表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/50

第33話


第33話

"沢村姉妹の再会"


最上階に到着した一同は、市役所が見渡せる窓がある部屋へと向かった。


「位置的には、こっちね」


いつもの事ながら、先頭を歩く歩美。


続いて大神姉妹の2人、梨沙、彩と並んで進んでいた。


「梨沙ちゃん」


一番後ろに居る彩が、前に居る梨沙に呼び掛ける。


「何ですか?」


「黒幕に会ったら、どうするつもりなの?」


「………」


梨沙は、彩が何故それを訊いたのかがわからなかった。


「もしも相手が殺したいって言ったら、はいどうぞって言って、素直に殺されるつもり?」


「それは…」


「それは?」


黙り込む梨沙。


すると、梨沙の前を歩いている結衣が振り返って、梨沙の顔を見ながらこう言った。


「私にはやっぱり、この子が恨みを買うような子には見えないけどねぇ…」


「…心当たりはありません」


「そりゃそうだよね。案外、食い物の恨みとかだったりして」


冗談を言った結衣に、玲奈が鼻で笑いながらこう言った。


「だとしたら、黒幕は結衣姉で決まりだね」


「貴様実の姉に向かって何という口を…」


「事実じゃん」


「お前だって貧乳貧乳言ったらナイフ取り出すじゃねぇかよ!この貧乳!」


「………」


「羨ましいかぁ~?ほれほれお姉ちゃんの大きな胸に飛び込んできても良いんだぞ~」


「…うぅ」


「(え、泣いてる…?)」


「バカやってないでさっさと行くわよ…」


いつの間にか立ち止まっていた一同に気付いた歩美が、溜め息混じりにそう言った。



数分後、一同は目標の部屋であると思われる場所の扉の前に到着する。


「ここね」


「明美。黒幕が本当に居たら、どうするのよ?」


今更ながら、彩がそう訊く。


「話を聞いて、気に入らなかったら抹殺するわ」


「えぇ…」


一方で、大神姉妹の2人は先程の梨沙の様子が気になり、彼女に話し掛けていた。


「それで、どうするのかな?梨ぃちゃん」


「り、梨ぃちゃん…?」


「この人特有のセンスの無いあだ名付けです。気にしないで良いですよ」


「は、はぁ…」


おもむろに、自分の意思を話し始める梨沙。


「…とにかく話を聞きたいです。私を殺したい理由を」


「うーん…理由ねぇ…」


梨沙の言葉を聞いた結衣は、腕を頭の後ろで組みながらこう言った。


「もしかしたら、理由なんて無いのかもよ?」


「…え?」


思わず、結衣を見つめる梨沙。


「いや、ただの勘。でも、殺されるような覚えなんて無いんでしょ?」


「確かにそれは…ありませんけど…」


「ここまで大規模な事をする奴って、大抵何考えてるかわかんないからねぇ。明美みたいに、変人だったりしてね」


「明美さん…?」


「あれ、知らなかった?あいつは、その辺にうろついてる患者の生みの親だよ。ちょっと前に、町を1つ滅ぼしやがったのさ」


「和宮町…でしたっけ?」


「そうそう。あいつが何考えてるかわかんないような奴だから、今回の黒幕も変人だと思うって話。偏見かもしれないけどね」


「………」


理由も無しに狙われる自分。


何故自分なのか、梨沙はますます黒幕の意図がわからなくなった。


「お喋りはそれぐらいにしなさい。そろそろ行くわよ」


扉に手を掛ける歩美。


他の4人はそれぞれ自分の武器を手に持ち、気を引き締める。


「…さて、扉の向こうには誰が居るのかしら?」


歩美はそう呟いて、扉をゆっくりと開けた。


一同は一斉に部屋に飛び込み、部屋の中に敵影が無いかを確認する。


敵影を見つけた者は居なかったが、歩美が正面に、不審な物を見つけた。


「………」


窓際に置いてある、大きな背もたれが特徴的な黒い革の椅子。


一同がそれを見つめていると、その椅子がゆっくりと回り始め、そこに座っている人物、沢村明美が一同に顔を見せた。


「…どういう事なんだい、こりゃ」


結衣が歩美と明美の顔を見比べながら、苦笑する。


髪型だけは違うものの、そっくりな顔つきに驚いたのは他の一同も同じであった。


しかし、その顔を見て一番驚いたのは、明美の姉である、歩美だった。


「あ、明美…?明美…なの…?」


「久しぶり。歩美姉さん」


2人の会話を聞き、一同は再び驚く。


「ちょっと待った…。あなた、今明美って言わなかった…?」


彩の言葉に、歩美は明美を見つめたまま、ゆっくりと頷く。


すると、歩美が放心している事に気付いた明美が、くすくすと笑って話し始めた。


「簡潔に説明しますね。あなた達と一緒に居る人物は沢村歩美、私はその妹の沢村明美です」


一同が驚いていた理由は、2人の顔が瓜二つであり、姉妹だった事。


「沢村明美…か」


しかし、そう呟いた彩だけは様子が違った。


「…雪平さん?」


「ようやく思い出したわ。最後に会ったのは何年前だったかしら」


「…その節はお世話になりました。今更だけれど、感謝しておきます」


「うふふ…。今更ね」


「あ、あの…」


状況についていけない梨沙が、彩の服の袖を引っ張る。


「知り合い…なんですか?」


「んー…。まぁ、そんな所ね」


すると、ようやく落ち着きを取り戻した歩美が、彩に向かってこう言った。


「…そう言えば、あなたと対面した事は無かったわね」


「あなたが明美の姉だったのね。道理で、あなたの顔を見てもぱっとしなかったワケだわ。私が知ってる明美は、あっちの明美だもの」


「名前で何か気付かなかったの?」


「まさかとは思ったわよ。でも、同姓同名ってだけで間違ってたら恥ずかしいじゃない」


「変な理由ね…」


2人が笑っていると、後ろに居る結衣が歩美の肩を叩いてこちらを向かせる。


「それで、結局どういう事なのさ?明美…じゃなくて、歩美?」


「歩美よ。どういう事って?」


「いや、こちらの雪平彩さんと、向こうに居る沢村明美さんのご関係は。ついでに何で偽名使ってたのかも聞きたい所だね」


「あー…」


歩美は露骨に溜め息を吐いて、面倒臭いという意思を見せながら話し始めた。


「雪平は昔、あなた達と同じ職に就いていたの。そこそこ、名の知れた人間だったのよ?」


「…知らね」


「まぁ当然ね。あなた達が仕事をするようになった時には、もう既に引退した身になってたからね」


「はぁ…。なるほどね…」


「雪平には、私の妹…つまりあいつの護衛を依頼した事があったの」


「護衛?」


「えぇ。商売を始めて間もなかった頃は、敵が多くてね。妹を誘拐でもされたら困るじゃない」


「そりゃそうだ」


「1週間くらいだったかしら。ずっとその間、雪平に護衛をさせてたら、あいつが雪平を気に入っちゃってね。離れようとしなかったのよ」


「ほうほう」


「それでもずっと面倒を見てもらうってワケにもいかないし、私は半ば強制的に引き剥がしたわ。2人をね」


「なんてことを…」


「…その翌日、明美は事故に遭った。以上よ」


「…は?」


「…さて」


強制的に会話を終えて明美を見る歩美。


しかし、結衣が彼女の肩を強く引っ張った。


「待ちやがりなよ。中途半端すぎるだろお前。それに偽名の話は?」


「…それはまた今度。今は訊きたい事を訊きましょう」


「…ま、いいさ。そうしようじゃない」


「………」


結衣が珍しくすぐに引き下がった事に驚き、彼女を見つめる歩美。


「な、何だぁその目は…」


「…いえ、何でもないわ」


歩美は咳払いをして、明美に視線を移した。


「…どうして生きてるの?」


「お言葉ね。私の死体を直接見たの?」


「…轢かれた時に、もう人の形はしてなかったと聞いたのだけれど」


「聞いた…だけでしょう?」


「………」


明美の突き刺すような視線に、思わず一瞬目を背ける歩美。


「私は死んでなんかいないわ。こうして生きてる。五体満足でね」


「…あのトラックに轢かれて助かったと言うの?」


「奇跡的に…とでも言っておこうかしら。まぁ私も、まさか助かるとは思っていなかったのだけれどね」


「一体どうやって…」


「あら、普通に手術を受けて、普通に入院して、普通に治しただけよ?」


「…嘘ね」


「…?」


嘲笑しながら、明美に近づいていく歩美。


歩美は明美の顎を乱暴に掴んで持ち上げ、顔を覗き込むように見ながらこう言った。


「昔からわかりやすい顔ね。その顔は嘘をついている顔…」


「…離しなさい」


「あら、言うようになったわね。少しは成長したのかしら?」


「ッ…」


歩美の手を振り払って、銃を取り出す明美。


同時に、歩美も銃を明美に構えた。


「遅いわね。やっぱりあなたは所詮凡俗よ。明美」


「今の内に好きなだけほざいておきなさい。私が作った兵器は、歩美姉さんには止められない…!」


「へぇ、凄い自信ね。でも、たかが知れてるわよ?あなたの兵器なんて」


「黙りなさい…!」


徹底して挑発する歩美と、それに対して静かに憤慨する明美。


しばらく沈黙が続いていたが、2人を見ているだけだった結衣が沈黙を破った。


「…あんたら仲悪いね。感動の再会はどうしちゃったのよ?」


その言葉に、明美が舌打ちをする。


「感動?笑わせないで。小物の姉なんかと再会しても殺意しか芽生えないわ」


「(そこまで言わなくても…)」


結衣は辛辣すぎる明美の言葉に、思わず苦笑を浮かべた。


「…小物ってのは、どういう意味なのかしら?」


「駄作を作っていい気になってるような人、大物とは呼べないのではなくて?」


「D-細菌が…駄作ですって…?」


目を細めて、明美を睨み付ける歩美。


「えぇ。私の兵器の方が優秀…それは一目瞭然よ」


「…どうやら本当の優劣という物をしっかりと教える必要がありそうね」


「こっちのセリフよ。精々足掻きなさい」


明美はそう言うと、屋上へ続く階段がある扉の元へと歩いて行った。


「明美!」


呼び止めたのは歩美ではなく、彩。


「…何ですか?」


「どうして梨沙ちゃんを狙ったの?」


「………」

「答えて。お願いよ」


「…次会えたら、お答えしますよ」


「?」


その時、部屋の奥にある市役所を見渡せる窓が突然割れ、何かが部屋の中に入ってくる。


「もう既に交戦はしましたよね?…ですが、今回は遊びではないので、精々死なないように頑張ってくださいね。それでは」


部屋の中に入ってきたのは、市役所の中で彩と大神姉妹の2人が交戦した生体兵器、D-13だった。


「待ちなさい!明美!」


部屋を出ていく明美を追い掛けようとする歩美。


しかし、D-13が彼女の足元に刃物を投げ、威圧する。


「ッ…!」


動けなくなる歩美。


「ここは任せなさい」


D-13の元に歩いて行きながらそう言ったのは、彩だった。


「雪平…?」


「ナメられたままじゃ、気が済まないの。あなた達は先に行きなさい」


彩はそう言って、D-13が投げた刃物を拾い上げる。


「危険です…雪平さん…!」


「ごめんね、梨沙ちゃん。でもこいつとは、ケリをつけたいの」


「でも…!」


「行こう。梨ぃちゃん」


梨沙を止めたのは、結衣だった。


「結衣さん…?」


「ケリつけたいって言ってんだ。無理に止めるのは無礼ってもんよ」


「………」


結衣の言葉を聞き、心の中で葛藤が生じる梨沙。


しかし、初めて見る彩の楽しんでいるような表情に、梨沙はゆっくりと頷いた。


「…負けないでくださいよ」


「うふふ…。ありがと」


「………」


彩以外の4人は、明美が登って行った階段の方へと向かった。


それを止めようとしたD-13の足元に、彩が銃を1発発砲する。


「あなたの相手は私…よ?」


首を傾げて可愛らしい笑みを浮かべている彩に、D-13はゆっくりと歩み寄っていった。


第33話 終




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ