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第32話


第32話

"起死回生の一撃"


「あなたが…D-03ね?」


返答が返ってこない事は承知の上、D-03に呼び掛ける葵。


「葵さん…やっぱりコイツやばいよ…」


D-03を見ながらそう言った風香の声は、震えていた。


「やばかったらどうするの?ごめんなさいって言って逃げるの?」


「い、いいから…!」


葵は必死に止めようとしてくる風香を無視して、D-03の元へ歩いていく。


「葵さん…!」


「うふふ…。大丈夫よ」


その時、D-03が、突然葵に殴りかかる。


葵はそれを片手で受け止めて、D-03に顔を近付けてこう言った。


「始めましょうか…!」


危険を察知したD-03は、バク転をして距離を離す。


その際に葵の顎を蹴り上げようとしたが、彼女は体を少し後ろに反らしただけでそれを避けた。


次に先制を取ったのは、再びD-03。


葵の腕を掴み、背負い投げを決めようとする。


しかし、葵はその投げを素早く抜けて、回し蹴りを放つ。


D-03は背面のまま姿勢を低くしてそれを避け、振り向き様にアッパーを放つ。


葵はそれも避け、D-03の懐に潜り込む。


そして、避けようの無い正拳突きを、D-03の鳩尾に入れた。


攻撃が直撃したD-03は後ろに吹っ飛んだが、転倒はせずに体勢を立て直す。


「へぇ。中々やるじゃない」


余裕の笑みを浮かべている葵を見て、D-03も不気味な笑みを浮かべながら近付く。


「それじゃあ今度は…私の番ね」


葵はそう言って、自らD-03に向かって歩いていった。


それに対し、D-03は立ち止まって、迎撃の態勢を取る。


通常、攻める側よりも守りに入る側の方が有利ではあるが、葵はお構いなしに、低姿勢で急接近して腹部にフックを放った。


そのフックは受け止められ、不利な状況に立たされる葵。


しかし、葵は攻撃を受け止められる事すらも読んでいたらしく、間髪入れずに右ストレートをD-03の顔面に放った。


D-03は上半身だけ傾けてそのストレートを避け、葵の右腕を掴む。


お互いに両手が使えないこの状況で、D-03は葵の顔面に頭突きを入れた。


予想外のその攻撃には流石の葵でも反応できず、顔面に攻撃をもろに喰らってしまう。


更に攻撃は続き、葵は頭突きを3回顔面に貰った。


4回目の頭突きが当たる寸前で、葵はD-03の両腕を抱え込むように持ち、D-03を投げ飛ばす。


D-03は受け身を取って衝撃を半減したが、立て続けに攻撃を受けた葵は少しふらついていた。


「姉さん…」


「大丈夫よ。これくらい…ならね」


心配する茜にそう言って、口の中に溜まった血を地面に吐き捨てる葵。


劣勢である事は誰が見てもわかったが、D-03は容赦なく襲い掛かってきた。


正面から突っ込んでくるD-03に対し、今度は葵が迎撃態勢を取る。


しかし、ふらつく程のダメージを負っている葵に、D-03のラッシュを止める事など到底無理な事であった。


葵の防御の隙を突いて、D-03は着実に攻撃を当てていく。


葵も必死に形勢を逆転する手立てを考え、それを実行してみるものの、全てあっけなく潰されていく。


そして、葵の体力が限界に達しようとした時、D-03はトドメのラストスパートへと移った。


露骨に急所を狙い始めた事により、その事自体には葵も気付く。


しかし、それまでであり、だからどうするといった事はできない。


「(1発もらったら…KOね…!)」


葵はただただ、D-03の攻撃を防ぐ事しかできない。


攻防が続いている内に、攻撃を完全に防ぐ事に失敗した葵の防御が、一瞬だけほどける。


その一瞬の隙を見逃さず、D-03はそこに渾身のストレートを放った。


D-03の勝利が確信された瞬間。


しかし、葵はニヤリと笑った。


「(甘いわね)」


少しだけ後ろにスウェーして、そのストレートを寸前で避ける。


避けたとはいえ、後ろに少しスウェーをしただけなので、必然的にD-03の右手は葵の顔面を直撃する軌道のまま。


しかし、D-03の右手が葵の顔面を捕らえる前に、葵はクロスカウンターをお見舞いした。


D-03は何をされたのかもわからないまま、崩れ落ちるように倒れる。


「うふふ…。私の勝ちね」


葵は髪を掻き上げて、余裕の笑みを浮かべながら、そう言った。


「…流石ね」


「………」


本心ではやはり尊敬している実姉の勝利に喜ぶ茜と、予想だにしていなかった大技を目にして呆然としている風香。


「結構際どかったけどね。最後のあれが決まってなかったら、確実に負けてたわ」


「姉さん、いつの間にボクシングなんか覚えたのよ?」


「ボクシング?どうして?」


「クロスカウンターってボクシングの技でしょう?」


「あら、そうなの?私は師匠から教えてもらっただけだから、知らなかったわ」


「見てみたいわね…。クロスカウンターを教える師匠って…」


「蝿を指先で弾いて仕留めるくらいの人よ」


「えぇ…」


勝利を遂げた葵は、茜と風香と共にその場を離れようとした。


しかしその時、背後から、何者かの荒い息遣いが聞こえてくる。


「…まさかね」


嫌な展開を想像しながら、振り向く葵。


そこには、仕留めたハズのD-03が立て膝の状態で俯いている姿が見えた。


「さしずめ、第2形態と言った所かしらねぇ…」


苦笑を浮かべながら、茜がそう呟く。


予想は的中し、D-03の右腕は、大きな刃のように変形した。


「なるほど…。ただの兵器では無さそうね…」


「そう言えば、明美が最高傑作とか何とか言ってたわ…」


茜の言葉を聞いた葵は、本題とは違う部分に反応する。


「…明美が明美じゃないって話、やっぱり本当なの?」


「沢村明美さん本人が言うには、本当みたいよ?」


「そう…」


葵は小さく笑って相槌を打ち、第2形態へと進化を遂げたD-03に歩み寄っていった。


「姉さん」


茜に呼び止められ、足を止めて振り向く葵。


茜は葵に、日本刀を投げ渡した。


「流石にあれ相手じゃ、素手だと辛いでしょう?」


「あら、案外そうでも無いかもしれないわよ?」


「はいはい…それじゃあ精々頑張ってください…」


「うふふ…。まぁ、可愛い妹の厚意だし、素直に受け取っておくわ」


「なっ…!?」


赤面する茜にいたずらっぽく笑いかけた後、葵は正面に居るD-03に再び視線を移す。


「…懐かしいわ。この感触」


葵は刀を鞘から抜き放ち、ゆっくりと構えた。




一方…


自分達を罠にはめた人物を探しに、市役所から出て隣の廃ビルにやってきた8人。


「このビルのどこかに居るハズね」


「…本当に居ますかね?」


歩美に、玲奈がそう言った。


「?」


「既にもぬけの殻…って可能性も考えられません?」


「…まぁ確かに、それは無いとは言い切れないけれど」


言葉とは裏腹に、いたずらっぽい笑みを浮かべている歩美。


すると、恭香が今は入ってきたばかりの、外への出口を見ながらこう提案した。


「念の為、出口に人を配備しておくというのはいかがですか?」


「良い事を言うわね、峰岸の妹。それじゃあそうしましょうか」


「誰が入口に居るんです?」


「そうね…」


玲奈に訊かれ、歩美は何も考えずに人員の振り分けを決める。


「雪平と、大神姉妹は私と一緒に来なさい。他は見張りよ」


「待ってください…!」


歩美の決定に異議を申し立てたのは、梨沙だった。


「異議なら受け付けないわよ」


「私も行かせてください。その為に町に戻ってきたんです」


「ダメよ。足手纏いになるわ」


言葉を濁そうともしない歩美に、困惑する一同。


しかし、梨沙に引き下がる気は微塵も無かった。


「足手纏いにはなりません。努力します」


「努力なんて意味ないわ。結果を残しなさい」


「残してみせます」


「………」


頑なに意見を曲げようとしない梨沙に、歩美は徐々に疑問を持ち始める。


「どうしてそこまで行きたがるの?危険な目に遭うだけだと思うのだけれど」


「どうして私が狙われたのかを知りたいんです」


「知りたい?」


「私を殺したい理由を…です」


しばらく、歩美は黙り込んだ。


そのまま、梨沙の目を見つめ続ける。


そして、溜め息を吐いて、こう言った。


「…わかったわ。勝手にしなさい」


「あ、ありがとうございます…!」


実際の所は緊張していたらしく、声が震えている梨沙。


「全く…」


歩美は不機嫌そうに歩き出した。


「明美」


彩がついて行きながら、彼女の名前を呼ぶ。


「…何よ」


「"決め手"は何だったの?」


「…目にやられたわ」


「目?」


「えぇ。純粋で真っ直ぐな目…。あんな良い目を最後に見たのは、何年前だったかしらね」


「良い目…ねぇ…」


振り返って、梨沙を見つめる彩。


「…ふぇ?」


「…なるほど、良い目ね」


彩は驚いている梨沙の表情を見て、くすくすと笑った。



廃ビルは5階立てとなっており、一同は一言も発さないまま、最上階を目指して階段を登り続ける。


4階に到着した所で、彩が口を開いた。


「ねぇ、最上階に居るって思う根拠は何なの?」


「勘よ」


「…はぁ?」


呆れたような返事を返した彩を、歩美はきっと睨む。


「何?手掛かりがあるというのなら、是非とも教えて頂きたいわね」


「うわ…。凄い嫌味な言い方…」


すると、先程から歩美が考えている事を全て察している玲奈が、最上階への階段に足を掛けながらこう言った。


「普通に考えて、最上階だと思いますけど」


「普通に考えて?」


訊き返す彩。


「さっき外観を見た時に気付いたんです。この建物の中で市役所を観察できる場所は、最上階にしか無いって」


「…どういう事?」


「最上階より下の階の窓は、全てタンスが置いてあったり壁紙が張ってあったりで見る事ができないんですよ。こっちの様子をね」


「屋上っていう可能性は?」


結衣にそう訊かれた玲奈は、腕を組んで考え込む素振りを見せながら答えた。


「無きにしもあらず…。でも、わざわざ姿が見えちゃう屋上になんか行かないと思うな。そんな場所よりは…」


「最上階にある市役所を見渡せる窓がある部屋…ってワケね?」


そう言った歩美に、頷いて見せる玲奈。


「はい。…まぁ、あくまでも私の推測に過ぎませんが」


「いえ、完璧だと思うわよ?あなたの推論は」


歩美は珍しく、混じり気の無い笑顔を見せてそう言った。


「…それはどうも」


第32話 終




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