閑話:部屋
「あーあ、もう駄目なの?」
一人の女が、つまらなそうに息を吐いた。
女がいるのは、壁中に科学都市のホログラムの様なものが張られた部屋――その画面には、様々な人、国、砂漠などが映っている。
女の前にはコンピューターがあり、さながらそこは「管理室」の様であった。
彼女は、ずっとこの管理室にいるのだ。想像もできないほど、ずっと。
「火のカミが送って来た闘のカミ、空間捻じ曲げてせっかく<武国>に投げ入れてやったのに……。後ちょっとで完全に堕ちたのにね~……。堕ちたら、人として堕としてやろうと思ったのに、やっぱ駄目ね」
カンカンカンと、いらだち紛れにキーボードを叩く。
「全く、あの時火のカミが雷のカミを送ってくるの、気付いてればなあ……。でも、寝てたし。気付かなかったのも、仕方ないよね?」
つ、と細い指を走らせ、キーボードを光の速さで打つ。すると、新たに画面に移されたのは、青い髪の男の子、十歳程か。
「でも……何で、水のカミが生き返ってるの? それがさっぱり意味分かんないんだけど、ああもー、誰か教えてえ」
彼女がいくら嘆こうと、答えるものはコンピューターの機械音だけ。
「ま……。また殺しますかっ。ちょいとここに細工を……っと」
彼女が指を動かすたびに、地形が変わり、川の流れも歪み、いつしか<武国>ととある砂漠の間には、一つの国ができていた。
「名前かあ、――と名付けておこうかしら。人は数千人……っと」
にんまりと笑う彼女の顔が、恐ろしく醜い事を、指摘する者はいない。彼女が最後に、他のものと話したのはいつだったか。彼女自身、忘れているかもしれない、昔の日々。
「さあ――まだまだ、私の盤上なのよ? 皆、楽しく踊ってね?」
最後に見せた美し過ぎる笑みは、暗闇と化す管理室に溶けていった――
白騎士編、これにて終わりとなります。次から水上古都編です。
次回更新、12月7日




