早い動きで、毘楼勒(びるろく)(しゃ)の手足に巻き付いた。

 グンダリが呪文を唱えると、蛇は手枷足枷に変化して毘楼勒(びるろく)(しゃ)の動きを封じた。

 グンダリは動きが止まった毘楼勒(びるろく)(しゃ)に駆け寄って、一刀のもとに斬り落とした。斬られた毘楼勒(びるろく)(しゃ)が激しく緑色の光を吐き出して消えると、十二匹の蛇はまたグンダリの体に戻った。

 提頭頼吒(だいずらた)が斧で頭を砕かれて死んだ。

 三面八臂の魔将バトウが繰り出した剣と槍の攻撃を受け止めた提頭頼吒(だいずらた)は、三本目の腕が振り下ろした斧を受けられなかった。

「怪力だけでは(いくさ)はできぬぞ」

 提頭頼吒(だいずらた)をただの一撃で殺したバトウは、赤い肌の顔に薄ら笑いを浮かべた。

 毘楼(びる)(ばく)(しゃ)は、魔族と戦いながら、千里眼で毘楼勒(びるろく)(しゃ)提頭頼吒(だいずらた)が討たれたことに気付いた。毘楼(びる)(ばく)(しゃ)は強力な敵の到来を予想して身構えた。

 毘楼(びる)(ばく)(しゃ)は千里眼で敵が眼前に現れる瞬間を感知し、先んじて妖力で相手を爆破しようとした。しかし、毘楼(びる)(ばく)(しゃ)の千里眼は、魔将の第三の眼の光に惑わされた。魔将の姿が現れる前に先に光がきた。

 はっ

 毘楼(びる)(ばく)(しゃ)が妖力を放った時敵はまだそこにいなかった。次の瞬間、破裂してバラバラになって吹き飛んだのは毘楼(びる)(ばく)(しゃ)のほうだった––––––相手の魔将ニシュンバの妖力が、毘楼(びる)(ばく)(しゃ)の妖力を上回ったのだ。

 残された毘沙門(びしゃもん)は四天王の中で最も武芸に優れていた。その毘沙門(びしゃもん)の前に最強の魔将シュンバが立ちはだかった。シュンバは四面八臂で眉間に第三の眼が見開いていた。武具さえつけず条帛(じょうはく)()を纏っただけの無防備な姿だった。

「四天王の筆頭、毘沙門(びしゃもん)か」

 シュンバの声は落ち着いていた。

「いかにも」

 毘沙門は三叉戟を取り出して構えた。

 魔将は得物を構えることさえせず、印を結んで呪文を唱えた。


 オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ


「妖力頼みか」

 毘沙門の必殺の三叉戟が目にもとまらぬ速さでシュンバの胸を突いた。

 キーン

 胸を貫いたはずだった三叉戟の穂先が、金属音とともに折れてひらひらと飛んだ––––––シュンバは硬化の術を使ったのだ。

 魔将の顔がにやりと笑った。

「おのれっ」

 毘沙門はシュンバに衝撃波を見舞おうとしたが、構えたところを、グンダリとニシュンバの剣に左右から刺された。

「卑怯な!」

 毘沙門の叫び声は、脳天に振り下ろされたバトウの斧が頭蓋を割り裂く音で掻き消された。毘沙門は、全身から緑色の火花を散らせて消え去った。

 四人の魔将は、無敵と思われた須弥族の四天王をいとも簡単に葬り去った。四天王を失った須弥軍は、魔族の大軍の中に呑み込まれ、瞬く間にすり潰されていった。

 残り少なくなった夜叉軍の騎兵とともに奮戦していた毘羯羅の前に、(まばゆ)い白光が現れた。

 毘羯羅は馬を止めてその光に向かい合った。

 それは毘羯羅が長年怖れるとともに、待ち望んでいた瞬間だった。

「魔将軍か!」

 毘羯羅は光のむこうにいるはずの者に向けて、四対の腕で八本の剣を投げつけた。

 剣はことごとく光を貫いた。同時に毘羯羅は第三の目から致命的な赤い光を放った。

 その光を打ち消すように光の(なた)が毘羯羅に向けて走り、毘羯羅の体を甲冑ごと貫いた。光の鉈は上下に広がって、毘羯羅は縦に切り裂かれ、真っ二つになって落馬した。

 夜叉軍最強の勇将毘羯羅をもってしても、魔将軍には一矢たりとも報いることはできなかった。夜叉軍の兵士は最後の将が討たれたのを見て絶望し、あっという間に魔軍の海に呑み込まれて消えていった。

 魔族に寝返ろうと思っていた伍部浄だったが、戦闘に参加していなかった伍部浄の軍にも魔軍は攻めかかった。ウゴロ兵は念動力で鉄球を飛ばして応戦したが、魔軍は素早く鉄球をかわし、衝撃波で甲冑を着たウゴロ兵を殺した––––––到底伍部浄の妖力で戦える相手ではなかった。

 伍部浄はこれ以上戦場に留まると自分の命が危ないとみて、軍を捨てて霊山龍神宮に逃げた。こうなると自分の盾に使えそうなのは我の先兵だけだった。

 乱戦のさなか、魔軍を相手に強力な妖力を発揮していた天帝釈の前に、ヤマの老女、泥鬼、そして姫白龍の三人が現れた。

 泥鬼が素早く白象に同化して、白象を内部から殺した。

 天帝釈は白象が倒れる前に飛び降りた。

 そこにヤマの老女がヤマの銀の矢を放った。決して標的を外すことのない妖気に導かれた必中の矢は、天帝釈目掛けて飛んだ。

 ヤマの老女が驚いたことに、天帝釈は銀の矢を手でつかんで握り潰した––––––ヤマの妖気が敗れたのだ。

 天帝釈の強烈な衝撃波が、ヤマの老女を吹き飛ばした。

 それを見た姫白龍は本性を現して龍の姿になった。

 天帝釈は突然現れた白い龍に一瞬たじろいだ。

 龍は咆哮とともに一閃の白光を天帝釈に放った。天帝釈は妖力で受け止めようとしたが、龍の痛烈な一撃を受け切れず、肩口に傷を負ってそこから緑色の火花を撒き散らした。

「この小娘が」

 天帝釈は怒って龍に雷撃を放った。雷撃で直撃された龍は、姫白龍の姿に戻って転がった。

 その時、天帝釈の目の前に眩い白光が現れた––––––毘羯羅を殺したあの光だった。

「天帝釈よ、長かった」

 その声と同時に太い鉈のような光が天帝釈の胸に突き刺さった。

「お、お前は––––––」

 天帝釈は持ちこたえて雷撃を撃ち返そうとしたが、白光はますます強度を増した。遂に天帝釈の肉体は抗し切れず、緑色の光を激しく発して消散した。

 白光は直ぐに消え去り、魔将軍の姿は見えなかった。

 伍部浄は霊山龍神宮に逃げたが、魔軍は伍部浄を見逃さなかった。

 四面八臂の魔将が龍神宮に現れ、美紀と慎吾を衝撃波で吹き飛ばした。

 伍部浄は一人、魔将と向かい合う羽目になった––––––四人の魔将の筆頭シュンバだった。

「ま、待て。俺は魔族の血を引いている者だ。魔族の敵ではないんだ。いや、味方だ。魔族に協力したいんだ」

 伍部浄は魔族に寝返ろうとしたが、相手のほうは聞く耳を持たなかった。

「須弥族の血が流れている者は根絶やしにせねばならん」

「いや、俺には須弥族の血は一滴も流れてはいない。俺は魔族とククノチ族の混血だ」

「往生際の悪い奴め」

 伍部浄の言い分は聞かれず、シュンバは素早く走り寄って一刀のもとに斬って捨てた––––––静香が予知していた伍部浄の死は魔将の手で実現した。

 あっ

 静香は魔将の剣の柄に卍の紋がついているのに気付いた。

 静香が九頭龍卍刀に手を掛けた時、シュンバは我の先兵を無視して消え失せた。

「待て!」

 魔将を追おうとした静香を、カクリミの声が止めた。

「魔軍は引き下がった」

 カクリミが言う通り、戦場から魔軍は忽然と消えていた。

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