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第44話


第44話

"最終形態の暴走"


跡形も無く消し飛んだと思われたD-03。


しかし、それは見間違いであった。


「亜莉紗ッ!」


突然結衣に名前を呼ばれ、何事かと思い、身構える亜莉紗。


彼女が辺りを見回す前に、いつの間にか背後に居た、消し飛んだハズのD-03が彼女の首を掴む。


「う、嘘でしょ…?」


あまりの恐怖に、ひきつった笑いが浮かぶ亜莉紗。


亜莉紗は何の抵抗もできずに、近くの木に投げつけられた。


「玲奈!行け!」


「わかった!」


結衣は陽動の為にD-03の元へ、玲奈はぐったりと倒れている亜莉紗の元へ、同時に走り出す。


それを見て、恭香も梨沙に呼び掛ける。


「私達も加勢しましょう!綾崎さん!」


「え…?あれと戦うの…?」


「この期に及んで何を言っているのですか!?ほら行きますよ!」


「うぅ…!わかったわよ、もう!」


2人は、D-03と交戦している結衣の元へ走っていく。


「ちょ、ちょっと2人共!何来ちゃってんのさ!?」


「私達も戦います!何もせずに見てるだけだなんて耐えられません!」


「だからって…!」


そこで、結衣の言葉をD-03の回し蹴りが遮る。


辛くもそれを避ける事ができた結衣であったが、幾度と無くD-03に話を遮られた彼女は我慢の限界に達した。


「この野郎…!あったまきたッ…!」


「結衣さん…?」


梨沙に名前を呼ばれるが、こうなってしまっては結衣に声は届かない。


「覚悟しろやおらぁぁぁッ!」


結衣はD-03に向かって突進していった。


「…どーすんの?峰岸」


「えーと…怪我人の保護に…向かいましょう」


「…りょーかい」


加勢してはむしろ邪魔になりかねないと判断した2人は、それぞれ紗也香と亜莉紗の元へ向かった。



「亜莉紗さん…!亜莉紗さんッ…!」


先に亜莉紗の元へ駆けつけた玲奈がずっと彼女を揺すっているが、亜莉紗は反応を見せない。


そこに、恭香が駆けつけてきた。


「意識は…?」


「無いです…。ずっと呼び掛けてみてはいるんですが…」


玲奈の言葉通り、頭から血を流している亜莉紗に目覚める様子は無い。


恭香は一度D-03を見て、敵がこちらに気を向けていない事を確認すると、亜莉紗を肩に背負って玲奈にこう言った。


「今、綾崎さんが藤堂さんの元へ向かっています。怪我人は私達に任せて、あなたはお姉様の元へ向かってください」


「わ、わかった…!」


思わず恭香が年上だという事を忘れさせる程の彼女の丁重さに少々困惑しながらも、玲奈は結衣の元へと走っていく。


「ふふふ…。あの方々なら、心配する必要はありませんね」


恭香は合流した大神姉妹を見て小さく笑った後、亜莉紗を背負ったまま梨沙の元へと向かった。



その頃、梨沙は…


「大丈夫ですか?藤堂さん」


「うぅ…。申し訳ないです…」


想像よりも重傷ではなかった紗也香を見て、少し安堵している様子が見えていた。


「立てます?何なら肩貸しますけど」


「面目無いです…」


「いえいえ」


ふらつきながらも、梨沙の肩を借りて立ち上がる紗也香。


「上条さんは…?」


「今、峰岸が向かいました。とりあえず、私達で怪我人の保護って魂胆です」


「なるほど…」


大神姉妹の2人がD-03と交戦している光景を見て、紗也香は納得した。


「綾崎さん」


そこに、紗也香を背負っている恭香がやってくる。


「…そっちは重傷ね」


「頭を打ったらしくて…。一刻も早く治療が必要です」


「そういう事なら、急ぎましょ」


梨沙と恭香は2人を連れて、美術館から離れていった。



「…結衣姉」


「話し掛けんな!今この常識知らず野郎に鉄槌を…」


「結衣姉ッ!」


「はい!」


梨沙達を逃がす為、D-03と対峙している大神姉妹。


「怪我人は全員運んだらしいから、少し時間を稼いだら、私達も逃げよう」


「逃げるだと?お前それでも大神結衣様の…」


「………」


「(三白眼ッ…!?)」


玲奈の提案により、撃破は断念して、あくまでも時間稼ぎの為に交戦する事となった。


「あ、そういえば…」


「何?」


「さっき戦ってて気付いたんだけど、あいつ、亜莉紗の爆弾をもろに喰らって以降、ダメージが通りやすくなった気がするんだよね」


「…根拠は?」


「んーなんつーか…リアクションが大きくなったって感じ?」


「リアクション…ね」


近付いてくるD-03。


「ま、何はともあれ、始めますか!」


「はいはい…」


2人は武器を構えて、迎撃態勢を取った。


始めに、結衣が乱射した2丁ハンドガンの銃弾が、先程の亜莉紗の爆弾によって全身が焼け焦げているD-03の身体に撃ち込まれていく。


怯みこそはしないものの、一瞬だけ隙が生じた所に、玲奈が滑り込んだ。


そのスライディングは回避されたが、玲奈にとっては本命の攻撃ではなかったので、次のD-03の踏みつけを軽々と避ける事に成功する。


起き上がりながらのバク転で回避した玲奈は、間髪入れずに2本のナイフで連続攻撃を仕掛ける。


その攻撃を、D-03は一度も避けずに身体で受け止めた。


不審に思った玲奈が攻撃を止めて素早く後ろに下がった瞬間、D-03が彼女に手を伸ばす。


玲奈は後ろに避けて安全に距離を離す事もできたが、背後で結衣がリボルバーを構えている事に見もせずに気付き、その場でしゃがんで避ける。


大神姉妹の阿吽の呼吸に驚き、回避を忘れるD-03。


結衣が発砲したリボルバーの銃弾は、D-03の眉間を貫いた。


「ようし、上出来だな」


「ちょっとタイミングずれちゃった。ごめん」


高威力の銃弾を眉間に喰らって後ろに吹っ飛んだD-03は、ふらふらと立ち上がって2人を睨む。


「へっ…。もうお前なんか怖かねぇんだよ!」


「亜莉紗さんのお陰だね」


「その点についてはちょっと悲しい」


「同感」


2人が手を出さずに観察していると、D-03に、異変が訪れた。


「な、何だ…?」


突然苦しそうに悶え始めたかと思えば、右腕の筋肉が痙攣し始める。


「厄介だなぁ…」


右腕が膨張して破裂し、大きな爪が現れた。


「畜生…。爪出しゃ何でも良いと思ってやがるな…」


「誰に言ってるの?」


「そりゃあお前…製作者だよ…」


「何の?」


「兵器の」


「あぁ…」


そんな2人に、D-03が例の凶悪な爪で突然襲い掛かる。


それを、難なく回避する2人。


背後に回り込んだ2人の方へD-03が振り向いた際、玲奈がとある事に気付いた。


「…息切れしてる」


「ほよ?」


「息切れだよ、息切れ」


結衣も、改めてD-03を見てみる。


「…確かに」


D-03の呼吸は、荒々しいものになっていた。


そこで玲奈に、1つの推測が浮かぶ。


「あいつ…自分の身体を制御できなくなってるんじゃないかな…?」


「そんな事あるのかい?」


「知らないけど…。でも、あの様子を見てよ。自分から右腕をああいう風にしたようには見えないよ。…ほら、また」


D-03の胴体部分が膨張して先程と同じように巨大化した事により、玲奈は推測に確信が持てた。


「なるほどね…。確かに自分で操ってるワケじゃなさそうだ」


「でしょ?つまり、私が言いたいのは…」


ナイフを器用に回しながら、D-03に歩み寄っていく玲奈。


「もう一押し…って事」


「…よし、やっちまうか!」


結衣もリボルバーに銃弾を装填し、玲奈の横に付いた。


2人の臨戦態勢に応えるかのように、もはや先程までの風貌が微塵も見えないD-03も、爪を振り回しながら2人に突進していく。


「そんな攻撃当たるかよ!」


「喰らったら即死だと思うから、油断はできないけどね」


それぞれ左右に分かれて、それを回避する2人。


D-03は振り返って2人の姿を視界に入れようとしたが、それよりも前に玲奈のナイフが顔面に突き刺さり、結衣のリボルバーの銃弾が左腕の付け根に直撃した。


突き刺さったナイフの2本の内の1本が右目を潰し、撃ち抜かれた左腕はもげて無くなる。


D-03は片目片腕となった。


「勝てそうだな。うむ」


「結局、こうなるんだね…」


ラストスパートと言わんばかりに、D-03に自ら接近していく2人。


しかしその時、予期せぬ乱入者が現れた。


「うおっ!?マジかよ嘘だろお前!?」


2人は慌てて立ち止まり、乱入者に対して身構える。


その乱入者とは、先程まで2人が居た廃ビルにて彩と交戦していた、D-13であった。


「やばいよ結衣姉…!こいつらが手を組んだら…!」


「いや、あの黒服野郎は味方と共闘するようなタマじゃないハズ…」


結衣の推測は当たっているのか、D-13はD-03を睨み付けるかのように見つめながら刃物を構えている。


しかし、すぐに視線と刃物を、こちらに向けた。


「なっ…!この意気地無し!」


「臨機応変な奴だね…」


そんな2人にはお構い無しに、D-03は結衣に、D-13は玲奈に襲い掛かる。


どちらの兵器も瀕死に近い状態ではあったものの、それは連戦によって疲労している大神姉妹の2人も似たようなものであった。


敵のラッシュを切り替えせずに、守勢に回ってしまう2人。


しばらくは耐える事ができていたが、先に玲奈がナイフを弾かれ手放してしまい、無防備となった所に蹴りを喰らってしまった。


「玲奈ッ!」


それに気を取られた結衣も、D-03のなぎ払い攻撃の餌食になる。


その際に折れたのか、結衣の左腕が動かなくなってしまった。


「いってぇなぁおい…!」


辛くも立ち上がり、追撃は回避する結衣。


しかし、一息つく間もなしに、D-13が刃物で斬り掛かってくる。


背後には、爪を振り回しているD-03。


「挟まれちゃいましたっ!…っと!」


結衣はD-13の攻撃と同時に大きく跳躍し、D-13の頭を踏みつけて、窮地から脱出した。


そのまま倒れている玲奈を回収して、2体の兵器が居る方に顔を向ける。


そして、引きつった苦笑いを浮かべた。


「増えてる…増えてない?」


いつの間にか、今まで何度も相手にしてきた巨大な爪を持つ大型兵器、D-07が、敵の中に混じっていた。


「冗談はよしてくれ…。ただでさえ勝てっこねぇのに…!」


走って逃げ出す結衣であったが、玲奈を抱えながらの移動では全力疾走などできるハズもなく、あっという間に追い付かれてしまう。


「うわぁぁぁっ!もうダメだぁぁぁっ!」


結衣が情け無い声で空に向かってそう叫んだ瞬間、彼女を捕まえようとしたD-13の動きが、ピタリと止まった。


同時に、諦めて走る事を止めた結衣が派手に転倒する。


そして次の瞬間、その場を弾幕が支配した。


「撃て!」


聞き覚えのある女性の号令と共に、いつの間にか辺りの木陰や美術館の建物の上などに配備されていた軍服の人物達が、兵器達を一斉に撃ち始める。


アサルトライフル、ヘビーマシンガン、スナイパーライフル、様々な銃器による銃弾の嵐に晒された兵器達は、蜂の巣などという程度では済まなかった。


「な、何が起きたんでしょーか…?」


銃声が止み、突然の事に唖然としながらも、ふらふらと立ち上がって辺りを見回す結衣。


銃を構えている人物達が着ている軍服には、見覚えがあった。


「あの軍服…もしかして…」


「間に合って良かったわ」


背後から聞こえてきた、聞き覚えのある声。


結衣は振り返って、その人物の名前を口にした。


「有紀奈さん…!」


第44話 終




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