表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/50

第45話


第45話

"最終形態の最期"


絶体絶命の危機を、突然現れた特殊兵器対策部隊の一同に助けられた結衣。


何よりも驚いたのは、部隊の中に、以前の騒動にて大怪我を負った女性、速水有紀奈が居る事であった。


「有紀奈さん…どうして…?」


「優子から電話が来てね。その時に、話を聞いたのよ。榊原町で何が起きているのか、それと、あなた達がこの町に居る事をね」


「え?どうして姉御が知ってるんです?」


「榊原町から逃げてきた知り合いが居たとかなんとか、言っていたような気がするわ」


「(知り合い…?誰だ…?)」


そこに、玲奈を抱えた女性隊員がやってくる。


「分隊長。治療が必要な人間が居ます。一度、本部に戻った方が良いと思われますが」


「…そうね。あなたはどうする?」


有紀奈はそう言って、結衣を見る。


「うーん…。実は今さっき、仲間が怪我人連れてここから離れたんですよ。そいつらが心配っちゃ心配なんですがね」


「そう…。それなら、怪我人はウチの隊員に任せて頂戴。私達でその仲間を…」


その時、有紀奈の話を遮るかのように、美術館の建物の方から、大きな物音が鳴る。


一斉に、銃を構える隊員達。


その音を立てた正体は、いつの間にか建物の上に移動していた、D-03であった。


「…随分としぶとい奴ね」


「生命力だけなら、世界一だと思いますよ…」


「…なるほど」


結衣の苦労を察した有紀奈は鼻で小さく笑った後、隊員達を見回しながらこう言った。


「火力に貢献する自信がある者だけ残りなさい!他は怪我人を連れて脱出!」


隊員達はそれを聞き、すぐに行動に移る。


高火力の銃を所持している戦闘要員はD-03に銃を構え、他の隊員達は玲奈を抱えている女性隊員の周りに集まる。


「その子は責任を持ってあなたが脱出させるのよ。良いわね?」


「りょ、了解しました…!」


有紀奈に念を押された女性隊員は緊張気味に返事をして、美術館の外にある部隊のヘリの元へと走り出した。


「にしても驚きましたよ…。まさか特兵部隊が私達を助けに来てくれるだなんて」


「あ、一応言っておくけど、私の独断よ」


「そりゃそうですよね。独断で来たりなんかしたら…え、独断?独断って独断?」


「独断は独断よ」


「毒弾?」


「多分違うわ」


結衣は予想外の言葉に驚き、彼女を見つめる。


「…独断って、許されるもんなんですかね?」


「許されざる行動でしょうね」


「えぇ…」


「まぁでも大丈夫よ。私は間違った事なんてしてないからね。それで処罰を受けたとしたなら、そんな間違った組織こっちから辞めてやるわよ」


「傲慢な方でございますなぁ…」


そこで、様子を見ているだけであったD-03が動き出す。


「弾はまだ残ってるの?」


「…多少は」


「…まぁ、私達に任せなさい。反則級の武器を用意してあるわ」


「反則級?」


有紀奈は答えずに、黙って背後を指差す。


結衣がそちらを見てみると、そこには1人の女性隊員が、大きなケースを開けている所であった。


その中に入っていた物を見て、苦笑を浮かべる結衣。


「そ、それは…」


「聞いた事くらいはあるでしょう?」


「実際に見たのは初めて…ですねぇ…」


ケースの中に入っていたのは、アンチマテリアルライフルと呼ばれる大口径の狙撃銃であった。


「M99…ですか?」


「えぇ。本当は別の銃を買おうとしたんだけど、対物狙撃銃はこれしか無いと言われたの」


「こんな銃…一体誰から…?」


「…企業秘密」


「企業秘密?あっ…ふーん…」


M99に銃弾の装填を終えた女性隊員が、スコープを覗いてD-03の姿を捉える。


しかし、それに気付いたD-03が、素早くその場から離れてしまった。


「…分隊長」


「わかってる…。手伝ってもらえるかしら?」


結衣を見る有紀奈。


「…何をですか?」


結衣はあえて、とぼけてみせる。


「陽動よ。奴の注意をこちらに向けて、その隙に対物狙撃銃で仕留めるの。良いわね?」


「拒否権は…無さそうですね…」


「勿論」


結衣は溜め息を吐いた後、しまってある銃を取り出そうとする。


「いてッ…!」


その時に走った左腕の痛みで、結衣は自分の左腕が折れている事を思い出した。


「…怪我をしたの?」


「ちょっと骨が折れただけですよ…。思い出すと痛いもんですなぁ…」


結衣は有紀奈に心配をさせない為に笑顔を作って見せたが、彼女にそんな笑顔は通じなかった。


有紀奈は近くに居た女性隊員を呼び、結衣の治療をするように命令する。


「大丈夫ですって…!本当に腕が折れただけですから…!」


「………」


有紀奈は口だけではわかって貰えないと判断し、結衣の左腕を銃の先端で軽く突っつく。


「いててててッ!」


「そんな状態で加勢してもらっても、却って足手纏いになるだけよ。素直に言う事を聞きなさい」


「うぅ…。わかりました…」


結衣は腕の激痛と彼女の優しさに免じて、女性隊員と共に美術館を離れた。


「…さて」


「どうするおつもりですか?分隊長」


M99を構えている女性隊員が、スコープから目を離して有紀奈を見ながらそう訊く。


「さっき言ったハズよ。私が囮になるから、あなたがその隙に仕留めて頂戴」


「ま、待ってください…。隊長が1人で囮を…?」


「他に誰が居るのよ」


「私が居ます」


「…え?」


聞き覚えのある、死んだハズの人間の声を聞き、思わず耳を疑う有紀奈。


驚きながら振り返ってみると、そこには梨沙と共に美術館から離れたハズの、恭香が居た。


「あなたは…?」


「峰岸恭香と申します。失礼とは承知の上、後ろで話を聞かせて頂いておりました。協力致します」


有紀奈は恭香の名前を聞き、彼女が死んだ恭子の妹だという事を察する。


しかし、その事については一切触れずに、有紀奈は彼女に頷いて見せた。


「…そういう事なら、お願いするわ」


「隊長…!」


恭香が誰の妹なのかなど知る由も無い女性隊員が、当然恭香の協力を止めようとする。


「良いのよ。彼女なら、きっと役に立ってくれるわ」


「…?」


「まぁ見てなさい。…さ、行くわよ。恭香ちゃん」


「はい」


「ちょ、ちょっと…!隊長…!」


困惑する女性隊員を無視して、有紀奈は恭香を連れてD-03の元へと向かった。


「…怪しまないのですか?」


「何を?」


「先程、まるで私の事をご存知であるかのように話しておられたので…。普通なら私のような人物の協力など拒否すると思いますが…」


「え?えぇ…まぁ…そうよね…」


それを聞いた有紀奈は少し動揺したが、愛想笑いで誤魔化す。


恭香は少しの間、有紀奈を睨むかのように横目で見つめたが、状況を考え、すぐに正面に向き直った。


「…へぇ、問い詰めないのね」


「私、人を疑う事は嫌いなので…」


「そ、そう…。良い心掛けね…」


「………」


「(うっ…。流石は峰岸恭子の妹…。慇懃無礼な態度が姉にそっくりね…)」


有紀奈は隣を歩く年下の少女を、何か怖い物でも見るかのような目でこっそりと見ていた。


「あの…」


「な、何…?」


その恭香に不意に話し掛けられ、冷静を装いはするが慌てて返事を返す。


「失礼ですが、お名前は…?」


「…そういえば、まだ言ってなかったわね。私は…」


「隊長ッ!」


2人は背後から聞こえてきた女性隊員の大声のお陰で、いつの間にか側面に回り込んでいたD-03の存在に気付く事ができた。


「危ないわね…!話くらいさせなさいよ…!」


突進してきたD-03を避け、苦笑を浮かべる有紀奈。


「私から話を切り出しておきながら、このような物言いをするのは失礼でありますが…お喋りは後に致しましょう」


「その方が良さそうね…」


有紀奈は使い慣れた銃、MP7A1を、恭香は市役所にて兵器達と交戦した際に梨沙から拝借した銃、グロック17を構え、臨戦態勢に入った。


「さっき言ったけど、一応もう一度言っておくわ。私達の目的はあくまでも陽動よ。深追いはしなくて良いわ」


「了解しました」


D-03に狙いを付け、引き金を引く2人。


「…銃は今回が初めて?」


「はい。触った事すらありませんでした」


「ふーん…」


「ふふふ…。そうは思えない、といった表情ですね」


「別に…。今更、驚きはしないわよ…」


「と言いますと?」


「あっという間に銃に慣れる事ができた人間なんて、今まで何人も見てきたからね。…人間、必死に生き残ろうとすれば、何だって覚えてしまうのよ。直にね」


2人はしばらくの間、歩み寄ってくるD-03に銃弾を撃ち込み続けてみたが、やはり反応は薄かった。


「ちっ…。下がるわよ…」


「…はい」


有紀奈は再装填をしながら、恭香は弾倉を抜いて残弾を確認しながら、後退する。


「弾、あるの?」


「いえ…。分けて頂けませんか?」


「生憎だけど、口径が違うわ。…こっちを使いなさい」


有紀奈はそう言って、自分の予備の銃、USPを取り出し、恭香に渡す。


「良いのですか?」


「えぇ。武器無しの木偶の坊になられると、こっちも困るからね」


「ふふふ…。ごもっとも…」


恭香は残弾数が少ない自分の銃を有紀奈に渡し、彼女の拳銃、USPを受け取って、それを構えた。


その時、有紀奈の耳に掛けてある無線機から、本命の攻撃であるM99を構えている女性隊員の声が聞こえてくる。


『分隊長。立場上命令するのは恐縮ですが、そのまま標的をそちらへ誘導してください。遠ざかった所で、不意打ちをします』


「ふん…。今回ばかりは聞いてあげるわ。了解」


有紀奈は足を止めずに、女性隊員の命令通りに後退を続けた。


「あの…。そろそろ良いのでは…?」


後退を続けながら銃を撃ち続け、ついに有紀奈から借りた方の銃も弾切れになった恭香が、有紀奈にそう訊く。


有紀奈は恭香には返事を返さずに、無線越しに女性隊員にこう訊いた。


「…どうかしら?こっちはそろそろ限界だわ」


『わかりました。少々不安ではありますが…合図をしたら伏せてください』


「何よ。誤射が怖いって言うの?」


『…念の為です』


「…仕方ないわね。わかったわ」


女性隊員にそう言って、有紀奈は恭香を見る。


「無線の声、聞こえてるわね?合図がしたら…」


「伏せる…ですね?」


「…遅れたら、頭が吹っ飛ぶわよ」


「ふふふ…。わかりました」


弾が無くなった恭香はどうする事もできなかったが、有紀奈だけは銃撃を止める事なく、撃ち続けながら合図を待つ。


そして、その時が来た。


『発砲します…!伏せてください!』


「了解…!」


銃撃を止め、抱え込むように恭香に腕を回して、そのまま地面に倒れ込む有紀奈。


それを見て不審に思ったD-03であったが、振り向いて女性隊員を見た時には既に、銃弾は発射されていた。


対物狙撃銃M99から発射された、12.7×99mmの大口径の弾丸。


その弾丸はD-03の頭部に命中し、頭部の上半分を吹っ飛ばした。


突然の衝撃に呆然とし、頭部を半分失った状態のまま、その場に立ち尽くすD-03。


身体の中のD細菌を既に使い果たしているD-03に、再生能力はもう無い。


しばらく経った所で、暴走によって異常なまでに巨大化したD-03の身体は、轟音と共に地面に倒れた。


「あの…」


「何?」


「私の協力…必要無かったような気がするのですが…」


先に立ち上がった有紀奈の手を借りながら立ち上がった恭香が、有紀奈にそう訊く。


訊かれた有紀奈は吹き出すように笑った後、こう答えた。


「…かもね」


第45話 終




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ