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第37話


第37話

"仲間の元へ"


「1つだけ教えて。姉さん」


「なーに?茜」


D-03との決着をつける為に、晴香達と分かれて美術館に残った神崎姉妹の2人。


「どうして、私を選んだの?」


「あら、気になる?」


2人はD-03の事などそっちのけで、会話をしていた。


「そりゃ…ね」


「うふふ…。たまには、妹の成長をこの目で見てみたいって思っただけよ」


「また冗談ばっかり…。たまには本当の事を…」


「あら、心外だわ。本当よ?」


「…え?」


「あなたは私の大切な家族…。この世に1人しか居ない、たった1人の血を分けた妹なんだから」


「…からかってるの?」


「そう思う?」


「ッ…」


「うふふ…。気恥ずかしくなるとそっぽを向く癖、昔から直ってないわね」


「だ、黙りなさい…!」


見る見るうちに顔が真っ赤になっていく茜を見て、彼女を更にいじめたくなる葵。


しかし、それは叶わず、2人に向かってD-03が液体を吐き出した。


「残念…。また今度ね」


「な、何が今度なのよ…?」


「次は…もっといじめてあげる…」


「(うぅ…もうやだこの人…)」


茜はいつの間にか、完全に葵に主導権を握られてしまっていた。


「さて、まずはこいつをどうにかしないとね」


「…そうね」


余裕そうな笑みを浮かべながら髪を掻き上げる葵と、足をぶらぶらと振ってほぐす茜。


D-03はそんな2人に向かって、おぼつかない足取りで走り出した。


2人は左右に分かれて、走ってくるD-03を回避する。


D-03は2人が視界から消えた事に気付き、すぐに背後に体を向ける。


しかし、2人の姿を確認する前に、D-03は茜と葵に同時に顔面を蹴りつけられた。


「動きはとろいんだけど…」


「あの液体がね…」


脅威の対象はやはり、2人共に同じもの。


ひとたび浴びたらアウトと思われる、酸性の液体である。


蹴り飛ばされたD-03がふらふらと立ち上がり、その液体を2人に吐き飛ばす。


再び回避する2人であったが、先程と違い、今回の液体は範囲が広かった。


「ッ…!」


回避が少し甘かった茜の肩に、液体が微量付着する。


幸いな事に茜自身に被害は無かったものの、彼女の服の肩の部分が恐ろしい勢いで溶けてしまった。


「大丈夫?」


「なんとか…。肩がいい感じにセクシーになっちゃったけど」


「それは良かったわね…」


茜は服の溶けた部分よりも下の布の部分も、自分で破り捨てる。


「あらまぁ、大胆な事」


「脇フェチにはご褒美ね」


「黙りなさい」


その時、D-03が再び、2人に向かって走り出す。


それを見て、同時に構える2人。


「この一撃で終わらせましょう」


「正確には二撃ね」


「年上の揚げ足を取るのは止めなさい」


「あら、ごめんあそばせ」


突進してくるD-03。


「今よ!」


「ちぇすとっ!」


2人は同時に、D-03に後ろ回し蹴りを放った。


途轍もない衝撃に耐える事ができなかったD-03の背骨が、真っ二つに折れる。


上半身がだらんとぶらさがり、その体勢のまま、D-03は地面に倒れた。


「姉さん。蹴りのフォームが雑ね」


「私は剣術専門なの。まぁ、あんたに負けないくらいの自信はあるけど」


「あら、負け犬の遠吠えが聞こえるわ」


「なんですって?」


「あら、やる気?」


その時、倒れているD-03の体が、びくんと跳ね上がる。


「…茜」


「…何?」


痙攣しているD-03を見て、苦笑を浮かべる2人。


「第5形態なんて…無いわよね…?」


「無い…と願うわ…」


2人の視線を浴びる中、D-03はゆっくりと起き上がる。


「まさか…ね」


D-03の体が、第5形態への進化を遂げ始めた。




一方…


「お姉ちゃん。今からどこ行くの?」


「わ、私に訊かないでよ…」


他の仲間達を探しに、神崎姉妹の2人と分かれた赤城姉妹の2人。


「はぁ…。お姉ちゃんってさ、家事以外取り柄無いよね」


「な、なんですって…ッ!?」


探すのは良いものの、2人に心当たりなどがあるハズも無かった。


「事実じゃん。確かに料理はおいしいけど、こういう状況だと至って無能。至極無能」


「うぅ…。そこまで直球で言わなくても…」


2人が現在歩いている場所は、他の仲間が居る廃ビルとは遠く離れた場所。


合流は、極めて困難に思えた。


「はぁ…。しっかり射撃訓練してるんだけどな…」


「努力だけなら誰でもできるよ。結果を残そうとするのが大事なの」


「実の妹に説かれるなんて思ってもいなかったわ…」


「頑張ってね。凡人なりに」


「…そろそろ泣くよ?」


「ご自由に」


その時、風香が偶然視線を向けていた、遠くにあるビルの最上階の窓ガラスが、突拍子も無く割れる。


「…やっぱ私は非凡かも」


「え?」


「行くよ。多分交戦中」


「ちょ…!待ってよ…!」


風香が向かった建物は、他の仲間達が居る廃ビルであった。



一切スピードを落とさずに走り続けた結果、2人は廃ビルに5分で到着した。


「最上階だったっけ」


廃ビルを見上げる風香。


少し遅れて到着した晴香は、膝に手をつきながら肩で息をしており、疲労困憊といった様子であった。


「少しは…優しくしてよ…」


「凡人に合わせてる暇は無いの」


晴香を置いて、さっさと廃ビルの中に入っていく風香。


すると、入口にて見張りをしていた、亜莉紗と紗也香と恭香の姿を見つけた。


3人の中で、一番早く風香に気付いたのは亜莉紗。


「あ、風香ちゃんだ!」


「………」


「え、何その嫌そうな顔は…」


続いて、一度顔を合わせた事がある紗也香も彼女に話し掛ける。


「またお会いしましたね」


「…誰だっけ?」


「キングの部下の者ですよ。昨晩、神崎さんとご一緒だったと記憶していますが」


「あぁ、あの時の人か。確か…藤堂…」


「藤堂紗也香です」


「(堅いなこの人…)」


そして、最後の1人である恭香には、珍しい事に風香の方から興味を抱いた。


「恭香さん…だったっけ。てっきりもう脱出したかと思ってたよ」


「ふふふ…。ちょっと、確かめたい事がありますので…」


「ふーん…」


自分から話し掛けたにも関わらず、風香は会話自体には興味を持たずに、建物の奥へ歩いていく。


そんな彼女を、亜莉紗が呼び止めた。


「あ、どこ行くの?風香ちゃん」


「上」


「上?」


「上」


相変わらず愛想の欠片も無い風香に、苦笑を浮かべる亜莉紗。


「…他の人達は?」


風香のその質問には、紗也香が答えた。


「今回の騒動を引き起こした黒幕である沢村明美を追って、この建物の最上階に向かいました。向かったメンバーはキングと雪平さんと綾崎さんと、大神姉妹のお2人です」


「ふーん…。なんで藤堂さん達だけ残ってるの?無能だから?」


「…私達はキングの指示の元、沢村明美が逃げ出さないよう見張りをしているのですよ」


「へー」


愛想が無いだけではなく礼儀も無い風香に、普段滅多に表情を変える事が無い紗也香でも思わず苦笑を浮かべる。


そこに、晴香がやってきた。


「亜莉紗さん!お久しぶりです!」


「おー晴香ちゃん!おっすおっす!」


顔馴染みであった亜莉紗の事はわかったものの、他の2人は初対面。


「えーと…」


「キングの部下の藤堂紗也香という者です」


「キング…明美さんの事だっけ…。あ、私は…」


「赤城晴香さんですね。和宮町の生存者であると、キングから伺っております」


「は、はぁ…」


晴香は自分よりも年上だというのに堅すぎる紗也香の態度に、少々困惑気味であった。


「…あれ?」


少し離れた場所で壁にもたれ掛かっている恭香を見て、驚く晴香。


「お初にお目にかかります。峰岸恭香と言う者です」


そう言った恭香の笑顔は、晴香が覚えている彼女の姉、恭子の笑顔によく似ていた。


「(そっか…。恭子さんの妹さん…か…)」


彼女が姉の死を既に知っているのかはわからないが、晴香はその事については触れずに、笑顔で手を差し出した。


「…赤城晴香です」



その後、歩美に見張りをするよう言われた3人はそのままその場に残り、赤城姉妹の2人は最上階へと足を進める事にした。


「それじゃあ、私達は上の様子を見てきますね」


「うん。気をつけてね!」


笑顔で見送る亜莉紗に、晴香は笑顔を返して階段に足を掛けた。


「お姉ちゃん」


3人に声が届かない所まで来た所で、風香が晴香を呼ぶ。


「…気付いてるよね?」


「…恭香さんの事?」


「うん」


「………」


晴香は不意に立ち止まってしばらく黙り込んだ後、再び階段を登りだしてこう言った。


「…知らないままでも、良いんじゃないかな」


「もう居ない姉を、ずっと探し続けさせる気?」


「確かにそういう言い方だと、酷い事のように思えるけど…」


「酷い事じゃん」


はっきりしない様子の晴香に、風香は辛辣な様子。


そんな風香に、晴香は弱々しく笑ってこう言った。


「…それでも私は言いたくないな。私のたった一言で、恭香さんはきっと絶望しちゃう。…そんなの、私は耐えられない」


「………」


風香は何も言わずに、晴香の背中を見つめた。



それから2人は、最上階に着くまで一言も喋らずに、ひたすら黙って階段を登り続けた。


「…ここが最上階みたいだね」


最上階に到着した所で、風香が口を開く。


「さ、あなたの天性の勘で、お姉ちゃんにみんなの居場所を教えてくれる?」


「うっわ、すごい嫌味な言い方…」


「悪かったわね」


晴香は先程風香に無能と言われた事を、まだ引きずっているようであった。


そんな晴香を、風香はいたずらっぽい笑みを浮かべながら更に煽る。


「うん、わかった。無能なお姉ちゃんの為に、有能な妹である私が直々に道を教えてあげるよ」


「うぅぅぅー…!」


風香は返り討ちに遭って顔が真っ赤になっている晴香を無視して、通路を適当に歩き始めた。


「………」


しばらく歩いた所で、不意に立ち止まる風香。


「ここ」


「え?」


風香は突然、近くの扉を蹴りつけて開ける。


そこは、彩とD-13が交戦していた大部屋だった。


しかし、一見特に変わった箇所は見当たらない。


「何も無いわよ…?」


「いや…気配が…。どっちかと言うと…嫌な気配…」


風香の勘は、当たっていた。


「…誰?」


晴香が部屋の奥にある机の後ろに、人影を見つける。


その人影は、彩だった。


「雪平さん…!?どうしてここに…!?」


彩はゆっくりと顔を上げて、晴香を細目で見上げる。


「…晴香ちゃん?」


「こんな所で何をしてたんですか!?それに、息が荒いですよ…!?」


「うふふ…。ちょっと…怪我しちゃってね…」


彩は、右腕が無かった。


「…その腕どうしたんですか?」


思わず、声が震える晴香。


「化け物にやられたの…。まぁお返しに、そこの窓から突き落としてあげたけどね…」


彩は笑みを浮かべて晴香を安心させようとするが、晴香はただ絶句するだけであった。


そんな傍ら、風香は彩の話を聞いて、心の中に引っ掛かりを感じていた。


「(突き落とした…?窓が割れた時、何かが落ちた様子は無かったけどな…)」


その引っ掛かりが、徐々に胸騒ぎへと変わっていく。


「(って事は…まさか…)」


その時、2人が入ってきた部屋の入口の扉が、ゆっくりと開いた。


第37話 終




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