プロローグ:砂漠の中の
さくさくさく。ユウ達の足元では、乾いた砂がリズム良く鳴っていた。強い日の日差しに当てられ、砂は白く輝く。
ここは、大陸東部に広がる大砂漠。誰も、砂漠の向こうまで行ったことが無いのだという。それほどまでに広大で、生き物にとって厳しい場所であった。
砂漠に入ってからこれまで、ユウ達は言葉を交わしていない。口を開くだけで酷く疲れるからである。ユウとムーシャのおかげで、水は確保できているが、食料は<武国>から持ってきた分と、時折見つけて獲るバケモノの肉のみ。
限界が来ても、彼らは足を止めない。止めても死が残るだけ――そして、逃げ出しても、待つのは滅び。
<科学都市>。<武国>。そして科学長のアリは、<魔法都市>も同じように歪んでいると言った。
普通の人なら、<楽園サラダ>に行くだけで良い。あそこは唯一、誰もが普通に暮らしている国だから。子供が笑う国だから。そこに行って、人生をゆったりと過ごし、そうすれば世界は――少なくとも、自分を中心とした世界は平和だ。
だが、リゼリア達は違った。普通の人達と決定的に違う事――知っている、という事。いくら自分達が平和に過ごせようとも、すぐにその平和が崩れてしまうという事を。
――試合に没頭しようとも、四人――もしくはアネルを入れた五人でふざけようとも、この世界と、リゼリア達が元々いた世界が終わってしまうことは忘れてはいなかった。ずっと覚えていた。だからこそ、今まで歩いてきた。<楽園サラダ>に残りたい、という気持ちを、封殺して。
「……え?」
砂漠に入って、初めて口を開いたのは、リゼリアだった。彼女だけでなく、ムーシャ、アルト、ユウまでもがぽかんと口を開けたまま。
ユウが、目の前の景色と地図を何回も見比べた。ごしごしと、目を擦った。
「……嘘でしょ。こんな所に国がある訳が」
何度見ても、そこにあるのは国――しかも、水が豊富にある国だ。
混乱しながらも、アルトがしどろもどろに言う。
「え、っと、あれじゃない、砂漠の中だから誰にも知られてない、みたいな」
「……今まで誰にも、見られなかったの? ここ、いろんな探検家が挑んできてるのに?」
アルトの言った事も、あまり説得力が無い。リゼリアは、首を傾げながら、
「じゃあ、中に住んでいる人に聞いてみれば……」
と言いながら、国の方へと歩き出そうとするので、アルトが必死に止める。
「なんで止めんの?」
「や、野蛮な人達だったらどうするんだよ!? 今まで迷い込んできた人を全員殺してるかも……はっ! そのせいで誰にも知られてないんじゃ……」
アルトが口走った事が、一層事を重くさせる。
「え……じゃあ、殺されちゃうの?」
ムーシャが不安そうに言うので、アルトは慌てて言った。
「大丈夫だよ……多分。こっちにはカミもいるんだし」
ムーシャを除く三人は、心の中で付け足す。
ムーシャの大魔法もあるし、と。




